作成日: 2024/5/20 更新日:2024/5/22
水産学とはどんな学問?水産学部で何を学ぶのかや就職先まで徹底解説

「水産学って具体的に何を学ぶの?」
「理系科目は得意じゃないけど大丈夫?」
「水産学部を卒業した後の進路は?」
水産学に興味を持っていても、実際の学習内容や将来のキャリアパスについて不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、水産学の基本的な概念から専門分野、就職先まで徹底的に解説します。
水産学を学ぶ意義や必要な素養、全国の主要大学の特徴なども詳しく紹介するので、水産学部への進学を検討している方はぜひ参考にしてください。
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この記事を書いた人

年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
水産学とは?学問の定義

水産学は「海洋や淡水などの水産資源を研究し、その有効かつ持続的な活用方法や保全方法を科学的に追求する学問」です。
魚類をはじめ、貝類・甲殻類・藻類などの海洋や淡水に生息する生物の生態や生物学的特性を研究します。研究対象や研究テーマの一例は次のとおりです。
項目 | 詳細 |
研究対象 | ・海洋生物の生息環境や生物間の関連性 ・水産物の生産・加工や流通が社会・経済にどのように影響を与えるか |
研究テーマの一例 | 海洋資源を過剰に利用することによる生態系の破壊が深刻化する中で、生物多様性を保全しつつ水産業をサステナブルに発展させる方法を模索する。 |
このように、水産学の研究は他の学問との結びつきが深いという特徴があります。そのため、生物学や化学・物理学・統計学などの科学的な知見と実践的な視点を組み合わせることが求められます。
主な学問分野を大公開

水産学とひとことにいっても、さまざまな学問分野に分かれます。ここでは、水産学に属する12の学問分野を紹介しますので、1つずつ見ていきましょう。
漁業学

漁業学は、海洋や沿岸の漁業活動に焦点を当て、資源管理や持続可能性について研究する学問です。
漁業は、私たちの食生活を支える重要な産業で、持続可能な方法で水産資源を活用することは地球の未来にとって必要不可欠です。
そのため、漁業学では、漁業を持続可能に管理し、同時に生態系を保全する方法を模索しています。現代の漁業学では、人工衛星技術を活用した漁場探索や、最新の工学技術による漁具開発が行われています。
また、乱獲を防ぐための資源管理手法の確立や、環境に配慮した漁法の開発にも力を入れている点も特筆すべきポイントです。
水産海洋学
水産海洋学は、海洋生物の種類や生態を研究することで水産資源を開発する学問です。生物資源の利用法を学び、持続可能な漁業や海洋環境保全のための方法論を研究します。
主な研究内容は次のとおりです。
- 海洋生物の生態調査や海水の成分分析を通じて、水産資源の持続的な利用方法を探究する。
- 海洋生物の生息環境や生物相の変動について研究し、人間の活動が気候変動に与える影響を評価する。
このように、水産海洋学は、海洋生態系の保護と水産業の発展の両立を目指す学問といえます。
水産増殖学

水産増殖学は、水産資源の維持・増加を目指す学問です。水産生物の生態系における生殖・成長状態を科学的に調査・分析し、最適な増殖環境を作り出すための手法を研究・開発します。
稚魚の生産・放流、養殖技術の改良などがその一例であり、近年は、環境負荷の少ない養殖システムの開発や、遺伝的多様性を考慮した種苗生産にも注目が集まっています。
このように、水産増殖学の研究は生物学・生態学・環境学などにまたがっており、社会全体の持続可能性を高め、環境保全を目指すことにつながる重要な学問といえるでしょう。
水産加工学
水産加工学は、水産物の加工・保存技術を研究する学問です。水産資源を食品として効率的に利用するため、加工技術の開発や品質管理、保存方法の研究を行います。
具体的には、以下のような内容が研究対象となります。
- 新鮮な魚をどのように処理し、どのように保存すれば品質を保つことができるのか
- どのような加工品を作ることで市場のニーズに応えることができるのか
最近では、未利用資源の活用や高付加価値化・国際基準に適合した品質衛生管理の確立にも注力しています。
水産加工学が発展すれば、魚介類が持つ特性を活かした安全で美味しい商品を開発する技術の成長につながるでしょう。
水産化学

