作成日: 2024/12/20 更新日:2024/12/20
神学とは?何を学ぶ学問なのかやどこで学べるかまで徹底解説

神学に興味があったとしても、神学とは何を学ぶ学問なのかわからない、という方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、神学とは何か、どのような学問内容があるのかをはじめ、どこで学べるのかについても詳しく解説していきます。
神学と宗教学や哲学の違い、神学部の入試とは、キリスト教徒でなくても神学部に入れるのかなど、神学に興味がある人がよく抱く疑問についてもお答えしますので、神学への理解を深める一助にしてください。
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年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
神学とは何か?学問の全体像を簡単に解説

まずは、そもそも神学とはどのような学問なのか、また、神学を学ぶ意義とは何なのか、について解説します。
神学とはどのような学問?
神学とは、キリスト教を探求する学問です。
そもそも神学という言葉は、ギリシャ語の「神」を意味する「theos」と、「学び」を意味する「logos」から成り立っています。
これらが組み合わさることで「神についての学び」、すなわち「神の学問」を意味します。
神学では、キリスト教を深く理解するために、聖書や教義だけでなく、哲学や歴史、文化といった幅広い分野を総合的に扱います。
さまざまな方法を用いてキリスト教の教えや歴史を学び、それを通じて現代社会や人間について考えることを目的としています。
哲学や歴史学、社会学などの学問が「人間の視点」から事象を解析するのに対し、神学は「神の視点」を重視します。
つまり、神学は神の存在や行為を前提とし、それを理解しようとする学問です。
また、神学は単に理論的な探求だけでなく、信仰生活の実践にも深く関わります。
キリスト教信者にとって、神学は信仰を深め、宗教的な問題を理解するための重要な手段となるため、神学は教会の教育活動や伝道活動の基盤ともなります。
なお、まれにユダヤ教やイスラム教などについての学びを含めることもあります。
神学を学ぶ意義とは?
神学を学ぶ意義はキリスト教徒でも、キリスト教徒でない方でもあります。
それぞれ解説します。
キリスト教徒の方が神学を学ぶ意義
キリスト教徒の方が神学を学ぶ意義は3つあります。
1つ目は、信仰の確立です。
聖書の教えを体系的に理解することで、成熟したクリスチャンとなり、神のみこころを深く知ることができます。
2つ目は、キリストの証人となるためです。
神学を学び、聖書の真理を体系的に理解することで、福音を確信を持って伝道することができるようになります。
3つ目は、異なる教えを見極めるためです。
神のみこころの全体を知ることで、曲がった教えや異端に惑わされることなく、正しい信仰を守り、教会を支える力を身につけられます。
キリスト教徒でない方が神学を学ぶ意義
キリスト教徒でない方が神学を学ぶ意義は2つあります。
1つは、哲学的・宗教的な思考力を養い、自己理解を深めることです。
神学はキリスト教の教義や聖書を理解し、それをどのように解釈し、理解すべきかを学び、「自分とは何か」「人生の目的とは何か」などについて問い直すことができます。
人間の存在意義や倫理観について学ぶことで、自己の理解が深まり、自己の確立ができるでしょう。
2つ目は、多様な文化や価値観を理解し、視野を広げることです。
神学ではキリスト教を中心として、宗教の教えや世界観を体系的に学ぶことができます。
これにより、異なる文化や信仰の背景を理解し、多様な価値観を尊重する力を養うことができます。
また、現代社会では、宗教が政治や文化、国際関係に大きな影響を与えています。
神学の学びは、宗教が現代社会で果たす役割を理解し、社会的な課題への洞察を深めるのに役立ちます。
主な学問内容

ここからは、神学では主にどのようなことを学ぶのかを紹介していきます。
神学で学ぶ内容は多岐に渡りますが、主に学ぶ内容は以下の通りです。
学問 | 内容 |
旧約聖書学 | 旧約聖書の著者、成立過程や時代背景、内容を研究 |
新約聖書学 | 新約聖書の成立過程、内容、メッセージを分析 |
歴史神学 | キリスト教の歴史と教会の発展を追究 |
組織神学 | 教会の組織や運営を理論的に考察 |
実践神学 | キリスト教と現代社会との関わりについて考察 |
宗教哲学 | 宗教の存在意義た本質について研究 |
比較神学 | 多様な宗教を比較し、自身の宗教の本質について理解 |
それぞれ解説します。
旧約聖書学
旧約聖書学は神学の核心的な学問分野の1つです。具体的には、旧約聖書(ヘブライ聖書)の各書、歴史、その時代背景などを研究します。
この学問は、旧約聖書がキリスト教の信仰と教義の根底をなす書物であることから、神学を学ぶ方にとっては必須の研究領域です。
旧約聖書学を学ぶことで、キリスト教の歴史的な背景と神の啓示への理解を深め、今日のキリスト教信仰とその教義の理解に繋がる洞察を得ることができます。
また、旧約聖書の文書が成立した文化的、社会的背景を理解することで、聖書のメッセージをより深く理解することが可能になります。
新約聖書学

