作成日: 2024/12/19 更新日:2024/12/19
教育学部では何を学ぶ?向いている人や入学後に狙える資格や就職先と共に解説

本記事で学べることは以下の通りです。
- 教育学部で学ぶ事
- 教育学部のポリシー
- 教育学部を学ぶことに向いている人の特徴
- 教育学部を卒業後の進路
本記事では、教育学部がどのような学問を扱うのか、教育学部に向いている人、さらには教育学部卒業後の進路や資格についても詳しく解説します。
教育学部に関するよくある質問にも答えています。
総合型選抜などの年内入試を検討している高校生の皆さんに向けて、わかりやすくお届けします!
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年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
教育学部で何を学ぶのかはイマイチ分かりにくいので、この記事では、実際にどのようなことを学ぶことができるのかを解説します。併せて、どのような学びをしたいかや就職の方向性に沿った大学や学部選びのポイントもお伝えしていきます。
教育学部で学ぶことになる「教育学」とは?

教育学部では、その名のとおり教育学を学ぶことになりますが、教育学は一言で言うと「教育とは何か」と「どのように教育すれば良いのか」の2つについて学ぶ学問です。
教育とは何か
教育学部に入ると、まずは教育とは何かについて学ぶことになります。
教育というと学校教育のイメージが強いですが、家庭での子育てや企業での研修など、様々なものが「教育」という広い意味で捉えられます。
教育学では、このような教育全般について「なぜ人間は学ぶのか?」「これまでどのような教育が行われてきたのか?」などの様々な観点から考察していきます。
どのように教育すれば良いのか
教育とは何かについて学んだら、それを踏まえてどのように教育していくのが最も効果的かを勉強していくようになります。
いつ・どこで・誰が・誰に・何を・どのように教育していくのかによって、効果的なアプローチは大きく異なります。
それぞれの場合に最適な教育方法が体系化されているので、それらを学ぶことで教育者としてのスキルを上げていくことができます。
教育学では具体的に何を学ぶの?

ここまで教育学の概要を説明してきましたが、ここからは、教育学のうち代表的なものを5つほど紹介していきます。
教育哲学
教育哲学は「そもそも教育とは何か」という教育の最も根本的な部分について探求する学問です。
「教育という言葉の意味」や「教育は何を目指すためのものなのか」といった抽象的な問いに対する答えを探求していきます。
教育史

教育史はこれまで日本や世界でどのような教育が行われてきたのかを学び、これからの時代に合った教育を考える学問です。
教育内容は国家などの権力者が定めることが多いですが、その時代背景と絡めて学ぶことで、どのような人材を育成しようとしてきたかが紐解けるようになります。
教育社会学
教育社会学は社会学の観点から教育を捉えた学問です。
社会学は人と社会の関係性について探求する学問ですが、そこから一歩踏み込んで、教育によって人はどのように社会に組み込まれていくのかについて学んでいきます。
教育心理学

教育心理学は心理学のメソッドを教育に応用した学問です。
人の心理が学習に与える影響について分析したり、発達段階で悩みを抱える子供たちに対してどのように寄り添えば良いのかを学んだりします。
教科教育学
教科教育学は各科目についてどのような教育課程を組み、どのように教えると最も効果的かを研究する学問です。
シラバスを組んだり授業をしたりする際には必須の内容なので、教育現場で必要とされる実践的な内容を学べる学問だと言えます。
教育学部のポリシー

教育学部では4年間を通じて以上のような内容を学んでいくことになりますが、ポリシーとしては次の2つに大別することができます。
教育に対する深い理解を養う
教育学部では、1〜2年生のうちに教育哲学や教育史などの教育全般に関する授業を受け、2〜3年生以後は専攻やコース毎にそれぞれの専門領域についての科目を履修していくのが一般的です。
教育社会学や教育心理学といった基礎的な教養をベースに、各分野に特化した学習を深めていくことで、その分野の専門家を目指していくことができます。
教員を養成する
教育学部では、教育現場で実際に指導する教員を養成することも大切なポリシーに掲げられています。
教職課程と呼ばれる授業を受けることで教員免許を取得できますが、教員免許を取らないと卒業できない大学が多いことからも、教員養成に重きが置かれていることが分かります。
カリキュラムについて

