年内入試ナビ

作成日: 2025/1/21 更新日:2025/1/21

生物工学とは何を学ぶ?学ぶことや就職先を解説

生物工学とは何を学ぶ?学ぶことや就職先を解説

「生物工学って何を学ぶの?」

「生物工学と生命工学って何が違うの?」

「生物工学を学んだ後の就職先は?」

工学分野などの理系分野への進学を検討している人の中で、このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、そのような工学分野への進学を考えている人に向けて、生物工学という学問分野が一体どのようなものなのかについて解説しています。

この記事でわかることは以下の通りです。

  • 生物工学とは何か
  • 生物工学で学ぶこと
  • 生物工学と生命工学との違い
  • 生物工学が学べる大学の一例
  • 学んだ後の進路や就職先
  • 生物工学を学ぶことが向いている人の特徴

生物工学とは何を学ぶのか気になっている方、キャリア選択の参考にしたい方はぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いた人

年内入試ナビ編集部

年内入試ナビ編集部

年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。

生物工学とは?簡単に解説

生物工学とは

生物工学とは、生物のメカニズムを解明し、社会のさまざまな分野へ応用するための知識や技術を学ぶ学問分野です。バイオテクノロジーとも呼ばれます。

バイオテクノロジーとは、生物学を表す「バイオロジー」と、技術を表す「テクノロジー」の合成語であり、その名称通り、生物学を技術的に応用する学問です。

生物工学は幅広い分野で活用されています。

身近な活用例としては、発酵食品や洗剤などが挙げられます。

他にも、以下のようにさまざまな分野で活用されています。

分野
生物工学の活用方法
医療分野
遺伝子治療やバイオ医薬品の開発、人工臓器の作成、診断技術の進歩
農業分野
遺伝子組み換え技術を用いた作品の改良、病害虫に強い作品の開発、生物の除防法開発
環境分野
バイオレメディエーションによる汚染物質の分解、環境修復技術の開発、持続可能な資源管理
食品分野
発酵技術を利用した食品の製造、遺伝子組み換えによる栄養価の高い食品の開発、食品の品質改良
産業プロセス
微生物を用いたバイオプロセスによる工業製品の製造、バイオ燃料の生産、廃棄のバイオ処理

次の章では生物工学では何を学ぶのかについて説明していきます。

生物工学とは何を学ぶのか

生物工学で学ぶこと

生物工学は、遺伝子の構造分析や遺伝子組み換え技術などを研究する「遺伝子工学」と、有用な細胞や物質の生産について研究する「細胞工学」の2つの分野が中心となる学問です。

その上で、「微生物工学」や「バイオプロセス工学」なども重要な学問分野となっています。

それぞれどのような学びをするのかを解説します。

遺伝子工学

遺伝子工学では、生物の遺伝子を研究し、遺伝子を改変する知識や技術を学びます。

DNAを切断・結合することで、元々持っていた能力を強化したり、別の生物に特定の能力を与えることができます。

遺伝子工学で学ぶ主な分野は以下の通りです。

学問分野
説明
生化学
生物を構成する物質やその構造、機能、代謝、遺伝、進化などのメカニズムを理解する。
遺伝子工学の基礎となる学問分野である。
微生物学
ウイルスや細菌などの微生物の形態や生理、遺伝、生態などを研究する。
生化学と並び、遺伝子工学の基礎となる学問分野である。
再生医学
組織再生などの生物学的プロセスを人為的に最大化、最適化することで、医療分野に役立てる方法を研究する。
細胞の培養技術や遺伝子組み換え技術などを学ぶ。
発生工学
動物の発生過程を人工的制御し、新たな動物を生み出す方法を研究する。
動物の発生過程の解明や、キメラ動物の作成方法、遺伝子病や癌の発症過程などを学ぶ。