水産化学は、水産物の化学的性質や成分を研究する学問です。水産物の栄養成分分析や機能性物質の探索・品質評価手法の開発などを行います。
主な研究内容の例は、以下のとおりです。
- 魚や海藻などの水産物が持つ栄養成分や有用物質を解析し、人間の体に及ぼす影響を研究する。
- 水産物の鮮度保持や風味改善のための化学的手法を開発する。
- 水産物由来の有用物質を用いた新製品を開発する。
- 水産物の安全性を確保するために化学的にアプローチする。
- 水産物由来の薬品を開発する。
このように、水産化学の研究は、私たちの食生活を豊かで安全なものにすることを目指しており、食品の研究にとどまらず幅広い分野に貢献しています。
水産経済学
水産経済学は、水産業が直面する経済的な問題を解決するための学問分野です。漁業の収益性や水産物のマーケティング戦略・水産資源の持続可能性などについて研究します。
水産経済学の特徴は、他の水産学の分野とも深く関連していることです。
例えば、魚の生態や養殖技術の進歩などが経済的な影響を及ぼすことがあります。このような影響を考慮に入れながら水産業の発展を支えるための経済戦略を立てることも水産経済学の主な役割です。
また、グローバル化する水産物市場における企業行動の分析や、持続可能な水産業の発展に向けた経済的戦略の研究についても重要視されつつあります。
そのため、水産経済学は、漁業者だけでなく水産物を扱う企業にも重宝される重要な学問といえるでしょう。
水産政策学

水産政策学は、水産資源の保全や持続可能な利用を目指す政策を研究する学問です。具体的には、漁業法令の制定や国際漁業協定の交渉・漁業権の認定など、水産業に関する様々な政策を扱います。
水産政策学の主な目的は、水産業の発展と環境保全を両立させるための方法や施策を探求することです。また、漁業経済学と密接に関連しており、経済的な視点から漁業政策の効果を評価することもあります。
最近のトレンドとして、国際的な漁業管理の枠組みや気候変動に対応した政策立案にも注目が集まっています。水産政策学を学べば、水産業の持続可能な発展に向けた戦略を立案できる専門性を身に付けられるでしょう。
水産流通学
水産流通学は、海産物や水産物が消費者に届くまでの流通過程を研究する学問であり、マーケティングや物流管理などの要素を含むのが特徴です。
具体的には、生産地から市場を経て消費者の手元に届くまでの一連の過程を対象に、効率的かつ持続可能な方法で資源を配分する手法を探求します。
主な研究テーマは、水産物の価格形成や流通コスト、物流・販売戦略についてです。また、生産から消費までの全過程における情報の透明性を確保することも研究に含まれます。
水産流通学を学べば、水産物の流通に関して深く理解したうえで、水産業界における効率的なビジネス戦略を構築する能力が身に付くでしょう。
水産資源学

水産資源学は、海洋や淡水などの水産資源を適切に管理・利用するための学問です。魚類や貝類などの生物資源が生息する水域の環境条件などを調査・研究し、資源の量や利用可能な範囲・適切な漁獲量などを推定します。
また、資源の持続可能な利用のために、資源の回復力や自然環境の保全について考察することも水産資源学の研究範囲です。
このことから、水産資源学は環境や資源の保全に関心がある人にとって、非常に魅力的な学問といえます。
水産工学
水産工学とは、水産業に関連する機械やシステムの開発や設計・運用を行う学問領域です。具体的には、漁船や養殖設備の設計・冷蔵技術・自動化やロボット技術の導入など、水産業における各種の技術開発を扱います。
現代の漁業では、資源の有効活用や環境保全の視点から技術の進化が求められています。
水産工学は、その要請に応える形で発展してきており、水産物の品質保持や効率的な生産方法の確立も重要なテーマです。
海洋生物学
海洋生物学では、海に生息する生物の行動や生態、生物資源の保全などを学びます。水圏生物科学と水圏保全科学という2つの学問領域に分かれており、次のようなテーマなどについて幅広く学べます。
- 大型海洋動物の知能や食性
- 自然環境保護
海洋環境学
海洋環境学では、水圏環境を構成する生物や物質について高度に専門的な研究を行い、 海洋環境の保全や資源の有効利用を目指します。主な研究テーマは次のとおりです。
- 海洋生物の個体や群集についての自然史的、生命科学的、生態学的な研究
- 海洋とその生態系における物質循環についての研究
- 水圏環境における天然および合成化学物質についての地球化学的、生態化学的、応用生化学的な研究
引用元:国立大学法人 東京海洋大学 大学院 応用環境システム学専攻
水産学と関連する学問

