作成日: 2026/2/25 更新日:2026/2/25
総合型選抜で音大に受かるには?実技・面接対策から一般選抜との違いまで解説

音大の総合型選抜とは、学力試験や実技の技術だけでなく、受験生の個性や「その大学で学びたい」という強い意欲を重視して合否を決める入試方法です。
音楽大学で総合型選抜を導入しているのは、音大が技術を磨くだけの場所ではなく、将来的な音楽との関わり方、つまり「目的意識」が非常に重要視される場であるためです。
文部科学省の定義でも、総合型選抜は「詳細な書類審査や面接などを通じて、入学志願者の能力や適性、学習意欲を多角的に判定する」とされています。
本記事では、音楽大学の総合型選抜に合格するための対策や、一般選抜との違いまで、詳しく解説します。
この記事を書いた人

年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
総合型選抜とは

総合型選抜とは、「書類審査と面接を中心に、受験生の意欲や適性まで含めて評価する入試」です。
単に学力試験の点数だけで合否を決めるのではなく、これまでの活動や将来の目標、学ぶ姿勢などを多面的に見て判断されます。
文部科学省が定める「大学入学者選抜実施要項」では、総合型選抜は次のように位置づけられています。
- 詳細な書類審査
- 時間をかけた丁寧な面接
- 能力・適性、学習意欲、目的意識などの総合的な評価
つまり、志望理由書や活動実績、面接での受け答えなどを通して、「なぜこの大学で学びたいのか」「将来どのように成長したいのか」といった点まで確認される入試方式です。
ただし、「学力不問で入れる入試」というわけではありません。
総合型選抜でも、知識・技能や思考力を適切に評価することが求められており、多くの大学では次のような要素を組み合わせて選考が行われます。
- 小論文
- 口頭試問
- 実技試験(音大の場合は演奏など)
- 共通テストの結果の活用
- 資格・検定の実績
音大の総合型選抜では、特に実技試験と面接の比重が大きく、演奏力に加えて、音楽への意欲や将来の目標が重視される傾向があります。
学力・実技・人物面をバランスよく評価する入試だと理解しておくとよいでしょう。
参考:大学の総合型選抜(旧AO入試)のまとめガイド-受かるための対策や入試の特性を大公開
参考:国公立大学の総合型選抜入試(AO入試)の特徴とは?実施大学も紹介
参考:総合型選抜(旧AO入試)に受かる人の特徴とは?向いている人や対策も解説
音大の総合型選抜とは

音大の総合型選抜は、実技や学力の結果だけでなく、志望理由や将来の目標、学ぶ意欲などを含めて総合的に評価する入試方法です。
一般的な総合型選抜の考え方を音楽分野に当てはめたものといえます。
文部科学省の方針でも、書類審査や面接を通して能力・適性・目的意識を多面的に確認する入試と位置づけられています。
音大ではこれに加えて、演奏力と「何を学びたいのか」という方向性が重視される点が特徴です。
総合型選抜を取り入れている大学の実情
現在、多くの私立音楽大学が総合型選抜を導入しており、受験生にとって主要な受験方法の一つとなっています。
音楽大学は、「演奏」だけでなく、「作曲」「音楽教育」「音響・音楽テクノロジー」「アートマネジメント」など、将来の進路が多岐にわたる分野を有しています。
専攻によって求められる資質や将来像は大きく異なります。
そのため大学側は、単に実技や筆記の点数だけで判断するのではなく、
- どの分野で学びたいのか
- 将来どのような活動を目指しているのか
- 大学のカリキュラムをどう活用したいのか
といった「目的意識」や「学ぶ意欲」を重視する傾向があります。
こうした考え方と相性がよいのが総合型選抜です。
書類審査や面接、場合によってはプレゼンテーションなどを通して、受験生の将来像や適性を多面的に確認できます。
実際、東京音楽大学、国立音楽大学、昭和音楽大学などの主要な私立音大でも、それぞれの教育方針に沿った総合型選抜を実施しています。
近年では、
- 実技試験に加えて自己PR書の提出
- 面接での口頭試問
- 将来計画のプレゼンテーション
などを組み合わせる方式も見られます。
このように、音大は分野の多様性ゆえに「何を学び、何を目指すのか」を重視する傾向が強く、その流れの中で総合型選抜は広く定着しています。
音大受験を考える際は、一般選抜だけでなく、総合型選抜も含めて検討することが前提になりつつあります。
音大における総合型選抜の特徴