このように、遺伝子工学を学ぶことで、有用な食物や医療技術の開発に繋がり、私たちの生活を豊かにします。

その一方で、キメラ動物の作成や動物実験などを含み、一歩間違えれば、危険な学問分野でもあります。

高い倫理観の求められる学問分野となっています。

細胞工学

細胞工学とは

細胞工学とは、動物や植物の細胞を人為的に操作し、有用な細胞や物質を新たに生産するための技術や知識を学ぶ学問分野です。

細胞の機能の解明という基礎的な内容から、細胞の働きや生産をいかに人工的に最大化させるのかというような応用的な内容まで含みます。

細胞工学で学ぶ主な分野は以下の通りです。

学問分野
説明
細胞生物学
細胞の構造や機能を研究する。
細胞工学の基礎となる学問分野である。
分子生物学
細胞内での分子(DNAやRNA、タンパク質など)の働きを解明する。
細胞生物学と同様に、細胞工学の基礎となる。
細胞培養学
細胞を増殖させたり、特定の機能を発揮させる技術を研究する。
動物・植物を問わず培養し、再生医療などに応用される。
組織工学
細胞を組み合わせて、人工的に組織や臓器を作る技術を研究する。
皮膚や肝臓などの構築だけでなく、3Dプリンターで細胞を配置する技術などに応用される。

細胞工学には、同じく生物工学の主要な研究分野である遺伝子工学の成果も活用されます。

​​その他の重要な学問分野

​生物工学は、遺伝子工学と細胞工学を中心とした上で、他にも重要な学問分野があります。

生物工学で学ぶ重要なその他の学問分野は以下の通りです。

学問分野
説明
微生物工学
微生物を活用した製品開発を研究する。
発酵食品や医薬品などが製品例として挙げられる。
バイオプロセス工学
バイオ製品の製造技術や生産効率を高めるための技術を学ぶ。
バイオ製品とは、人間の生体分子(遺伝子や細胞など)を活用した製品である。
免疫工学
人間の免疫系を理解し、医薬品などへ応用する技術を研究する。
ワクチンの開発や免疫療法に応用される。
タンパク質工学
タンパク質の構造と機能を理解し、人工的に設計し医療分野などへ応用する技術を研究する。
医薬品だけでなく、プラスチックやバイオ燃料などの産業分野へも応用される。

これらの分野も、遺伝子工学や細胞工学と関係しあっており、それぞれの分野の研究の発展がその他の分野の発展にも繋がります。

生物工学と生命工学との違い

生物工学と生命工学の違いとは

次に、生物工学と生命工学の違いについて説明します。

これらは、どちらも生物を対象として新しい技術を開発していこうとする学問分野であり、両者ともに英語では「バイオテクノロジー」と呼びます。

そのため、ほとんどといってもいいほど同じ学問分野です。

では、何が違うのでしょうか。

生物工学は、「生物学」と「工学」が組み合わさった学問分野です。

それに対し、生命工学は「生命科学」と「工学」が組み合わさった学問分野となっています。

生物学は、動植物や微生物などを対象とし、生物の構造や機能、進化、生態などを研究する学問です。

一方で、生命科学とは、生命現象を明らかにし、人間生活の発展に貢献しようとする学問分野です。

よって、「生物」が中心となる生物学と、「ヒト」が中心となる生命科学ということになります。

生物工学と生命工学は、このように極めて研究領域の似ている学問分野ですが、研究対象の中心が、「生物」か「ヒト」かに分けられます。

以下に違いを表形式でまとめましたので確認してください。

項目
生物工学
生命工学
英語表記
バイオテクノロジー
バイオテクノロジー
学問の成り立ち
生物学+工学
生命科学+工学
研究対象の中心
「生物」の構造や、進化、生態
「ヒト」の生命現象

生物工学が学べる大学の一例

生物工学が学べる大学とは

生物工学が学べる大学の具体例は以下の通りです。

  • 東北大学 工学部化学・バイオ工学科
  • 富山県立大学 工学部生物工学科
  • 東海大学 工学部生物工学科

それぞれの大学の特徴を見ていきましょう。

東北大学 工学部化学・バイオ工学科

東北大学は旧帝国大学の一つであり、日本の最難関大学の一つです。

東北大学の化学・バイオ工学科のカリキュラムには以下のような特徴があります。

  • 応用化学・化学工学・バイオ工学の3つのコースが一体となっており、幅広い分野の学びができる
  • 3年次には、工場見学や研修発表があり、社会との関わりやプレゼン能力の向上を行う
  • 4年次から、3つのコースから希望のコースを選択し、幅広い分野の学びを活かした専門分野の研究ができる

