作成日: 2025/4/01 更新日:2025/4/01
通信工学とは何を学ぶ学問?主に学ぶことを将来の就職先の一例と共に解説

スマートフォンや無線LAN・5G通信など、私たちの日常生活は通信技術に支えられています。
これらの技術を支える学問が「通信工学」です。
通信工学は、情報を効率的かつ正確に送受信するための技術と理論を研究する分野で、幅広い知識が求められます。
そこで本記事では、通信工学について以下の内容を解説します。
- 通信工学で学ぶ内容や研究分野
- 学べる大学
- 卒業後の進路
- 通信工学に向いている人の特徴
通信技術の進化が加速する現代社会において、通信工学の知識はさまざまな業界で重宝されています。
通信工学に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を書いた人

年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
通信工学とは

通信工学は、情報の伝達に関する技術や方法を研究・開発する工学の一分野です。
電気通信や無線通信などのさまざまな通信手段を対象とし、効率的かつ正確な情報の伝送を実現するための理論や技術を扱います。
通信工学の主な研究対象を以下の表にまとめました。
分野 | 主な研究内容 |
|---|---|
通信方式 | 変調・復調技術・多重化技術・誤り訂正符号 |
ネットワーク | インターネット技術・モバイル通信・IoT |
信号処理 | デジタル信号処理・画像や音声の圧縮技術 |
セキュリティ | 暗号化技術・認証システム |
通信機器 | アンテナ設計・通信端末の開発 |
新技術 | 5G/6G通信・量子通信・光通信 |
通信工学の知識と技術は、スマートフォンやインターネットなど、日常生活に欠かせない多くの製品やサービスに活用されています。
また、次世代通信技術の研究や宇宙通信技術の開発など、未来の通信インフラを支える重要な役割も担っています。
このように、通信工学は現代社会の基盤を支えるとともに、将来の技術革新を牽引する重要な学問分野といえるでしょう。
通信工学とは何を学ぶ学問?学ぶ内容・研究分野

通信工学では何を学ぶのでしょうか。ここでは、通信工学で学ぶ内容・研究分野について解説します。
- 電磁気学
- 通信技術の基礎
- ネットワーク技術
- 信号処理
- 無線通信
- 情報理論とセキュリティ
それぞれ見ていきましょう。
電磁気学

電磁気学は通信工学の基礎を支える重要な学問分野です。
電流による磁界や時間的に変動する磁界の概念を理解し、電磁気現象を数学的に正確に説明できるようになることを目指します。
以下の表では、電磁気学の主要な学習内容とその説明をまとめています。
学ぶ内容 | 説明 |
|---|---|
電場と磁場の基本概念 | 電場は電荷によって生じる力の場、磁場は磁石や電流による力の場。 |
マックスウェルの方程式 | 電場と磁場の相互作用を記述し、電磁波の伝播や反射・屈折を解析するための基本的な方程式。 |
電磁波の性質 | 電磁波は光速で伝播し、周波数や波長に応じて異なる特性を持ち、無線通信や光通信に応用される。 |
アンテナ理論 | アンテナの設計と性能が通信品質に与える影響を学ぶ。 効率的な通信システムの構築に役立つ。 |
電磁シールドとフィルタリング技術 | 電磁干渉を防ぐ技術で、通信の品質を保つために不可欠。 |
電磁気学を理解することは、電磁波による情報伝達を扱う通信工学において不可欠です。
通信工学を学ぶ学生は、1~2年次に電磁気学を学び、通信技術における基礎知識を修得することが求められます。
通信技術の基礎
通信技術の基礎では、データの送受信や信号処理に関するさまざまな技術について学びます。以下の表に、その主要な学習内容を示しています。
学ぶ内容 | 説明 |
|---|---|
アナログ信号とデジタル信号 | アナログ信号とデジタル信号の違い、信号の変換と伝送方法について理解する。 |
符号化と復号化、変調と復調 | データを効率的かつ正確に伝送するための基本的なプロセス。 |
通信路の特性とノイズ対策 | データ伝送の経路(有線・無線通信)に関する理解と、干渉や誤差を最小限に抑える方法を学ぶ。 |
通信プロトコルと標準規格 | TCP/IPなどのプロトコルやIEEE 802.11などの標準規格を学び、異なる機器間の円滑な通信を実現する。 |
実践的なシステム構築 | シミュレーションや実機を使ったネットワーク構築で、理論を実践に応用し、現実の問題に対処する能力を養う。 |
表に示された通信技術の基礎的な知識は、データ伝送の効率と信頼性を高めるための重要なスキルセットです。
通信技術の基礎を学ぶことで、より高度な通信工学の分野への理解が深まるでしょう。
ネットワーク技術