水産学は、海洋生物の生態や生物資源・漁業技術・養殖技術などの研究に留まらず、多岐に渡る学問領域に広がっています。
そのため、他の学問と関連させながら学際的に学んでいくことが重要であり、以下のような学問領域の知識が必要です。
学問 | 概要 |
生物学 | 海洋生物の生態や生物の進化を理解するために必要。 |
化学 | 水産加工品の品質保持や新製品開発に役立つ。 |
経済学・経営学 | 水産業の経済性やビジネスモデル・マーケティング戦略を考える際に必要。 |
環境学 | 海洋環境の保全や持続可能な水産業の運営に関わる課題を理解するために必要。 |
工学 | 水産業における各種の技術開発に役立つ。 |
食品科学 | 水産物の加工に役立つ。 |
これらの学問と水産学は互いに深く関連しており、それぞれが相補的な役割を果たしています。
そのため、水産学を学ぶうえでは、文系理系にかかわらず幅広い分野の学問における基本的な知識を身に付けておくことが求められます。
水産学を専攻する水産学部に進学すると何を学ぶのか

水産学部に進学すると、まずは水産学の基礎教育からスタートします。具体的には、次のような講義があります。
- 海や水辺の生態系を理解するための生物学や海洋学・環境学等の基礎科目
- 水産業に関連するビジネスやマネージメントを学ぶための経済学や経営学
基礎教育が終わると、水産業に関連する具体的な知識を得るために専門科目へと進みます。専門科目とは、先ほど紹介した漁業学や水産海洋学などの学問領域です。
海や施設、船上でのフィールドワークなどの実践的な学びを通じて水産業の現状と課題、さらには解決策を学んでいきます。
このように、水産学部の学生は、基礎教育から専門科目を通して学ぶことで、水産学の発展と持続可能な利用に貢献できる専門家として成長していきます。
水産学を学ぶのに向いている人の4つの特徴

水産学を学ぶのに向いている人の特徴は、以下の4つです。
- 海や魚に対する興味・好奇心が強い
- 生態系や環境問題に興味がある
- 科学的な観察力や分析力を持っている
- 新しい知識を求めて努力を惜しまない
水産学では、海での実習や魚に関する実験があるので、海や魚が大好きで実習や実験を楽しめる人に向いています。
その中でも特に、海洋資源の保全や環境問題の解決に関心がある人にとって、水産学は魅力的な学問になるでしょう。
また、水産学では多角的な視点から問題を解析するため、物事を複数の視点から考えられる人にも適しています。
そのため、新しい知識を貪欲に求める知識欲や科学的な観察力・分析力を持っている人におすすめできる学問です。
主な水産学を学べる大学

水産学を専門的に学ぶには、水産学部や水産学を学べる学部が設置されている大学に入学する必要があります。ここでは、実際に水産学を学べる大学をいくつか紹介します。
水産学部がある私立大学
ここでは、水産学部やそれに準ずる大学が設置されている代表的な私立大学を4つ紹介します。
水産学部を設けている私立大学には上記のような大学などがあり、水産学の基本から専門的な知識まで幅広く学べます。教育内容や設備の充実度などが異なるため、それぞれ比較検討しながら大学を選びましょう。
水産学部がある国立・公立大学
次に、水産学部がある国公立大学と学部・学科を紹介します。
国公立大学は、学費が比較的安く、一部の大学では地域の漁業と連携した実践的に学べる機会がある点が大きな魅力です。
各大学の特性や学びの内容を比較検討し、自分の興味やキャリアパスに合った大学を選んでみてください。
主な就職先とキャリアパス