生物分野のみならず、化学や物理分野なども幅広く学びながら、4年次のコース選択が可能です。

生物工学に興味はあるが、その他の科学分野などにも興味があるという方にうってつけです。

参照元:東北大学 工学部化学・バイオ工学科

富山県立大学 工学部生物工学科

富山県立大学工学部生物工学科

富山県立大学は、1990年に開学した比較的新しい公立大学です。

少人数教育や手厚いキャリア支援などが強みの大学です。

富山県立大学の生物工学科のカリキュラムには以下のような特徴があります。

  • 医薬品・化学・食品分野で必要とされる知識の習得を目指している
  • 1年次から少人数ゼミを開講している
  • 3年後期からの研究室配属により、1年半かけて研究ができる

少人数教育や早期からの研究室配属など、手厚い授業・サポートを受けたい方に最適な大学です。

参照元:富山県大学 工学部生物工学科

東海大学 工学部生物工学科

東海大学は「文理融合」を教育理念とし、主専攻とは別に副専攻を選択できるリベラルアーツ教育の大学です。

東海大学の生物工学科のカリキュラムには以下のような特徴があります。

  • 教職課程が履修でき、中学高校の理科の教員免許の取得が可能
  • シャンプーや化粧品の開発などを学べるコスメティック科学が学べる
  • 副専攻科目の履修で、幅広い科目の学びが可能

東海大学は、文理融合教育を理念としているだけでなく、コスメティック科学という身近な学問領域や教員免許取得によるキャリアの広がりなど、多くの方にとって魅力的な大学であるといえます。

参照元:東海大学 工学部生物工学科

生物工学の学びを活かして取得できる資格

生物工学を学ぶことで取得できる資格

生物工学を学ぶことで取得できる、または取得しやすくなる資格を紹介します。

資格
説明
教諭一種免許状(理科)
中学校・高校で理科を教えるための免許。
食品衛生管理者
食品の製造・加工における衛生管理を行う資格。
毒物劇物取扱責任者
毒物や劇物の輸入など、薬品の取扱ができる資格。
バイオ技術者
初級・中級・上級からなり、バイオ技術分野の知識を測る資格。
上級は、バイオ関連実験を適切に安全に実行できる能力が認定される。
甲種危険物取扱者
消防法で定められたすべての危険物を取り扱うことのできる資格。
技術士生物工学部門
生物工学に関する高度な知見と応用能力が認められる国家資格。