ネットワーク技術は、コンピュータや携帯電話などの機器をつなげて情報をやりとりする仕組みを学ぶ分野です。
インターネットがどのように動いているのか、その仕組みを理解することが主な目標といえます。
ネットワーク技術で学ぶ内容は、以下のとおりです。
学ぶ内容 | 説明 |
|---|---|
ネットワーク理論 | OSI参照モデルやTCP/IPモデルを理解し、データがネットワークを通じてどのように移動するかを学ぶ。 |
ネットワーク設計と構築 | ルーターやスイッチなどの設定・管理、ネットワークトポロジーの設計、ネットワークセグメンテーションを学ぶ。 |
ネットワークセキュリティ | ファイアウォールやVPN・IDS/IPSなどを通じてセキュリティ対策を学び、実際の現場での適用力を身につける。 |
最新のネットワーク技術 | SDNやNFVなどの新しいアーキテクチャを学び、クラウドコンピューティングやIoTとの関連性を理解する。 |
上の表では専門的な用語が数多く登場しましたが、難しく考える必要はありません。
かんたんにいうと、Wi-Fiや無線LANなど、身近なネットワークの仕組みについて学ぶ学問です。
スマートフォンの5G通信や、IoTと呼ばれる家電などをネットにつなぐ技術も重要なトピックです。
ネットワーク技術の知識は、将来ITやコンピュータ関連の仕事に就きたい人にとってとくに役立つでしょう。
信号処理
信号処理は、通信工学において音声や画像などの情報を扱う重要な分野です。
アナログ信号をデジタル信号に変換する技術や、ノイズを除去して信号を鮮明にする方法を学びます。信号処理の分野で学ぶ内容は、以下の通りです。
学ぶ内容 | 説明 |
|---|---|
フーリエ変換 | 複雑な波形を単純な正弦波の組み合わせに分解する技術。 音声や画像の分析に使用され、圧縮や特徴抽出に役立つ。 |
サンプリング | 連続的なアナログ信号を一定間隔で測定し、デジタルデータに変換する過程。 音楽CDやデジタルカメラの画像処理などに不可欠。 |
フィルタリング | 信号から不要な成分を取り除いたり、特定の成分を強調したりする技術。 ノイズ除去や音質改善、画像のぼかしや鮮明化に応用される。 |
スペクトル解析 | 信号に含まれる周波数成分の強さを調べる技術。 音声認識や地震波の分析、無線通信の品質評価などに広く使用される。 |
信号処理の技術は、スマートフォンの音声認識や画像処理・医療機器の画像診断などに応用されています。
また、信号処理の知識は、音楽や動画の配信サービス・自動運転技術などの開発にも活かされています。
信号処理を学べば、日常生活で使う様々な機器の仕組みを理解できるようになるでしょう。
無線通信

無線通信は、電波を使って情報をやりとりする技術を学ぶ分野です。スマートフォンや Wi-Fi・ラジオ・テレビなど、私たちの生活に欠かせない技術の基礎といえます。
無線通信で学ぶ内容は、以下のとおりです。
学ぶ内容 | 説明 |
|---|---|
変調技術 | 報(音声やデータ)を電波に乗せて送信する方法。 音楽をラジオで聴いたり、スマートフォンでインターネットを使ったりする際に活用される重要な技術。 |
アンテナ理論 | 電波を効率よく送受信するための装置の仕組みと設計方法。 携帯電話の基地局や家庭のテレビアンテナなど、さまざまな場面で使われるアンテナの性能向上に役立つ。 |
電波伝搬 | 電波が空間を伝わる際の特性や、建物や地形による影響を学ぶ。 電波の届く範囲や通信品質を予測し、より安定した無線通信を実現するために重要。 |
無線通信システム | 携帯電話網やWi-Fi・Bluetoothなど、実際に使われている無線技術の仕組みを学ぶ。 |
以上の知識は、将来の通信システムの設計や開発に携わる人にとって不可欠です。
無線通信の進歩は、私たちの生活をより便利で豊かなものにしていく可能性を秘めています。
情報理論とセキュリティ
情報理論とセキュリティは、データの効率的な伝送と保護に関する分野です。
情報の量を数学的に扱い、データを効率よく圧縮・伝送する方法を学びます。
情報理論とセキュリティの分野で学ぶ内容を以下にまとめました。
学ぶ内容 | 説明 |
|---|---|
暗号理論 | 情報を数学的手法で秘匿し、第三者に解読されないようにする技術を学ぶ。 |
情報セキュリティマネジメント | 組織におけるセキュリティ対策の立案・実施・評価の方法を学ぶ。 |
ネットワークセキュリティ | 通信ネットワークにおける脅威と対策技術を学ぶ。 |
このような知識は、インターネットバンキングやオンラインショッピングなどの安全性を確保するために欠かせません。
また、個人情報保護やサイバー攻撃対策など、現代社会の重要課題にも直結しています。
情報理論とセキュリティの分野を学ぶことで、安全で信頼性の高い通信システムの構築に貢献できるでしょう。
通信工学を学べる大学の学部の例