新約聖書学は、新約聖書の成立背景、著者、内容、そしてそのメッセージを理解することを目的としています。
新約聖書はキリスト教の信仰と教義の基盤であり、その内容はキリスト教の理解に不可欠です。
そのため、新約聖書学を学ぶことで、キリスト教の教義、倫理、キリストの教えについて深い理解を得ることができます。
また、新約聖書学を学ぶと新約聖書の解釈と応用についての知識が得られるので、新約聖書を現代の社会や個人の生活にどのように適用するか、また、新約聖書がどのようにキリスト教の教義や実践に影響を与えているかを理解するのに役立ちます。
新約聖書学は神学の中でも特にキリスト教の根本的な教えを理解するために重要な学問です。
歴史神学
歴史神学は、キリスト教が誕生してから現在に至るまでの歴史を学ぶ学問分野で、神学の重要な一部を形成しています。
つまり、キリスト教会と教会の教えの歴史を学ぶ学問分野です。
この分野を学ぶことで、キリスト教の教義や信仰の発展、教会の役割や影響力の変遷を理解することができます。
さらに歴史について学ぶことで、現代社会の諸問題を分析する力も身につけることができます
組織神学

組織神学は、教会の組織構造や運営方法、教会の役割などに焦点を当てた学問です。
神学の一分野として、教会の組織的な側面を理解し、教会が如何にして信者の信仰生活を支え、社会に貢献するかを探求します。
組織神学では、教会が直面する管理問題や組織問題を解決するための理論的な枠組みを学びます。
具体的には、教会のリーダーシップスタイルや教会員間のコミュニケーション、教会の成長戦略などを学びます。
組織神学では、実践的な視点から教会の運営を考えるため、神学者だけでなく教会のリーダーや教育者にとっても有用な学問と言えるでしょう。
実践神学
実践神学は、現代におけるキリスト教と社会との関わりについて考察する学問です。
実践神学では、さまざまな宣教の現場における課題へのアプローチと実践的スキルを高めることを目的としています。
具体的には、宣教の現代的理解や教会での法律の存在意義などを学びます。
これらを学び、牧師の務めである神の実践(宗教儀式や牧会活動、説教や礼拝)に参加させていただくことを目指します。
宗教哲学

宗教哲学は、宗教自体の存在意義や本質について探究する学問です。
例えば、宗教と科学の関係や宗教と倫理(善悪など)の関係などを学びます。
この分野では、宗教を個人の信仰や感情として捉えるのではなく、人間全体としての問いとして捉えます。
比較神学
比較神学は、さまざまな宗教を比較することで、あらためて自身の宗教について深く理解しようとする学問です。
例えば、キリスト教を信仰している人が、イスラム教や仏教などの異なる宗教の教えや考えを学ぶことで、共通点や異なる点を知ることができます。
このように、比較することで、改めて自分の宗教の良さを理解したり、自分なりの考え方を見つけたりすることができます。
神学の関連分野について

神学は単独で存在する学問ではなく、多くの分野と深く結びついています。
そのため、神学の研究を深めるためには、哲学、歴史学、社会学など多様な分野との関連性を理解することが重要です。
哲学を学ぶことで、神の存在や宗教的な価値観を論理的に考察できるようになり、神学を学ぶ上での基礎的な理解が深まります。
歴史学を学ぶと、宗教が人類の歴史にどのように影響を与えてきたかが明らかになるので、より広い視野で神学を研究できるようになります。
社会学では、現代社会における宗教の役割や影響を研究するため、神学が直面する現実問題を理解するための鍵となります。
他にも、キリスト教を含む宗教全般について学ぶ宗教学は、神学と切ってもきれない関係です。
また、文学についても、聖書の文学的価値やキリスト教の信仰・教えの文学的作品への影響などを研究するものとして関わります。
このように、神学は極めて多様な分野と深く結びついている学問です。
神学を学ぶことが向いている人の特徴

神学を学ぶことが向いている人は以下のような人です。
- 人間や社会の本質について深く考えたい人
- 歴史や文化に関心がある人
- 宗教や哲学に興味がある人
それぞれ解説します。
人間や社会の本質について深く考えたい人
神学には、人間や社会の本質について深く考えたい人が適しています。
なぜなら、神学は、旧約聖書学や新約聖書学、宗教哲学などの学問を通じて、人間とは何か、社会とは何かなどについて探究することができるからです。
そのため、人間や社会について、多角的に理解し、本質について考えたい人には最適な学問です。
歴史や文化に関心がある人

歴史や文化に関心がある人も神学を学ぶことに向いています。
なぜなら、神学は、キリスト教の発達の歴史や、キリスト教が社会や文化に与えた影響などについて学ぶことができる学問だからです。
そのため、神学を学ぶことで、現代の文化や社会の宗教的な背景を理解し、宗教の影響について理解することができるでしょう。
宗教や哲学に興味がある
さらに、宗教や哲学に興味がある人も適しています。
なぜなら、神学は宗教や信仰に関する深い探究を通じて、倫理観や宗教と社会との関わりなどについて学ぶ学問だからです。
また、キリスト教と哲学には深い関わりもあります。
そのため、宗教や哲学に興味を持つ方にとって、神学はその両者を学ぶことができる最適な学問です。
神学を学べる主な大学