音大の総合型選抜は、一般的な大学とは評価の比重が異なります。
実技・書類・面接を組み合わせ、受験生の適性や目的意識を多面的に確認する設計が特徴です。
特徴① 実技が含まれるケースが多い
音楽大学である以上、総合型選抜であっても実技試験が課される場合が多くあります。
専攻ごとに内容は異なりますが、主に以下のような形式です。
- 自由曲または課題曲の演奏
- 作曲作品の提出
- 即興演奏や初見演奏
- 口頭での楽曲分析
総合型選抜は「学力不問」ではありません。
音大では特に、基礎的な演奏力や音楽的理解が前提となります。
特徴② 書類審査が重視される

総合型選抜は「詳細な書類審査」を前提とした入試です。
音大では、単なる志望理由ではなく、次の点が具体的に書けているかが問われます。
- なぜその専攻を選ぶのか
- 大学で何を学びたいのか
- 将来どの分野で活動したいのか
たとえば、演奏専攻であれば目指す演奏スタイルやレパートリー、作曲専攻であれば興味のあるジャンルや研究テーマなど、専攻内容と結びついた記述が求められます。
参考:総合型選抜(旧AO入試)の出願書類とは?必要書類の一覧や書類選考で落ちる原因を解説
特徴③ 面接が深い
総合型選抜は面接を重視する設計です。
音大の面接では、一般的な「高校で頑張ったこと」だけで終わらない場合が多くあります。
実際に問われやすい内容の例は次のとおりです。
- 自分の演奏のこだわり
- 提出作品や作曲の意図
- 憧れている音楽家やジャンルへの理解
- 入学後に伸ばしたい課題
音楽的な考え方や自己分析の深さが見られるため、実技と結びつけて説明できる準備が必要です。
特徴④ 併願の可否は大学によって異なる

総合型選抜は必ずしも「専願」とは限りません。
たとえば、武蔵野音楽大学の2026年度総合型選抜では、「本学を専願とすることを条件としません」と案内されています。
一方で、大学によっては第一志望に近い扱いとする場合や、出願条件に制限を設けている場合もあります。
併願の可否や条件は大学ごとに異なるため、必ず最新の募集要項を確認することが前提です。
メリット・デメリット

総合型選抜は、実技の完成度だけでなく、志望理由やこれまでの活動、将来の目標などを含めて評価される入試です。
一般選抜とは重視されるポイントが異なるため、準備の進め方も変わってきます。
演奏力以外の要素も評価対象になるため、自分の経験や目的意識を活かしやすい反面、書類や面接など対策すべき項目は多くなります。
評価の観点が幅広い入試だからこそ、特徴を理解したうえで自分に合っているかを判断することが前提になります。
以下では、総合型選抜を利用して音大を受験する際の主なメリットとデメリットを整理します。
メリット① レベルの高い音大にも挑戦しやすい
総合型選抜は、現時点の実技の完成度だけで合否が決まる方式ではありません。
将来性や学ぶ目的、これまでの取り組み方などを含めて総合的に評価されるため、一般選抜では届きにくい難関校にも挑戦しやすくなります。
実技試験中心の入試では、技術差がそのまま結果に直結しやすい傾向があります。
一方で総合型選抜では、「この学生を育てたい」と大学側が判断する材料が多く用意されており、評価の軸が広がります。
特に次のような点を具体的に示すことが重要です。
- どんな目的で音楽を学びたいのか
- どのような将来像を描いているのか
- これまでにどのような活動や努力を続けてきたか
- 音楽に対してどの程度の理解があり、どこに伸びしろがあるか
コンクールの受賞歴がなくても、自主的な演奏活動の積み重ねや、特定のジャンル・作曲家への継続的な研究などが評価材料になることもあります。
このように、技術面の評価だけでは見えにくい部分を伝えられる点が、総合型選抜を利用する大きな利点です。
メリット② 合否が早く分かる