ここでは、通信工学を学べる学部の例をいくつか紹介します。
- 工学部
- 情報学部
- 理工学部
それぞれの学部について、詳しく見ていきましょう。
工学部

工学部では、電気電子工学科や情報通信工学科・電気情報工学科などの学科で通信工学を学べます。
工学部のなかでも、通信工学に関連した学科に入れば、情報にまつわる分野を幅広く学習できるでしょう。
電気電子通信工学科や情報通信工学科では通信の基礎から応用まで体系的に修得できます。
また、工学部の通信系学科では、以下のような通信分野で役立つ資格取得をサポートしています。
- 電気主任技術者
- 電気通信主任技術者
- 無線従事者 など
卒業後は、ネットワークエンジニアやシステムエンジニア・プログラマーなど通信分野の専門職に就く人が多いのが特徴です。
参考記事:工学部の特集ページはこちら
情報学部
情報学部では、情報ネットワーク学科や情報通信学科などで通信工学を学べます。
このような学科では、無線通信技術や情報通信ネットワーク・プログラミング言語などの専門知識を修得できるでしょう。
そのなかでも情報通信学科では、ハードウェアとソフトウェアの両面から通信技術を学べます。
また、AI応用やブロックチェーンなどの最新技術も研究対象となるでしょう。
カリキュラムは、基礎から応用へと段階的に構成されており、1年次の基本技術から専門的な通信技術へと発展していきます。
卒業後は、システムエンジニアやプログラマーなど、情報通信分野の専門職に就く道が開かれているでしょう。
理工学部

理工学部では、電気電子通信工学科や電子通信工学科などで通信工学を専門的に学習できます。
無線通信技術や情報通信ネットワーク・プログラミング・電気回路などを、座学と実験を通して学べるでしょう。
とくに、電気電子通信工学科や電子情報通信学類などでは、以下のテーマから自分の興味に沿った分野を選択できます。
- 電気
- 半導体材料
- 集積回路
- 電波・光技術
- 信号伝送技術 など
カリキュラムは、基礎から応用へと段階的に構成され、実験や演習を重視した実践的な教育が行われています。
卒業後は電気・通信設備関連企業や電機メーカー・IT機器メーカー・情報通信会社など多岐にわたる分野で活躍できるでしょう。
通信工学を学べる学校は?大学・学部・学科の一例

通信工学を学べる大学・学部・学科の具体例は、以下のとおりです。
- 名古屋大学 工学部 電気電子情報工学科
- 東京電機大学工学部情報通信工学科
- 愛知工科大学工学部情報メディア学科
- 神奈川工科大学情報学部情報工学科
- 電気通信大学 情報理工学域
それぞれ見ていきましょう。
名古屋大学 工学部 電気電子情報工学科

名古屋大学工学部電気電子情報工学科には「電気工学」「電子工学」「情報・通信工学」の3つの専攻があります。
通信工学については、情報・通信工学専攻で学べます。
本学科の特徴は、以下のとおりです。
- 情報・通信工学専攻で、デジタル通信や環境電磁工学など高度な知識を習得できる。
- 電磁気学から通信工学まで、幅広い主要科目が用意されている。
- 最先端の通信技術研究に取り組める充実した研究環境がある。
研究分野は幅広く、情報通信技術に関する最先端の研究に取り組んでいます。
入試難易度は高いものの、入学できれば通信工学における専門的なスキルや技術が学べるでしょう。
東京電機大学工学部情報通信工学科