教育学部では、教職課程を取るか取らないかでカリキュラムが大きく異なります。
教職課程を取る場合は教員免許取得を目指すことになりますが、教員免許を取得するためには、どのような授業をいくつ受ける必要があるかが細かく決められています。
その中には教育実習も含まれているため、1〜2年生のうちから決められた授業を受けつつ、3〜4年生になると教育実習に出向く必要があります。
一方、教職課程を取らなくてもよいコースや学科の場合は、比較的自由に好きな授業を履修することができます。
とは言え、語学やゼミ(演習形式の授業)、卒業研究など、必ず受けなくてはいけない授業が多々存在するので、好きな授業だけを受けられるということはありません。
教育学部のカリキュラムの特徴としては、1年次から演習形式の授業が多いことが挙げられます。
例えば、教育現場に足を運んでみたり、教育についての審議会(教育内容を決める会議)を傍聴したりするなど、実践的な授業をカリキュラムに組み込んでいる大学が多いです。
教育学部は学部の特徴として教育関係の職業を目指す学生が集まりやすいこともあり、教育の実務に直結するような授業が多く開講されているのが魅力です。
教育実習の内容とスケジュールとは?
教育実習は教職課程の中でも特に重要な現場実習です。実習の内容は、クラス活動・指導に参加したり、学習指導案を作成し実際に授業を行ったりすることがメインです。現場の教員が行う授業を見て研究し、実践と学びを繰り返しながら、実習の最後には先生や生徒が見守る中で研究授業を行います。以下は教育実習の主なスケジュールです。
年次 | 学習内容 |
大学2年生 2-3月 | 教育実習生として受け入れてもらえるかどうかを学生自身が母校へ連絡して、母校から事前許可をもらいます。 |
大学3年生 | 4月になったら、受け入れを依頼した学校へ教育実習の申込手続きを行います。 |
大学4年生 4-5月 | 教育実習に入る前の事前打ち合わせがあります。実習開始の1ヶ月~2週間前に設定されることが一般的です。事前打ち合わせでは、担当指導教員の紹介や実習期間中の注意事項、実習内容の確認を行います。 |
大学4年生 6月〜 | 4年生の6月頃から教育実習が開始されます。社会人としてのマナーを守ることはもちろん、教員としての自覚を持って臨むことが大切です。 |
取得できる資格

教育学部で取得できる資格として教員免許のことをお伝えしてきましたが、教員免許は主に次の5つに分類されます。
- 幼稚園教諭
- 小学校教諭
- 中学校教諭
- 高等学校教諭
- 特別支援学校教諭
- 司書
- 学芸員
このうち、どの免許を取得するかによって受ける必要のある科目が異なるため、1〜2年生のうちには、どれを目指すかを決めておく必要があります。
この他にも、社会福祉主事や社会教育主事、児童福祉司や学芸員など、教育関係の仕事に就く上で必要になる様々な資格を取ることができます。
資格ごとに受ける必要のある授業がバラバラなので、早めに進路を決め、必要な資格を洗い出し、そのために必要な授業をコツコツと受けておくと、採用試験の際に焦らずに済みます。
このように、教育学部には教育関係の仕事に就く上で欠かせない様々な資格を取れる環境がありますが、大学によっては取れない資格もあるので、資格情報も注意しながら大学を選びましょう。
主な就職先

大半の卒業生は卒業してすぐに教員になりますが、教育関係の仕事に就いたり公務員になったりするケースの他、教育とは無関係なメーカーや金融機関などの民間企業に就職するケースもあります。
また、教育学部出身者には教員免許を取得している人が多いですが、教員免許を持っていれば、すぐに教員にならなくても、後から教員採用試験を受けることもできます。
そのため、まずは教員以外の仕事をしてある程度社会的な経験を積んでから教職を目指すという人も一定数います。
この他にも、大学院に進んでさらに教育系の研究をし、教育学者や教育コンサルタントを目指す道もあります。
このように、教育関係の仕事を目指す場合はキャリアの選択を比較的自由にできるのがメリットですが、教育とは関係のない仕事に就くこともできるので、教育に興味があるのであれば、教育学部を進路選択の候補に入れておくと良いでしょう。
具体的な業界について知りたい方は、ホワイトアカデミー大学部の以下の記事がおすすめです。
向いている人

ここまでの内容を踏まえ、教育学部に向いている人の特徴をまとめていきます。
幅広い分野を学びたい人
教育学は大変幅広いため、専門によって様々なコースに分けられていることが多いです。
1〜2年生のうちは教育を皮切りに様々な学問領域を横断的に学べるので、学習領域を広げたうえでじっくり専門分野を絞りたい場合は教育学部がオススメです。
教えることが好きで教員を目指している人

当たり前の話になりますが、教育学部に向いている人の特徴として、教えることが好きで教員になることを将来の夢としている人があげられます。教員になるためには教育学部に入ることが一番の近道です。
実習など活きた学びを行いたい人
教育学部ではフィールドワークなどに出向くような実習型の授業が多く設定されているので、座学のみならず、生きた学びをしたいという方には向いています。
その分、レポートや授業準備などには時間が取られるので、そのような時間を取りにくい場合には多少負担になるかもしれません。
教育学部に関するよくある質問