総合型選抜は他の入試方式よりも選考時期が早く、年内に進路が決まりやすい点が特徴です。
多くの音大では9月〜10月頃に出願が始まり、11月〜12月頃に合格発表が行われます。
1月以降に本格化する一般選抜や共通テスト利用入試と比べると、数か月早いスケジュールです。
進路が早期に確定すると、入学までの期間を準備に充てることができます。
たとえば次のような点に時間を使いやすくなります。
- 練習方法の見直しや基礎の強化
- 自分なりの音楽への向き合い方の整理
- 将来の目標の具体化
- 入学後に学びたい分野の下調べや予習
合格後の時間を計画的に活用することで、入学時点から一定の準備が整った状態で学び始めることができます。
精神的な余裕を持って高校生活の締めくくりを迎えられる点も、総合型選抜の利点の一つです。
メリット③ 音楽以外の部分も評価される
総合型選抜では、演奏技術だけでなく、これまでの取り組みや人間性も評価対象になります。
音大は、音楽を専門的に学ぶ場であると同時に、社会と関わる人材を育成する場でもあるためです。
評価されやすい要素の例は次のとおりです。
- 継続力(長期間取り組んできた活動や練習習慣)
- 主体性(自分で企画した演奏会や創作活動など)
- 協働性(部活動やアンサンブルでの役割)
- リーダーシップ(パートリーダー、部長、指導経験など)
- 課題解決力(演奏や活動の中で工夫して改善してきた経験)
- 音楽への探究心(独学での理論学習、特定ジャンルの研究など)
これらは、演奏の完成度だけでは測れない部分です。
例えば、高校での部活動の運営経験、地域イベントでのボランティア演奏、自主企画のコンサート、独学での楽典学習なども評価材料になります。
技術のみで競う方式ではないため、自分の経験や取り組みを整理し、言葉で説明できる受験生にとっては強みを発揮しやすい入試方式です。
デメリット① 併願が難しい場合がある

総合型選抜では、大学によって「専願(第一志望での出願)」を条件としている場合があります。
合格した場合は入学を確約する必要があるため、他大学との併願ができなくなる可能性があります。
一方で、専願を条件としていない大学もあり、制度の扱いは学校ごとに異なります。
出願前に募集要項を確認し、自分の受験計画に合っているかを判断することが重要です。
以下は、音大の総合型選抜における併願条件の例です。
大学名 | 併願の扱い | 参照元 |
洗足学園音楽大学 | 第一志望(専願)が出願条件として明記 | |
武蔵野音楽大学 | 「本学を専願とすることを条件としません」と明記 | |
昭和音楽大学 | Q&Aで総合型選抜は専願ではない旨を案内 |
このように、総合型選抜=必ず専願とは限りません。
ただし、専願を条件とする大学も一定数あるため、「第一志望として受験するのか」「他大学と併願したいのか」を整理したうえで出願先を選ぶ必要があります。
デメリット② 出願準備の負担が大きい
総合型選抜は、提出書類や面接対策などの準備が多く、演奏の練習時間を圧迫する可能性があります。
志望理由書や活動報告書の作成に加え、自己PRの整理や面接練習など、一般選抜にはない対策が必要になります。
特に時間がかかりやすい作業は次のとおりです。
- 志望理由書、活動報告書などの長文作成
- 自分の活動歴や経験の整理と言語化
- 面接対策、想定質問への準備
- プレゼンや作品提出がある場合の追加準備
- 録音、動画提出のための撮り直し対応
これらを同時に進めるため、練習とのバランスを崩すと、どちらも中途半端になる恐れがあります。
早い段階から計画を立て、書類作成の時期と練習のピークが重ならないように調整することが必要です。
デメリット③ 不合格時の切り替え期間が短い

総合型選抜で不合格になった場合、一般選抜に向けて準備を立て直すまでの期間が限られています。
結果発表は秋から初冬にかけて行われることが多く、その後に別の入試方式へ切り替えるには短期間での対応が求められます。
特に影響が出やすい点は次のとおりです。
- 実技の完成度を短期間で引き上げる必要がある
- 楽典や聴音など筆記・基礎科目の対策を再開する必要がある
- 課題曲の変更や追加が発生する場合がある
- 出願校の再検討や日程調整が必要になる
総合型選抜の対策に集中しすぎると、基礎科目の勉強が後回しになることもあります。
不合格の可能性も想定し、楽典やソルフェージュの学習は並行して続けておくことが重要です。
また、次に受験する方式や大学をあらかじめ考えておくと、切り替えがしやすくなります。
入試内容