東京電機大学工学部情報通信工学科は、通信技術と情報技術の両分野にわたる教育と研究に取り組んでいます。
幅広いカリキュラムを通じてハードウェアとソフトウェアの両方に精通した技術者を育成します。
東京電機大学工学部情報通信工学科の特徴は、以下のとおりです。
- 基礎科目の習熟度別クラスで、1年次に電気・電子回路やプログラミングを確実に習得できる環境を整備している。
- ワークショップと段階的なカリキュラムで、1年次から実践を重視し、4年次には「情報通信プロジェクト」での研究に取り組む。
- 少人数制の専門科目で、上級学年にはプログラミングやマイコンに特化した学びを提供している。
ネットワークや通信システム・信号処理技術の習得を通じて、実践的かつ応用力のあるエンジニアを目指せるでしょう。
東京電機大学工学部情報通信工学科は1年次から、幅広い技術分野を学べるため、実践的なスキルを身につけたい人に向いています。
愛知工科大学工学部情報メディア学科

愛知工科大学工学部情報メディア学科では、コンピュータに関連する専門知識と技術を実習中心に学べます。
具体的には、プログラミングや画像・音声情報処理、デジタルコンテンツ制作など、幅広い分野について学べるでしょう。
愛知工科大学工学部情報メディア学科には、以下の特徴があります。
- 実習中心のカリキュラムで、即戦力となるスキルを習得できる環境を整備している。
- IoT・VR・AIなどの先端技術に対応した研究テーマを展開している。
- 幅広い産業分野で活躍できる人材を育成している。
IoT時代を見据え、情報技術の基礎から応用までをプロジェクト型の実践教育を通じて習得できます。
愛知工科大学工学部情報メディア学科で学べば、あらゆる産業界で活躍できるコンピュータエンジニアを目指せるでしょう。
神奈川工科大学情報学部情報工学科

神奈川工科大学情報学部情報工学科は、進化し続ける情報化社会を支えるプロフェッショナルを育成することを目指しています。
基礎力を徹底的に鍛え、AIやIoT・ビッグデータ解析などの先端技術を応用する力を養います。
神奈川工科大学情報学部情報工学科の特徴は、以下の通りです。
AIやビッグデータ解析などの先端技術に特化した教育カリキュラムを編成している。
ソフトウェア開発系とコンピュータシステム系の二つの専門分野を組み合わせた学びを提供している。
プロジェクト研究や実践的な教育プログラムをとおして、実践力を強化する。
ソフトウェア開発やコンピュータシステムの基盤技術を学ぶことで、広範な情報工学分野に対応できるエンジニアを目指せます。
神奈川工科大学情報学部情報工学科は、高度な先端技術を習得し、情報化社会で活躍したいと考える人に向いているでしょう。
電気通信大学 情報理工学域

電気通信大学の情報理工学域は「総合コミュニケーション科学」の創出を担う人材育成を目指しています。
本学科の特徴は、以下の通りです。
- 情報通信工学プログラムで、通信理論から暗号技術、システム設計まで幅広く学べる。
- 電磁気学や宇宙通信工学など、実践的な通信工学科目が充実している。
- 大学院と連携したカリキュラムで、高度な専門知識と創造力を養成できる。
とくに、Ⅱ類(融合系)の情報通信工学プログラムでは、情報・通信理論、暗号技術の理論、などを学べるのが特徴です。
電気通信大学 情報理工学域のカリキュラムは、大学院博士前期課程との一貫性を考慮して編成されています。
そのため、高度な専門知識と実践力が身に付くでしょう。
参考:電気通信大学 情報理工学域
今回取り上げた大学・学部・学科以外で通信工学を学べる大学・学部・学科の一例は以下のページでまとめています。
通信工学を学べる大学・学部・学科のまとめページ
学び終えたあとの進路の傾向やキャリアの一例を公開