他学部でも教育学部と同じような内容が学べる?
ここまで教育学部の概要についてお伝えしてきましたが、実は、教育学のエッセンスのみ学びたいのであれば、他学部で他の専門領域を学びながらでも教育について学べます。
先ほどの例で言えば、社会学部に在籍しながら教育社会学、心理学部に在籍しながら教育心理学というように、各学部に関連する教育系の科目が設置されているケースが多く、そのような科目では教育学部の専門の教授から講義を受けられることもあります。
これは教育学自体が学際的であることに起因しますが、教育学以外に他学部で専門的に学びたいことがある場合には、このような受講方法もオススメです。
勿論、教育学にも体系があるので、より専門的な内容まで学びたいのであれば教育学部に入学する方が良いですが、大学によっては他学部聴講制度もあるので、他学部生でもある程度専門的な内容を学べるケースもあります。
このような制度を知っているかも学部選びには大きく関わってくるので、ぜひ、参考にしてみてください。
なお、大学によっては教育学部以外でも教職課程を履修できるので、教育学部に入らないと教員になれないということはありません。
ただし、その場合は学部によって取得できる教員免許の科目が限られているうえに、学部のカリキュラムに加えて教職課程の科目も受講することになり、かなり負担が大きくなるので注意が必要です。
教員にならないのであれば他学部の方が就活に強い?
教育学部に入っても教員にならずに一般的な就職活動をするというケースもあります。
その場合、学習塾などの教育産業や教科書などの出版社であれば教育学部での学びを活かせるので就活に有利に働きやすいですが、それ以外の産業の場合でも、特段、教育学部が就活に不利ということは考えにくいです。
というのも、新卒で就活をする場合は、学部で学んだ内容が入社後の仕事内容に直結することは稀で、どちらかというと、企業の社風とマッチしているかが重視されるからです。
そのため、教育学を学びたいが、就活のことを考えて他の学部を選ぶというのは避けた方がいいでしょう。
ただし、企業の社風とマッチしているかを判断する上でも、最低限のビジネスの知識や経験があるに越したことはありません。
経営学部や商学部などの学生はビジネスに特化した内容を扱っているのでこの点では有利かもしれませんが、インターンシップ(仕事体験)などに参加すればそれなりの知識や経験は得られるので、積極的に就活をすれば大差は無いでしょう。
教育学部を選択する時の大学選びのポイント

ここまでの内容を踏まえ、大学選びのポイントを4つに分けて解説していきます。
自分の学びたい内容が学べるか
教育学の内容は多岐に渡るため、大学毎に異文化教育、家庭教育などの様々なコースやグローバル教員養成プログラムなどのプログラムが設けられています。
そのため、大学ごとにカリキュラムやプログラムを比較し、自分の興味により近いものを選ぶようにしましょう。
カリキュラムやプログラムで選びきれない場合は、ゼミの内容や担当教員を調べ、「この先生の元でこんなことを学びたい!」という観点で大学を絞り込んでいくのもオススメです。
教職課程の細かな要件をチェックする

大学によって教職課程が卒業要件に入っていたり、学科によって取れる種類の教職免許が制限されていたりと、その条件はまちまちです。
この辺りを調べずに入学してしまうと、教員になるつもりはないのに教員免許を取らなくてはならなかったり、幼稚園教諭になりたいのに小学校教諭しか目指せなかったりするという事態に陥りかねないので、細かくチェックするようにしてください。
特に、国立大学の場合は教職課程が卒業要件に入っていることが多いので、入学後に教員になるのを辞めて民間企業に就職する場合でも教職課程を修了しないと卒業できないというリスクも考慮しましょう。
教員採用試験合格者数をチェック
教員になりたくて教育学部を志望する場合は、その大学の教育学部の教員採用試験合格者数をチェックしましょう。特に自分が志望する自治体の教員採用試験の合格者や優遇の有無に注目してください。例えば埼玉大学教育学部には各自治体から教員採用候補者への推薦枠があります。大学推薦を受けると、多くの自治体では教員採用試験の一次試験が免除されます。4年生の年度初めになると、埼玉県、さいたま市のほか、全国の自治体から大学推薦の募集があります。
教員以外の道を応援してくれるか

最近は教員の働き方のブラック化が社会問題として挙げられ、教員の仕事自体が不人気化しています。そのため、最初は教員になる志を持って教育学部に入学したけれども途中で進路を変更することになった場合に、学校が教員以外の道を応援してくれるかは重要なポイントになります。
この記事のまとめ:教育学部とは

ここまで教育学部で学ぶことについて様々な観点から解説してきましたが、一度、大学や学部、学科を決めてしまうと、後から変更するのには多大な労力を要します。
そのため、後から進路選択を後悔しないためにも、ここまででお伝えしてきたことを参考にしながら、あなたにとってベストな進路を選ぶようにしてください。
大学選びは入学後4年間の充実度に加え、卒業後の進路も大きく左右する大事なタイミングです。
あなたが学びたいことを学ぶのに最も適したところはどこなのか、そこは就職やその後のキャリアを考えても妥当な選択肢なのか、この辺りを念頭に置いて比較検討すると良いでしょう。
あなたにとってベストな進路選択ができることを願っています。
この記事の監修者

竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。