音大の総合型選抜では、演奏技術だけでなく、音楽への向き合い方や学ぶ目的まで含めて多面的に評価されます。
大学の教育方針に合う学生かどうかを見極めるため、複数の選考を段階的に行う形式が一般的です。
多くの場合、志望理由書などの書類選考から始まり、実技試験、面接、場合によっては小論文や課題提出などを組み合わせて合否が判断されます。
書類・実技・面接はそれぞれ独立した試験ではなく、内容の一貫性も含めて評価されます。
各試験の目的を理解し、何を見られているのかを意識して準備を進めることが重要です。
書類選考(志望理由書・活動報告書)
書類選考は、「なぜこの音大で学びたいのか」「これまでどのような音楽活動を積み重ねてきたのか」を伝える重要なステップです。
志望理由書や活動報告書を通して、受験生の目標や学ぶ意欲、入学後の成長可能性が総合的に見られます。
大学側は、単に実績の多さだけでなく、どのような目的意識を持ち、その環境をどう活かそうとしているのかを重視しています。
また、書類の内容は面接の質問材料にもなるため、自分の経験や考えを自分の言葉で整理して書くことが大切です。
主に提出する書類の例
- 志望理由書:将来のビジョンや学びたい内容をまとめる
- 活動報告書:コンクール歴、部活動、個人の音楽活動などを記録する
書類で見られやすいポイント
- 目的意識:なぜ音大で学びたいのか、なぜその専攻を選んだのか
- 大学との一致:なぜその大学なのか(カリキュラム、指導教員、設備など)
- 計画性:入学後に何をどのように学びたいかという学修計画
- 継続力:これまでどのように練習や活動を積み重ねてきたか
- 一貫性:書類・面接・実技の方向性が一致しているか
これらの点を意識してまとめることで、音楽への向き合い方や将来像が具体的に伝わりやすくなります。
実技試験(課題曲・自由曲)

音大の入試では、演奏の基礎力を確認するために実技試験が重視されます。
総合型選抜でも多くの場合、課題曲や自由曲の演奏が課され、現在の技術だけでなく音楽への理解や表現力が評価対象となります。
実技試験では、大学が指定する「課題曲」と、自分で選ぶ「自由曲」のいずれか、または両方を演奏する形式が一般的です。
単に正確に弾く・歌うだけでなく、曲をどのように解釈し、どう表現しようとしているかが見られます。
また、選曲そのものも評価の一部として扱われることがあります。
実技で見られやすいポイント
- 音程やリズムが安定しているか
- テンポ感を適切にコントロールできているか(走らない・遅れない)
- 音色やフレージング、表現に意図があるか
- ミスをした後に立て直せるか
- 入退場や姿勢、準備の様子などのステージマナー
選曲においては、背伸びをして難しい曲に挑戦するよりも、安定して演奏できる曲を選ぶことが重要です。
目安としては、8〜9割の完成度で安定して演奏できる曲、自分の強みが出る曲を選ぶ方が評価につながりやすくなります。
また、演奏時間や楽章指定、暗譜の有無といった大学側の指示を守れる曲を選ぶことも欠かせません。
自分の現在のレベルを客観的に把握し、最も魅力が伝わる曲を選ぶことが、実技試験対策の基本となります。
楽典
楽典は、音楽を学ぶうえで必要となる「読み書きのルール」や基礎理論を確認する筆記試験です。<
入学後は音楽理論や楽曲分析などの授業が続くため、その土台となる知識が身についているかを測る目的で実施されます。
問われる内容は基礎的なものが中心ですが、理解が不十分だと授業についていくのが難しくなるため、総合型選抜であっても一定の基準が設けられています。
一般選抜と比べて難易度が抑えられている場合もありますが、基礎力の確認という意味合いが強く、対策は欠かせません。
楽典で頻出になりやすい分野の例
- 音名、音程、音階(長調/短調)
- 調号(♯や♭の数の理解)
- リズム(拍子、シンコペーションなど)
- 和音(主要三和音、属七の和音などの基礎)
- 速度標語、強弱記号、発想記号
これらはすべて、演奏や楽曲理解と直結する基本事項です。
特別に難しい問題が出題されるわけではなくても、基礎が定着しているかどうかが重視されるため、教本レベルの内容を確実に理解しておくことが重要です。
ソルフェージュ