これらの資格は、必要な単位を取得することで受験資格を得られたり、卒業することで取得できたりします。

あなたの希望のキャリアに合わせて、取得に必要な講義やカリキュラムなどを調べましょう。

生物工学を学んだ後の進路・就職先・職業

生物工学を学んだ後の進路・就職

生物工学を学んだ学生は、どのような進路を歩いているのでしょうか。

主な進路は以下の通りです。

  • 大学院への進学
  • 研究・開発職
  • 技術者

それぞれ見ていきましょう。

大学院への進学

大学院への進学は一般的な進路の一つです。

大学院へ進学することでさらに専門的な研究を行うことができます。

より深い専門知識の習得ができるため、将来研究者や開発者になりたい方は大学院への進学が必須となります。

研究・開発職

研究開発職

研究・開発職は主に大学院卒業後の進路です。学部卒では基本的になることはできません。

なぜなら、研究・開発職は高度な専門的知識の理解を前提としているからです。

生物工学の知識を踏まえて、新しい医薬品や食品などを発見・開発や遺伝子情報の解析や生命現象の解明などを行います。

製薬会社や医薬品会社などの民間企業や国立研究所などの研究機関で働くことになります。

研究・開発職は人々の生活を豊かにするための重要な仕事です。

技術者

生物工学を学んだ方の一般的な進路が技術者です。

食品製造の工場などで適切な生産が行われているかを管理する生産管理や、品質を確認する品質管理などが主な仕事です。

一見すると地味な仕事ですが、食品や医薬品の安全性は人々の生活を守る重要な要素です。

生物工学での学びを活かし、人々の生活の安全を守る仕事といえます。

学ぶことが向いている人の特徴

生物工学を学ぶことが向いている人の特徴

生物工学を学ぶことが向いている人の特徴は以下の通りです。

  • 生き物が好き
  • 理科が好き
  • 創造力が豊かである
  • 医療や環境に興味がある
  • 社会問題に関心がある

それぞれの特徴を解説します。

​​生き物が好き

​生き物が好きな人は生物工学を学ぶことが向いています。

なぜなら、生き物の生態の解明が生物工学の基礎だからです。

動物や植物だけでなく、微生物などの生態や遺伝子などに興味がある方は、生物工学を学ぶことに向いています。

​​理科が好き

理科が好き

​理科が好きな人は生物工学を学ぶことが向いています。

なぜなら、生物工学を学ぶ上では、生物だけでなく化学の知識や物理の知識なども必要だからです。

生物だけでなく、理科系科目全般が好きであるという人、生物工学に向いているでしょう。

創造力が豊かである

​創造力が豊かな方は生物工学を学ぶことに向いています。

なぜなら、生物のメカニズムを人間生活の発展に活かそうとする生物工学において柔軟な発想が求められるからです。

既存の考え方にとらわれず、新たな視点や思考で新しい技術の開発ができるような、創造力が豊かな方は向いています。

医療や環境に興味がある

医療や環境に興味がある

医療や環境に興味のある方は、生物工学を学ぶことに向いています。

なぜなら、再生医療やバイオ燃料など、生物工学の主な活用先は医療・環境分野であるからです。

今後の医療の発展や、環境問題の解決に寄与したいという方は、ぜひ生物工学を学びましょう。

​社会問題の解決に関心がある

​社会問題の解決に関心があることは、重要な要素です。

なぜなら、生物工学の目的は生物の生態を活用して、社会の諸問題の解決することだからです。

生物の知識を使い、社会問題を解決し、社会の発展に貢献したい方は、生物工学を学ぶことに向いています。

よくある質問

生物工学に関するよくある質問

生物工学に興味がある人がよく抱く疑問とその回答を記載していきます。

生物工学を学ぶのに英語は必要ですか?

生物工学では英語は重要です。

なぜなら、最新の研究技術や情報は英語で発表されることが多いからです。

また、学会発表なども英語で行うこともあります。

常に最新の情報を取り入れていくためには、英語力は必須であるといえます。

​​生物工学は生物工学科でしか学べないの?

生物工学は何学部で学べるのか

生物工学は生物工学科以外でも学ぶことができます。

例えば、生命工学科や生命科学科などでも学ぶことができます。

他にも、農学部や生物学科などでも近い学びが可能なことがあります。

生物工学の中でもどのような学問分野に興味があるのかを見極めて、カリキュラムと照らし合わせましょう。

​​生物工学を学ぶためには理科のどの科目・分野が重要ですか?

生物工学を学ぶためには、特に生物と化学が重要ですが、その上で、物理の基礎知識も押さえておく必要もあります。

以下に、生物・化学・物理において、重要となる分野をまとめました。

科目
詳細
生物
細胞や遺伝子の構造を理解する基礎となる
化学
細胞内での化学反応や物質の合成を理解する基礎となる
物理
生体内の力学や微生物の動きを理解する基礎となる

このように、生物・化学・物理は生物工学を学ぶ上での基礎となり、その科目も重要です。

この記事のまとめ

生物工学のまとめ

この記事では、生物工学の概要や学ぶ内容、生物工学を学ぶことができる大学や学んだ後の進路、向いている人の特徴まで解説しました。

解説した中でも、生物工学に関する重要な点を最後に記載していきます。

  • 生物工学とは、生物メカニズムを利用して、社会に応用させる技術を学ぶ学問である
  • 生物工学は、遺伝子工学と細胞工学の2つの分野が中心となる
  • 生物工学を学んだ後の進路としては、大学院進学、研究・開発職、技術者が挙げられる
  • 生物工学を学ぶことが向いている人は、理科が好きであり、医療や環境などの社会問題の解決に関心のある人である
  • 生物工学は、生物工学科や生命科学科、生命工学科で学ぶことができる
  • 生物工学を学ぶためには、化学と生物の理解と英語力が重要である

今回の記事を通して、生物工学についての全体像を理解していただければ幸いです。

この記事の監修者

竹内 健登

竹内 健登

東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。


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