通信工学を大学で専攻した人は、卒業後にどのような進路を歩んでいるのでしょうか。
ひとつの例として、東京電機大学工学部情報通信工学科の卒業後の進路を見ていきましょう。
東京電機大学工学部情報通信工学科の2023年度卒業生の進路の就職先の業種とその割合は以下のとおりです。
業種 | 割合 (%) |
|---|---|
情報通信業 | 6.2 |
技術・サービス業 | 16.9 |
製造業 | 12.4 |
建設業 | 5.6 |
その他 | 3.4 |
卸・小売業 | 1.1 |
輸送 | 1.1 |
電気・ガス・水道 | 1.1 |
教員 | 1.1 |
公務員 | 1.1 |
参照:東京電機大学工学部情報通信工学科 主な進路・目指せる資格
通信工学を学べる大学に進学した卒業生は、情報通信業・サービス業・製造業などの業種で活躍していることがわかります。
業種傾向は大学によって異なるので、希望の大学の卒業生の進路をホームページやパンフレットで確認しましょう。
また、大学院に進学する人の割合は、以下のとおりです。
大学 | 大学院進学率 |
92.5%(2023年度) | |
16.1%(2016年実績) | |
43.7%(2024年3月卒) |
院への進学率は、大学によって大きく異なるものの、文系学部と比較すると多くの学生が院に進学する傾向にあります。
大学院へ進学すると専門性を高められるため、選択肢のひとつとして考慮しておくとよいでしょう。
専攻した経験を活かせる就職先・職業・仕事の代表例

続いて、通信工学の知識・勉強を活かせる就職先を紹介します。代表的な3つの就職先は、以下のとおりです。
- メーカー
- IT企業
- 通信事業会社
- 公共機関・研究機関
- 電力・エネルギー企業
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メーカー

通信工学を学んだあと、メーカーで働くことは有望な選択肢です。
以下の表に、通信工学の知識がメーカーでどのように活かされるかをまとめました。
メーカーの種類 | 活かせる通信工学の知識 |
|---|---|
通信機器メーカー | スマートフォンやルーター・モデムの開発で、通信プロトコルや無線通信の知識を活用。 |
自動車メーカー | 車載通信システムや自動運転技術の設計・開発で、V2VやV2I通信の分野で活躍。 |
家電メーカー | スマート家電の開発において、Wi-FiやBluetoothなどの無線通信技術を活用し、製品開発に貢献。 |
製造業全般 | 生産ラインの自動化やIoT技術の導入で、リアルタイムデータ通信を実現し、効率的な生産をサポート。 |
通信工学の知識は、さまざまな製造業界で重要な役割を果たしています。
そのため、技術革新が進む現代において、通信工学の専門家は高く評価されるでしょう。
IT企業
IT企業では、通信工学の知識が幅広く求められます。
以下の表に、IT企業での具体的な職種と、それぞれに必要な通信工学の知識をまとめました。
職種 | 必要な通信工学の知識とスキル |
|---|---|
ネットワークエンジニア | 通信プロトコルの理解データ通信の最適化ネットワークセキュリティの実装。 |
システムエンジニア | システム全体の設計・管理トラブルシューティングネットワークの最適化。 |
クラウドエンジニア | クラウドサービスの設計・運用無線通信とネットワークセキュリティの知識。 |
プロジェクトマネージャー | プロジェクト進行管理クライアントとのコミュニケーション技術的問題の解決。 |
IT企業での仕事は、多様な職種で通信工学の知識を活かす機会に恵まれています。
とくに、ネットワークやセキュリティ・クラウド技術の分野で価値が発揮されるでしょう。
通信事業会社

通信事業会社は、通信工学の知識を直接活かせる職場です。以下の表に、通信事業会社での具体的な仕事と関連する通信工学の知識をまとめました。
仕事内容 | 関連する通信工学の知識 |
|---|---|
通信ネットワークの設計・運用 | 効率的で信頼性の高いネットワーク構築・最新の通信プロトコルやアーキテクチャの理解。 |
通信インフラの整備 | 光ファイバーや基地局の設置・電磁気学やアンテナ工学の知識を活かした物理的インフラの構築。 |
新しい通信技術の研究開発 | 5Gや6Gなどの次世代通信技術の開発・IoTや自動運転技術の基盤構築。 |
ネットワークセキュリティ | サイバー攻撃からの防御、暗号化技術やセキュリティプロトコルの強化。 |
通信事業会社での仕事は、通信工学の知識をフルに活用できる場面が多いのが特徴です。
大学時代に通信工学を学んだ人材は、次世代通信技術やセキュリティ分野で大いに活躍できるはず。
公共機関・研究機関
通信工学の専門知識を活かせる公共機関としては、国家公務員のデジタル・電気・電子職が挙げられます。
具体的な機関と業務内容は、以下の通りです。
機関 | 業務内容 |
警察庁 | サイバー警察局では、官民連携・人材育成等の基盤整備・各国との情報交換・サイバー事案の捜査指導・高度な解析への技術支援等を強力に推進 など |
総務省 | ICTによる効率よい情報システムの管理と運営、携帯電話および航空機無線局の許認可業務 など |
デジタル庁 | 国の情報システムの整備・管理の基本方針を策定し、その標準化や統一化 など |
地方公務員としては、庁舎内ネットワークの構築・運用管理や防災情報システムの整備・運用に携われます。
また、通信工学の知識を活かせる研究機関は、以下の通りです。
- 理化学研究所
- 産業技術総合研究所
- JAXA
以上の機関では、最新のIT技術を駆使した研究開発や政策立案に関与する機会が多いといえるでしょう。
電力・エネルギー機関