ソルフェージュの試験では、楽譜を正しく読み取り音にする力や、聴いた音を楽譜に書き取る力が測られます。
主な内容は、新曲視唱と聴音です。
- 新曲視唱:初見の楽譜をその場で歌う
- 聴音:演奏された旋律や和音を楽譜に書き取る
専攻がピアノであっても、合奏やアンサンブルでは他のパートの音を聴き取り、全体の中で自分の役割を理解する力が求められます。
大学側は、ソルフェージュを通して、音程やリズムの正確さだけでなく、周囲の音と調和できる基礎力があるかを確認しています。
聴音(メロディ)を伸ばすコツ
- いきなり音程を当てようとせず、まずリズムだけを書き取る
- 次に「音が上がった/下がった」「同じ音が続いた」など動きをメモする
- 最後に具体的な音程を当てはめていく
視唱を伸ばすコツ
- いきなり歌わず、①拍を数える → ②リズムだけ手拍子 → ③音名で歌う、の順で確認する
- 音程が不安定な場合は、ドを固定し、2度・3度の動きを正確に取る練習から始める
リズムが弱い人の改善方法
- メトロノームで表拍だけを感じる練習から始める
- 裏拍も意識して数える
- 「1・2・3・4」と口でカウントしながら叩く
- テンポが走りやすい場合は、設定を下げて安定を優先する
ソルフェージュは短期間で急激に伸びる分野ではありません。
日々の積み重ねによって、音楽全体を支える基礎力が養われます。
面接
面接は、音大の総合型選抜において合否に大きく影響する試験です。
実技や書類で示した内容が本当に本人の考えなのか、入学後に成長できる準備があるかを確認する場でもあります。
大学側は面接を通して、次のような点を見ています。
- 志望動機に一貫性があるか
- 指導を受けた際に柔軟に吸収できる姿勢があるか
- 音楽とどのように向き合っているか
- 入学後の学修計画が具体的か
よく聞かれる質問の例は以下の通りです。
- なぜ音大なのか。なぜこの専攻なのか
- なぜこの大学なのか。他校ではだめな理由は何か
- 高校で力を入れたこと(音楽分野に限らない)
- 入学後に何を学びたいか
- 将来どのような進路を目指しているか
- 現在の課題は何か。その改善計画はあるか
面接では、書類の内容をもとにさらに深掘りされます。
特に頻出なのが次の三つの問いです。
- 「なぜ?」
- 「具体的には?」
- 「それを学んで何がしたい?」
表面的な答えではなく、理由と具体例をセットで説明できるかが問われます。
自分の考えを整理し、実技・書類と同じ方向性で語れるように準備しておくことが重要です。
小論文

小論文では、音楽や社会に関するテーマについて、自分の考えを論理的にまとめる力が評価されます。
音大では、演奏や作品解釈を言葉で説明する場面も多いため、文章で表現する力も重視されています。
出題されやすいテーマの例は次のとおりです。
- 現代社会における音楽の役割
- 理想とする音楽家像
- 音楽教育の意義
- 芸術とテクノロジーの関係
- 地域社会と音楽活動の関わり
設問形式としては、次のようなパターンが見られます。
- テーマに対して自分の意見を述べる形式
- 短い文章や資料を読んで考えをまとめる形式
- 自分の経験と関連づけて論じる形式
評価されやすいポイントは以下の通りです。
- 問いに正面から答えているか
- 主張が明確であるか
- 理由や具体例が示されているか
- 文章構成が整理されているか(序論・本論・結論)
- 誤字脱字や表記の乱れがないか
単なる感想文にならないよう、自分の立場を示し、その理由を具体例で支える構成を意識することが重要です。
事前にいくつかのテーマで練習し、時間内にまとめる訓練をしておくと対応しやすくなります。
ポートフォリオ・録音提出・プレゼンがある場合の準備手順
専攻やコースによっては、実技試験とは別に作品提出やプレゼンテーションが課されることがあります。
たとえば、武蔵野音楽大学の総合型選抜では、作曲コースにおいて作品提出やプレゼンが示されています。
これらは、単なる技術確認ではなく、「どのような発想を持ち、何を目指しているのか」を評価する材料です。
準備は計画的に進める必要があります。
- 指定形式(mp3/wav/mp4など)を確認する
- 演奏時間や容量制限を守っているか確認する
- 締切日時を正確に把握する
- ファイル名のルール(受験番号・氏名など)を守る
- 提出方法(アップロード/郵送)を事前にテストする
- 録音は締切の2週間前までに一度完成させ、撮り直しの時間を確保する
- データはスマホ・PC・クラウドなど複数箇所に保存する
技術的な不備による失点は防げる部分です。提出前の最終確認を徹底します。
プレゼンでは、3〜5分の短時間でも論理の流れを整理しておくことが重要です。
構成例は次のとおりです。
- 何をやりたいか(結論)
- なぜそれをやりたいのか(背景)
- これまで何を準備してきたか(行動・実績)
- その音大でどう伸ばしたいか(学修計画)
- 将来どう活かすか(目標)
結論から話し、具体例を交えて説明します。
抽象的な表現よりも、作品や活動経験に基づく説明の方が評価されやすくなります。
ポートフォリオや録音、プレゼンは、実技や書類と同じ方向性を示すことが前提です。
内容に一貫性があるかを最終確認してから提出することが重要です。
受験の流れ