水産学部を卒業すると、大学で学んだことを活かして水産業界へ就職するのが一般的です。水産業界の主な民間企業としては、以下のような企業が挙げられます。
- マルハニチロ
- 日本水産
- ニチレイ
- いなば食品
- 東洋冷蔵
- 極洋
- シジシージャパン
以上の企業では、主に水産物の生産や加工・流通・販売などの一連の業務に携わることになります。また、上記のような企業への就職以外にも以下のようなキャリアパスもあります。
- 農林水産省職員などの国家公務員や都道府県庁職員などの地方公務員になり、水産資源の管理や保全に携わる。
- 環境保全活動を行う非営利団体や国際機関で働く。
- 水族館や大学、研究機関で研究や教育に携わる。
いずれの職種でも、海洋生物の生態系や環境問題についての深い理解や水産学の各分野で学んだ知識を活かせます。そのため、以上の就職先は水産学部の学生に有利といえるでしょう。
水産学や水産学部に興味がある人がよく抱く疑問

水産学や水産学部に関心がある人がよく抱く疑問を紹介します。ここでは、2つの疑問に回答するので、ぜひ参考にしてみてください。
水産学部は文系の学部なの?理系の学部なの?
水産学は、生物学や化学・物理学などの自然科学を基盤にした学問であるため、理系の学部に分類されます。
「水産学科」として農学部などの理系学部の一学科として位置づけている大学はいくつかありますが、水産学部を文系学部の中に設置している大学はありません。
また、水産学部では、基礎的な科学の知識を活かして海洋生物の生態や海洋環境の知識・海洋資源の利用に関するノウハウを学びます。そのため、理科系の科目に興味がある人には向いている学部です。
とはいえ、理系科目が得意でない人でも、大学での授業を通じて基礎知識は習得できます。そのため、理系科目の得意不得意にかかわらず、水産学に興味があれば、ぜひ受験してみることをおすすめします。
水産学にはどんな学科があるの?
水産学は多岐に渡る分野をカバーしており、以下のような分野から成り立っています。
- 漁業学
- 水産海洋学
- 水産増殖学
- 水産加工学
- 水産化学
- 水産経済学
- 水産政策学
- 水産流通学
- 水産資源学
- 水産工学
- 海洋生物学
- 海洋環境学
以上の分野に準じて学科に分けられているケースが多く、例えば北海道大学には以下のような学科が設置されています。
学科名 | 学習内容 |
海洋生物科学科 |
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海洋資源科学科 |
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増殖生命科学科 |
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資源機能化学科 |
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学科選択の際には、上記の内容を踏まえ、より自分の興味・関心に近い学科を選ぶようにしましょう。
今回の内容のまとめ

水産学は、海洋生物の生態から環境保全、産業振興まで幅広い分野をカバーする学問です。以下に、本記事の内容のポイントを簡単にまとめました。
- 水産学は水産資源の有効活用を科学的に研究する学問である
- 漁業学・水産海洋学など12以上の専門分野に分かれている
- 生物学・化学など科学における幅広い分野の知識が必要とされる
- 水産学は海や魚への興味や探究心がある人に向いている
- 水産関連企業から公務員・環境保全団体まで多様なキャリアパスが用意されている
最後に改めての話になりますが、水産学を専攻できる水産学部では、基礎科目から専門的な知識まで段階的に学べるため、入学時点で理系科目が苦手でも問題ありません。
そのため、各大学の特色や教育内容を比較検討し、あなた自身に合った進路を選択してください。
水産学とはどんな学問?水産学部で何を学ぶのかや就職先まで徹底解説
この記事の監修者

竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。