電力会社では、事業所間を結ぶ通信ネットワークの構築・運用・保守が主な業務です。
電柱に張り巡らされた光ファイバーケーブルや通信機器の巡視・点検、故障時の早期復旧などを担当します。
たとえば、中部電力などでは通信ネットワークセンターで、24時間監視業務を行い電力の安定供給を支えています。
また、送配電ネットワークの運用管理も通信工学の知識が活かせる分野です。
近年は、再生可能エネルギー関連の通信システム構築も増加しています。
電力・エネルギー業界は安定した雇用と社会貢献度の高さが特徴であり、通信工学専攻者にとって魅力的な就職先といえるでしょう。
通信工学に向いている人の特徴

ここでは、通信工学に向いている人の特徴を4つ紹介します。
- 好奇心がある
- 論理的思考力がある
- 物理が得意
- 技術トレンドへの関心が高い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
好奇心がある

好奇心旺盛な人は、通信工学を学ぶのに向いています。
通信工学の分野では、技術の進歩が速く、常に新しい知識や技術に向き合う必要があります。
その点、好奇心がある人は自ら積極的に最新の情報を取り入れ、学び続ける意欲を持ち続けられるでしょう。
また、好奇心の強さは仕事の面白さを見出す能力とも関連するため、長期的なキャリア形成に有利に働きます。
通信工学者として成長し続けるためには、好奇心を維持して、常に学習意欲を持ち続けることが不可欠といえるでしょう。
論理的思考力がある
通信工学では、複雑なシステムや問題を扱うため、論理的思考力が不可欠です。
論理的思考力は、問題を体系的に分析して、効率的な解決策を見出すのに役立ちます。
そのため。論理的思考力の高い人は、通信システムの設計や最適化において優れた成果を期待できるでしょう。
また、デバッグやトラブルシューティングの場面でも、論理的思考力が大きな強みとなります。
この能力は、キャリアの成功につながる大きな武器といえるでしょう。
物理が得意

物理が得意な人は、通信工学を学ぶのに向いています。
通信工学は、物理学の原理に深く根ざしている分野であるため、物理的な思考力が常に求められるからです。
電磁気学や回路理論・信号処理など、多くの科目で高度な計算能力が要求されます。
また、新技術の開発や既存システムの最適化にも、数学的・物理学的アプローチが必要です。
物理が得意な人は、このような課題に対して積極的に取り組めるため、革新的なソリューションを生み出せるでしょう。
技術トレンドへの関心が高い
最新の技術トレンドに関心がある人は、通信工学に適性があります。
通信工学は急速に進化する分野であり、最新の技術トレンドに常に注目する必要があるからです。
5GやIoT・AI・量子通信など、新しい技術が次々と登場し、技術のトレンドは目まぐるしく移り変わります。
その点、技術トレンドへの高い関心は、激しい環境の変化に適応し、革新的なソリューションを生み出す原動力となるでしょう。
このような姿勢は、継続的な学習と自己成長を促し、長期的なキャリア形成にも有利に働きます。
この学問に関するよくある質問

通信工学に興味がある人はどんなことを疑問に思うのでしょうか。最後に、よく抱く疑問とその回答を紹介します。
- 通信工学と情報工学の違いは?
- 通信工学は難しい?
- 通信工学を学ぶには英語は必要?
- 通信工学を学べる大学はどのように選んだらよい?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
通信工学と情報工学の違いは?