神学を学ぶことができる大学の一例と特徴を紹介します。
大学・学部 | 特徴 |
東京神学大学・神学部・神学科 | キリスト教の神学を網羅的に学べる大学です。 |
同志社大学・神学部・神学科 | 宗教教育学や宗教哲学などの幅広い学問を学ぶことができます。 |
立教大学・文学部・キリスト教学科 | キリスト教の宗教教育学と宗教社会学に特化しています。 |
上智大学・神学部・神学科 | 日本唯一のカトリック神学部であり、カトリック教を本格的に学べます。 |
それぞれの大学には、特徴があります。自身の学びたい内容に合わせて、適切な大学を選ぶことが重要です。
各大学を比較する際のポイント

では、神学が学べる大学を比較する際のポイントについて紹介します。
比較ポイント | 詳細 |
宗派 | キリスト教のどの宗派に基づいているのか。 キリスト教には以下のような宗派があり、それぞれ考えなどが異なる。 ・プロテスタント ・ローマ・カトリック ・オーソドックス |
学問分野 | 聖書学を中心に学ぶことになるのか、哲学や宗教学なども学ぶことができるのか。 |
研究対象 | キリスト教のみを学ぶことになるのか、ユダヤ教やイスラム教などの他の宗教についても学ぶことができるのか。 |
留学制度 | キリスト教国への留学制度の有無や、現地でどのような学習ができるのか。 |
これらを中心に、各大学を比較することで、あなたにとって最適な神学が学べる大学を見つけることができるでしょう。
よくある疑問とその回答

ここからは、神学に興味がある人がよく抱く疑問に対して具体的に回答していきます。
神学と宗教学の違いとは?
神学と宗教学との違いは、特定の宗教に焦点を置くかどうかという違いがあります。
神学は、特定の宗教、つまりキリスト教に焦点を置き、探求する学問です。
一方で、宗教学では、特定の文化や宗派にとどまらず、人間の文化的な活動としての宗教について考察します。
このように、研究対象となる領域に違いがあります。
神学と哲学の違いとは?

神学と哲学は、目的と方法論に大きな違いがあります。
神学は、キリスト教を深く理解し、その教義や教えを解釈、体系化する学問です。
一方、哲学は、人間の存在や意識、倫理、知識などの問い、つまり、人間の真実について追求する学問です。
つまり、神学が神の教えから世界を解釈するのに対し、哲学はより普遍的・客観的な視点から、自分なりに世界を理解しようとします。
神学部の入試ではどのような知識が問われるの?
一般入試においては、キリスト教などの知識が問われることはほとんどありません。
そのため、他の文系学部と同じように、国語や社会、英語などの試験であることがほとんどです。
一方で、総合型選抜や公募推薦入試などにおいては、聖書の知識を利用した小論文試験や、面接で聖書を読み質問に回答するなどの試験があることも多いです。
そのため、聖書やキリスト教についての知識が必要となり、対策が必要です。
キリスト教徒でなくても神学部に入れるの?

多くの場合は、信仰の有無を問わず、神学に興味がある人なら誰でも入学可能です。
一方で、一部の大学や入試方式によっては、キリスト教者のみが入学できることもあります。
例えば、東京神学大学神学部の一般入試の出願基準は以下の通りです。
高卒(見込)か高卒に準じる資格のある者。
受洗後1年以上教会生活をしている者で、教会から推薦がある者。
引用元:東京神学大学神学部神学科学生募集
このように、大学や入試形式によっては、キリスト教徒しか出願できないこともあります。
そのため、志望する大学の募集要項を確認することが必要です。
神学部に入らなくても神学を学べるの?
神学部に入らなくても神学を学ぶことは可能です。
多くの大学では、宗教学や哲学の一部として神学を教えているため、履修科目に神学が含まれていれば、神学部に入らずに神学を学ぶこともできます。
また、神学部や神学科のある大学であれば、他学部他学科であっても授業を履修できることが多いです。
そのため、神学部に入らなくても神学を学ぶことは可能です。
神学を主として学びたい場合は、神学部に入学することをお勧めします。
一方で、宗教学や哲学などを重点的に学び、その一環として神学を学びたいと考えている場合は、哲学科などを選んだ方が良いでしょう。
まとめ

今回は神学の具体的な内容について詳しく解説してきました。
最後に、この記事の特に重要なポイントについてまとめます。
- 神学とは、キリスト教の教えや歴史など、キリスト教について探究する学問である。
- 神学で学ぶ分野には、旧約聖書学、新約聖書学、歴史神学、組織神学、実践神学、宗教哲学、比較神学などがある。
- 神学は、哲学や歴史学、社会学など多様な分野と関連のある学問である。
- 神学を学ぶことが向いている人は、人間や社会の本質について深く考えたい人、歴史や文化に関心がある人、宗教や哲学に興味がある人である。
- キリスト教徒でなくとも、神学を学ぶことはできるとともに、学ぶ意義もある。
ここまでの内容を踏まえて、神学に少しでも興味を持った方は、ぜひ、神学を学ぶことを検討してみてください。
この記事の監修者

竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。