総合型選抜は、一般選抜よりも早い時期から準備が始まり、出願までに踏むべき手順も多い入試です。
大学や専攻によっては、オープンキャンパス参加や事前面談が出願条件になっていることもあり、年間の流れを把握したうえで計画的に進める必要があります。
基本的には、募集要項の確認から始まり、出願書類の準備、書類選考、その後の実技試験や面接などの二次試験へと進む形になります。
各段階で求められる内容が異なるため、一つひとつのステップを理解しながら対策を積み重ねていくことが重要です。
募集要項を確認する
対策の出発点は、志望校の募集要項を正確に読み込むことです。
音大の総合型選抜は、大学や専攻ごとに出願資格や選考方法が異なります。
条件を誤解したまま準備を進めると、対策の方向がずれる可能性があります。
公式サイトから最新の募集要項(PDF)をダウンロードし、以下の項目を確認します。
特に「専願か併願可能か」は最優先で確認が必要です。
まずチェックする5項目
項目 | 確認ポイント |
① 専攻・コース | 自分のやりたい分野と一致しているか。カリキュラムや学べる内容も確認する。 |
② 実技の課題 | 課題曲/自由曲の指定、時間制限、楽章指定、暗譜の有無、伴奏の要否など。 |
③ 楽典・ソルフェの有無 | 試験があるか。ある場合は配点や出題範囲のヒントが示されていないか。 |
④ 提出物 | 志望理由書、活動報告書、録音・動画、作品提出、課題レポートなどの種類。 |
⑤ 日程 | 出願開始日、試験日、合格発表日。練習計画・準備スケジュールの基準になる。 |
募集要項は合格までの設計図です。最初に全体像を把握し、必要な準備を逆算して進めることが重要です。
オープンキャンパス・体験レッスンを活かす準備をする

音大の総合型選抜では、書類や面接で「なぜこの大学を選んだのか」を具体的に説明できるかが重視されます。
そのため、オープンキャンパスや体験レッスンは、雰囲気を知るだけでなく、志望理由の材料を集める場として活用することが重要です。
実際に足を運んだ際は、感じたことをその場でメモに残しておくと、志望理由書や面接で説得力のある内容につながります。
特に次の3点は、必ず記録しておきたいポイントです。
項目 | メモする内容 | 志望理由への生かし方 |
大学の強み | 授業内容、カリキュラムの特徴、設備、演奏機会、他大学との違い | 「なぜこの大学か」を具体的に説明する根拠になる |
先生・指導の特徴 | レッスンで重視している点、指導方針、印象に残った言葉(できるだけそのまま) | 指導方針への共感や学びたい理由を明確にできる |
自分の課題 | 指摘された改善点、弱点、今後の練習の方向性 | 入学後にどう成長したいかを具体的に示せる |
このように、体験の中で得た気づきを具体的な言葉で残しておくことで、「なぜこの大学なのか」「入学後に何を学びたいのか」を自分の言葉で説明できるようになります。
総合型選抜では、こうした実体験に基づいた志望理由が大きな強みになります。
必要書類を準備して出願する
次に、志望理由書や活動報告書などの必要書類を作成し、期限内に出願手続きを行います。
音大の書類選考は面接のベースになるため、時間をかけて作成する必要があります。
先生や家族に添削してもらうことも考慮し、締め切りの1ヶ月前には書き始めましょう。
なお、不備があると受理されないこともあるため、必要書類をリストアップし、慎重に準備を進めてください。
書類選考後、二次試験に進む