通信工学と情報工学は、アプローチや目的が異なります。以下にそれぞれの特徴を表にまとめます。
項目 | 通信工学 | 情報工学 |
|---|---|---|
アプローチ | データの伝送やネットワーク技術に焦点を当てる | 受け取ったデータの処理や管理に重点を置く |
目的 | データを効率的かつ正確に送受信する方法を研究 | 情報の効率的な処理と利用、システム設計を研究 |
学ぶ内容 | 通信プロトコル・信号処理・ネットワークアーキテクチャなど | プログラミング・アルゴリズム・データベース管理・人工知能など |
通信工学は、主にデータを送受信する技術に焦点を当てています。
電波や光ファイバーなどの物理的な伝送路を通じて、情報を正確かつ効率的に伝達する方法を研究する分野です。
そのため、無線通信やネットワーク設計・信号処理などが通信工学の中心的な研究領域にあたります。
一方、情報工学は受け取ったデータの処理や管理に重点を置く学問です。
コンピュータを使ってデータを分析し、使える情報に変換する技術を扱います。
データベース設計やプログラミング・アルゴリズム開発などが情報工学の主要な研究テーマです。
つまり、通信工学は「どうやって情報を送るか」、情報工学は「送られてきた情報をどう活用するか」を考える学問といえます。
両者は密接に関連しており、現代の情報社会を支える重要な技術基盤となっています。
通信工学は難しい?
通信工学は、物理学や数学の知識が求められるため、難易度が高いと感じる人が多い傾向にあります。
電磁波や電気回路の原理・信号処理などの高度な技術を理解することが求められます。
そのため、通信工学の学習には一定の努力と時間が必要です。
学習の難易度は高いものの、友人と協力しながら取り組むことで、難しい内容にもチャレンジできるはずです。
通信工学を学ぶには英語は必要?

通信工学を学ぶには、英語の知識が非常に重要です。
通信工学の分野において、最新の研究成果や技術文献は、ほとんど英語で発表されています。
とくに、国際的な学術論文や技術レポートは英語で書かれているため、文書を英語で理解する能力が求められます。
また、国際会議での発表やディスカッションも英語で行われることが一般的です。
そのため、英語を理解し、技術的な内容を把握する力があれば、学習や研究をより効果的に進められます。
英語を学ぶことで、通信工学の最新の技術動向をキャッチアップし、国際的な場で活躍するチャンスも広がるでしょう。
通信工学を学べる大学はどのように選んだらよい?
通信工学を学べる大学は全国に多数あり、選び方のポイントはいくつかあります。
まず、自分の興味のある研究分野に近い内容を扱っている教授がいるかについて調べることが重要です。
通信工学は、研究テーマが多岐にわたるため、自分の関心領域に合った研究室があるかを確認しましょう。
また、カリキュラムの内容や実習・インターンシップの充実度、就職実績なども重要な判断材料です。
学費も大学によって異なり、私立大学では多くが年間151万円以上となっています。
さらに、大学の偏差値や立地条件、研究設備の充実度なども考慮すべきでしょう。
オープンキャンパスや大学のホームページで情報収集し、自分の目標や適性に合った大学を選ぶことが大切です。
今回の内容のまとめ

通信工学は、私たちの日常を支える重要な学問です。
電磁気学からネットワーク技術、情報セキュリティまで幅広い分野を網羅しています。
解説したなかでも、通信工学に関する重要なポイントを最後に記載していきます。
- 通信工学とは、情報を効率的かつ正確に送受信する技術と理論を研究する学問である。
- 学ぶ分野としては、電磁気学・通信技術の基礎・ネットワーク技術などが挙げられる。
- 通信工学を学べる大学の卒業後の主な就職先としては、メーカー・IT企業・通信事業会社などが挙げられる。
- 好奇心旺盛な人・論理的思考力がある人・計算や物理が得意な人に通信工学はおすすめ。
- 通信工学を専攻できる大学でも入学後のカリキュラムが異なるので、あなたの興味やキャリア目標に合わせて大学を選ぶ。
通信工学の知識は、デジタル社会を生き抜くための貴重な武器となるはずです。興味のある方は、未来の通信技術を支えるエンジニアを目指してみてください。
最後に通信工学に興味がある方におすすめの通信工学と関連性がある学問をまとめたページをご紹介します。
情報学の特集ページはこちら
電気工学の特集ページはこちら
この記事の監修者

竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。