作成日: 2025/2/04 更新日:2025/2/04
材料工学とは何を学ぶ学問なのか?大学の一例や就職先まで徹底解説

工学系の大学や学部へ進学しようとした場合、材料工学という分野を学べる可能性が出てきます。
そこで本記事では、材料工学とは何かを理解できるように、学ぶ分野の内容や材料工学が学べる大学、卒業後の就職先について徹底的に詳しく解説していきます。
また、材料工学を学ぶことに向いている人の特徴や得られる可能性のある資格のほか、受験生がよく抱く疑問とその回答も掲載しています。
ぜひ最後まで読み進めて材料工学についての理解を深め、進路選択に活かしてください。
この記事を書いた人

年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
材料工学とは何かを簡単に解説

材料工学とは、私たちが使うあらゆる「もの」を支える材料(鉄、プラスチック、セラミックスなど)の性質を研究し、より良いものづくりを目指す学問です。
材料工学は、金属・セラミックス・ポリマー・複合材料などの特性や構造、加工方法や用途を研究する学問分野です。材料工学には、次のような目的や役割、応用分野があります。
項目 | 詳細 |
目的 | 材料の構造と性質の関係を解明し、新しい材料の開発や既存材料の改良を目指す |
専攻すると学ぶ事になる主な分野を大公開

材料工学は、多様な材料の特性や応用について学ぶ学問です。具体的には、金属・セラミックス・ポリマー・複合材料などがどのように作られ、使われるのかを研究します。
次の表は、材料工学の代表的な分野で、どのようなことを学ぶのかをまとめたものです。
以下、材料工学で学ぶ主要な分野について詳しく説明していきます。
金属材料

金属材料分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
身近な金属製品への応用を扱う分野であるため、日常生活に深く関わる学問であると言えます。
セラミックス材料
セラミックス材料分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
セラミックスは、高温に耐え、腐食に強く、電気絶縁性があるため、電子部品や耐火材として広く使われています。
ポリマー材料

ポリマー材料分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
ポリマーは軽量で加工しやすく、多くの産業製品に利用されています。
複合材料
複合材料分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
例えば、繊維強化プラスチック(FRP)は、強度と軽量性を兼ね備えています。
ナノ材料

ナノ材料分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
ナノ材料は新しい特性を持つことが多く、医療・エレクトロニクス・環境技術などへの応用が期待されています。
材料力学
材料力学分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
材料の強度や剛性、弾性などを解析し、建築や機械設計、航空宇宙産業などに役立てます。
材料化学

材料化学分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
この分野では、化学反応の基礎から材料の開発や改良に至るまで、広範な知識を学びます。
材料加工
材料加工分野では、次のような内容について学びます。
項目 | 詳細 |
材料加工学は、多様な材料の特性や応用方法を学び、それを活かして新しい製品や技術を開発するための重要な学問です。
材料工学が学べる大学の一例

材料工学を専攻できる大学の具体例は以下のとおりです。
東京工業大学 物質理工学院材料系
東北大学 工学部 材料科学総合学科
それぞれ見ていきましょう。
東京工業大学 物質理工学院材料系

東京工業大学の物質理工学院材料系は、材料系の研究において国内外で高い評価を受けています。
参考:東京工業大学 物質理工学院-材料系 材料系 News 受賞・表彰
また、関連する教育研究組織などが複数存在し、実験を通じて実践的な教育が受けられます。
参考1:東京工業大学 物質理工学院-材料系 材料系について 概要
参考2:東京工業大学 物質理工学院-材料系 教育 材料系(学士課程)5つの特長
なお、カリキュラムは金属・有機材料・無機材料の3つの分野に大別されており、専門分野にフォーカスして学修できます。
参考:東京工業大学 物質理工学院-材料系 教育 材料系(学士課程)5つの特長
これらの環境を活かして革新的工業材料を創出するための知恵と創造性を身に付け、将来、産業界が求める材料学分野の先導的科学技術者となる基盤を築くことができます。
参考:東京工業大学 物質理工学院-材料系 材料系について 私たちのビジョン
東北大学 工学部 材料科学総合学科

東北大学工学部の材料科学総合学科は、材料科学の基礎から応用までを幅広く学ぶことができるカリキュラムを提供しています。
また、国際的な研究プログラムに参加し、世界トップレベルの研究成果を出すことを目指しています。
卒業生は材料分野を中心とした幅広い産業界・学界において指導的役割を常に担い続けており、就職活動や就職後のネットワーク構築にも強みがあります。
参考:東北大学工学部材料科学総合学科 学科長からのメッセージ
卒業後の就職先