書類による審査を通過すると、次は大学のキャンパスで行われる二次試験に進みます。
ここでは、書類で示した目的意識や活動内容を、実際の演奏や受け答えを通して確認されます。
大学側は、提出書類の内容と本人の実力・人柄に一貫性があるかを見ています。
二次試験の主な内容例は以下の通りです。
- 実技(課題曲/自由曲)
- 面接(志望理由、学びたい内容、将来像、練習への取り組み方など)
- 楽典・ソルフェージュ
- 小論文/課題レポート/口頭試問
書類で伝えた「熱意」や「計画性」を、演奏の完成度や受け答えの具体性で示す段階といえます。
志望理由書に書いた内容を自分の言葉で説明できるよう準備しておくことが重要です。
また、評価の対象は試験そのものだけとは限りません。
控室での過ごし方、入退室時の挨拶、姿勢や受け答えの態度なども含めて見られている可能性があります。
試験本番だけでなく、会場に入った瞬間から落ち着いて行動する意識を持って臨むことが大切です。
【2026年版】入試内容の実例と2025年度の倍率

2026年度の音大入試でも、総合型選抜は多くの大学で実施されています。
実技試験を中心に、面接や楽典、書類審査などを組み合わせて評価する方式が一般的です。
大学ごとに試験内容や課題曲の傾向が異なるため、志望校の特徴を把握して準備を進めることが重要です。
ここでは、受験生の関心が高いピアノ専攻・声楽専攻を中心に、主要音大の入試内容と2025年度の倍率を一覧で整理しました。
大学名 | 入試内容(ピアノ・声楽) | 2025年度倍率 |
国立音楽大学 | 実技・面接・楽典。声楽はA群B群から選曲し当日指定曲を歌唱。ピアノは課題曲+自由曲を演奏。 | 声楽1.14倍/ピアノ1.07倍 |
東京音楽大学 | 声楽:楽典・コールユーブンゲン・専攻実技(課題曲+自由曲)・面接。ピアノ:専攻実技(平均律+自由曲)・面接。 | 声楽1.0倍/ピアノ1.0倍 |
昭和音楽大学 | 主科実技・音楽理論・ソルフェージュ・面接。声楽は副科ピアノ等を選択可。ピアノは聴音・初見演奏などから選択。 | 音楽学部全体1.2倍 |
洗足学園音楽大学 | 専門実技・面接・楽典・聴音等。声楽は課題曲+自由曲。ピアノは練習曲またはバッハ作品+自由曲。 | 音楽学部全体1.3倍 |
武蔵野音楽大学 | 書類審査・面接・専攻実技。声楽は外国曲・日本曲・自由曲。ピアノはショパンのエチュード、平均律など指定曲中心。 | 器楽1.18倍/声楽1.04倍 |
大阪音楽大学 | 面接・調査書・小論文・専門課題(実技)。声楽は課題曲+自由曲。ピアノは指定グループから1曲選択。 | 声楽1.0倍/ピアノ1.17倍 |
総合型選抜は、実技試験の比重が高く、面接や書類によって学習意欲や将来性も確認されます。
倍率は1.0〜1.3倍程度の大学が多いものの、課題曲や試験形式は学校ごとに異なるため、早い段階から志望校に合わせた対策を進めることが必要です。
音大における総合型選抜と一般選抜の違い

音大受験では、総合型選抜と一般選抜で評価の基準と試験の仕組みが大きく異なります。
一般選抜は当日の実技や筆記の結果が中心です。
一方、総合型選抜はこれまでの活動や学ぶ目的、将来の計画などを含めて総合的に評価されます。
そのため、演奏の完成度だけでなく、「何を学びたいか」「どう成長したいか」といった意欲や方向性を重視したい人は、総合型選抜との相性がよい入試方式といえます。
評価・選考方法
一般選抜は、「実技・筆記・副科」の合計点数によって合否が決まります。
一方、総合型選抜は「書類・面接・実技」を組み合わせた「総合力」で判断されます。
入試の種類 | 特徴 |
つまり、総合型選抜は、「自分という人間をプレゼンする試験」とも言えるでしょう。
入試のスケジュール

試験が行われる時期についても、大きな違いがあります。
総合型選抜は非常に早い時期から動き出す必要がありますが、一般選抜は冬の短期間に集中して行われます。
入試の種類 | スケジュール |
総合型選抜の場合、年内に合格を決められれば、残りの数ヶ月を音大の課題や基礎練習に充てられます。
出願資格や併願の可否
見落としやすいのが、併願の可否です。
一般選抜は、日程が重ならなければ複数の音大を受験できます。
一方、総合型選抜は「合格したら入学すること」を条件とする専願方式が多く、他校を同時に受けにくい場合があります。
志望校が決まっている人には使いやすい方式ですが、複数校を比較したい場合は一般選抜のほうが動きやすくなります。
合格するためのコツ