材料工学を学べる大学を卒業した人は、どのような進路を選択しているのでしょうか。東北大学工学部の材料科学総合学科では、卒業生の進路状況を公開しています。
令和5年度には、114名の学部卒業生のうち、約9割の102名が大学院に進学しました。進路の内訳は以下のとおりです。
進学:90%
自動車・機械:2%
鉄鋼・非鉄・金属:1%
電気・電子部品・デバイス等:1%
化学・素材:1%
その他:5%
このように、高い進学率を誇る学科ですが、2年間の修士課程を経て就職する学生が8割以上を占めるため、学部と大学院を合わせて6年間在籍して研究を行う学生が多くいます。
令和5年度には、修士課程を修了した99名のうち16名がさらに進学しており、進路の内訳は以下のとおりです。
進学:16%
鉄鋼・非鉄・金属:23%
情報通信業:16%
化学・素材:13%
自動車・機械:12%
電気・電子部品・デバイス等:11%
国家公務員:2%
その他:7%
就職先の業界は、鉄鋼・非鉄・金属の次に情報通信業が多くなっています。
主な業界の概要は次のとおりです。
業界 | 代表的な企業 | 主な仕事内容 | 材料工学での学びを活かした具体的な取り組み |
自動車メーカー | ・トヨタ ・ホンダ ・日産 | ・車体の軽量化 ・耐久性の向上 ・安全性の確保 | ・車体を軽くするカーボンファイバー素材の開発 ・エンジン部品の高温耐久性向上の研究 |
鉄鋼 | ・日本製鉄 ・JFE ・神戸製鋼所 | ・鉄の加工 ・製品品質の検査 | ・製造過程での二酸化炭素排出を抑える「ゼロカーボンスチール」への取り組み ・鉄鋼材料の炭素含有量を調整して強度や硬度を制御する |
電気機器メーカー | ・ソニー ・日立製作所 ・パナソニック | ・家電製品や電子部品、半導体などの開発・生産 ・IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などの技術を活用した新しいサービスの提供 | ・電子・電気材料の構造や性質を解明する ・材料の特性を生かして新技術を開発する |
化学メーカー | ・三菱ケミカル ・富士フイルム ・旭化成 | ・化学反応を活用して石油製品や染料、肥料、医薬品などを製造 | ・物質の性質を機能として利用する方法を考え出す ・マイクロメートルやナノメートルといったスケールでの材料組織や原子配列を理解し、制御する |
材料工学を学ぶことに向いている人の特徴

以下の表は、材料工学を学ぶのに適した人の特徴をまとめたものです。
以上の特徴に当てはまる場合は、材料工学を学ぶことに向いています。
材料工学を学ぶことで得られる可能性のある資格とは?

材料工学を学ぶことで、様々な専門的な資格を取得しやすくなります。これらの資格を取得すると仕事で有利になるので、参考にしてみてください。
技術士

技術士は、科学技術に関する高度な応用能力を持つ技術者として認定される国家資格です。
技術士の特徴は、高度な専門性を必要とする事項についての指導を行うことです。
技術士になるには、第一次試験合格後、実務経験を積み、第二次試験に合格する必要があります。
しかし、指定された教育課程を修了することで、第一次試験が免除されます。
どの大学のどの課程が指定されているかは文部科学省のホームページに掲載されているので、以下のリンクより確認してみてください。
参考:文部科学省 技術士法第三十一条の二第二項及び第三十二条第二項の規定に基づく教育課程及び対応する技術部門の指定について
金属材料試験技能士
金属材料試験技能検定試験には1級と2級があり、金属材料の試験に必要な技能を有しているかが判断されます。
参考:厚生労働省 技能検定の職種(作業)、等級区分及び対象とする技能の内容
この試験に合格すると、金属材料試験技能士と名乗ることができます。
なお、大学を卒業すると、1級は4年の実務経験後、2級は卒業と同時に受験できます。
材料工学でよくある質問

材料工学に興味がある人がよく抱く疑問とその回答を記載していきます。
材料工学を学ぶのに英語は必要ですか?

はい、英語は必要です。材料工学の研究では、海外の論文を読んだり、英語で発表する機会が多いです。大学に入った後も英語の学習を続け、スムーズに対応できるようにしておきましょう。
具体的には、専門的な英語表現や技術用語を習得しつつ読解力を磨いておくとよいです。
材料工学と材料力学の違いを教えてください
材料工学と材料力学の違いを表形式で示します。
この表を参考にすると、材料工学は主に材料の開発と応用に焦点を当て、材料力学は材料の力学的特性とその応答に焦点を当てていることが分かります。
材料工学と機械工学の違いを教えてください

以下に、材料工学と機械工学の違いを表形式で示します。
簡単に言うと、材料工学は「何を作るか」に焦点を当て、機械工学は「どう動かすか」に焦点を当てています。
ここまでの内容のまとめ

本記事では、材料工学とは何かや、学ぶ内容、卒業後の就職先について解説しました。解説した中でも、材料工学に関する重要なポイントを最後に記載していきます。
- 材料工学は、製品に使う材料の性質を研究し、新しい材料を作る学問。
- 金属、プラスチック、セラミックスなど幅広い素材を扱う。
- 自動車、電子機器、建築など、さまざまな業界で需要が高い。
- 理科や数学が得意で、ものづくりに興味がある人に向いている。
- 卒業後はメーカーや研究機関で活躍できる。
当記事を通して材料工学についての全体像を理解していただければ幸いです。
この記事の監修者

竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。