合格を目指すには、実技の練習だけでなく、大学が求める学生像を理解し、自分の目標や経験と結びつけて伝える準備が必要です。
「何を学びたいか」「将来どう活動したいか」を具体的に示し、志望理由・実技・活動実績の内容に一貫性を持たせることが評価につながります。
実技試験で確実に点数を取れるよう選曲する
総合型選抜の実技では、難曲に挑戦するよりも、自分の強みが安定して出せる曲を選ぶことが重要です。
完成度や表現力に加え、自分のレベルを客観的に把握して選曲できているかも見られます。
無理な曲で崩れると、準備不足と判断される可能性があります。
指導者と相談しながら、8~9割の完成度で安定して弾ける曲を選びましょう。
練習は録音して確認し、修正点を積み重ねる方法が有効です。
志望理由や目標を明確にしておく

「なぜこの大学を選んだのか」を具体的に説明できるように準備します。
志望理由は合否に直結する重要な評価要素であり、大学の特徴と自分の目標を結びつけて考えることが基本です。
例えば、次のような内容を整理しておきます。
- 学びたい分野や授業内容
- 指導を受けたい教員や研究分野
- 卒業後に目指す進路や活動
- 大学4年間で身につけたい力
自分の過去の経験、現在の課題、将来の目標が一つの流れとして説明できると説得力が増します。
音楽の活動実績を具体的に伝える
コンクールの受賞歴だけでなく、日常的な音楽活動も評価対象になります。
主体的に取り組んできた経験があるかが重視されます。
実績として伝えられる例は次の通りです。
- 学校行事での演奏や伴奏、合唱指導
- 部活動でのパートリーダーや指導経験
- バンドや軽音、地域イベントへの出演
- 作曲や編曲、DTM制作、動画投稿などの創作活動(規則を守る)
- 音楽教室や部活動での後輩指導
- 介護施設や幼稚園などでのボランティア演奏
結果の大きさよりも、その経験から何を学んだかを具体的に説明することが重要です。
スケジュール管理を徹底する

総合型選抜は準備項目が多く、計画的な行動が欠かせません。
実技の練習に加え、志望理由書の作成、面接対策、楽典やソルフェージュの学習など、複数の課題を同時に進める必要があります。
特に書類提出は期限厳守です。カレンダーに次の項目を書き込み、逆算して準備を進めます。
- 募集要項の公開日と確認日
- 志望理由書の初稿完成日(提出の1か月前が目安)
- 実技試験の暗譜完了目標日
- 模擬面接を行う日
- 楽典・ソルフェージュの学習開始時期
早めに楽典やソルフェージュの基礎を固めておくと、直前期に実技と面接対策に集中しやすくなります。
面接は丸暗記ではなく「軸」を作る
面接対策は文章の暗記ではなく、自分の考えの中心となる軸を整理することが大切です。
質問が変わっても、自分の言葉で説明できる状態を目指します。
整理しておきたい骨子は次の通りです。
- 目標(将来どのような音楽活動をしたいか)
- きっかけ(音楽を本格的に学ぼうと思った理由)
- 大学の理由(なぜこの大学なのか)
- 今の課題(弱点や伸ばしたい点)
- 改善計画(どのように練習し、成長していくか)
これらが一貫していれば、受け答えに説得力が生まれます。
まとめ

本記事では、音大における総合型選抜の仕組み、入試内容、メリット・デメリット、一般選抜との違い、合格のための対策までを整理しました。
実技だけでなく、志望理由や活動歴、将来の目標まで含めて評価される点が総合型選抜の特徴です。
大学ごとに選考方法や併願条件が異なるため、募集要項を確認したうえで計画的に準備を進める必要があります。
- 総合型選抜は、実技・書類・面接を通して意欲や適性まで総合的に評価する入試
- 音大では実技の比重が大きいが、志望理由や将来計画の具体性も重視される
- 専願条件の有無は大学ごとに異なるため事前確認が必須
- 年内に合否が出るケースが多く、早期準備が前提
- 合格には「実技・書類・面接」の内容に一貫性を持たせることが重要
総合型選抜は、演奏力だけでなく、自分の目的意識や将来像を示せる受験方式です。
評価の仕組みを理解し、実技・書類・面接を同じ方向性で整えることが合格への基本になります。
この記事の監修者

竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。