作成日: 2024/10/25 更新日:2024/10/26
総合型選抜(旧AO入試)の学力試験とは?問題の難易度も解説
大学を総合型選抜で受験する際、学力試験が課される場合がありますが、その内容や難易度について疑問や不安を抱く受験生も多いでしょう。
そこで、本記事では、総合型選抜の学力試験について、以下のポイントに焦点を当てて解説します。
- 総合型選抜の学力試験の概要
- 総合型選抜の学力試験の重要性
- 総合型選抜の学力試験の種類と特徴
- 総合型選抜の学力試験の対策方法
さらに、受験生が総合型選抜の学力試験についてよく抱く疑問とその回答も紹介しています。
この記事を通して、総合型選抜の学力試験についての理解を深め、適切な対策を進めていきましょう。
最後までお読みいただき、受験準備にお役立てください。
この記事を書いた人
年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
総合型選抜の学力試験の概要
総合型選抜の学力試験は、志望する学部での学びに必要な専門分野の理解度を評価するために実施されます。
学力試験で見られているポイントとは?
面接や小論文、グループディスカッションなどでは、コミュニケーション能力や問題解決能力、リーダーシップなど、多面的に受験生の能力や個性が評価されます。
それに対し、学力試験ではこれらの選考だけでは測れない受験生の学習意欲や努力の成果が確認されます。
学力試験の結果を通じて、大学が求める人物像にどれだけ合致しているかを判断します。
学力試験の内容や形式
学力試験の内容や形式は大学ごとに異なります。
例えば、理系学部では数学や理科、文系学部では現代文や英語など志望する学部に関連する科目が出題されることが一般的です。
そのため、受験を考えている大学の試験内容を事前に確認し、十分に対策をすることが重要です。
志望校の募集要項をよく読み、試験内容に合わせた学習計画を立てましょう。
合否判定における学科試験の重要性
総合型選抜において、学力試験で高得点を取ることは合格するために重要です。
特に難関大学の総合型選抜入試の場合、他の受験生のレベルも高いため面接や小論文などでは大きな差がつかないことが多々あります。
このような場合、学力試験の結果が合否を左右する決定的な要素となることが多いです。そのため、入念な対策が必要です。
学力試験が重要な理由
学力試験は受験生の基礎学力を評価する重要な手段であり、大学が求める学力水準を満たしているかを確認するために行われます。
学力試験の成績があまりにも低いと、他の要素で優れていても不合格になることもあり得ます。
そのため、適切な準備と対策を行い、学力試験において高い評価を得られるよう努力しましょう。
合格を勝ち取るためには学力試験の対策が不可欠であることを念頭に置いて対策を進めてください。
総合型選抜の学力試験の種類と特徴
総合型選抜の学力試験は、大きく分けると以下の2種類に分かれます。
- 大学が実施する試験
- 大学入学共通テスト
それぞれの試験の特徴について解説します。
大学が実施する試験
この試験は、大学が特定の科目について行うものです。
一般的には英語の試験が多いですが、数学科や経済学科の入試では数学、応用化学科の入試では化学など、その学部・学科に関連する科目の試験が実施されることもあります。
この試験の目的は、受験生が大学での学びに必要な基礎的な学力を備えているかどうかを評価することです。
大学側は、この試験を通じて、専門分野の学びに対応できる基礎学力を持っているかどうかを確認します。
大学入学共通テスト
総合型選抜では、共通テストの成績を利用する場合もあります。
この形式では、書類審査や他の選考プロセスを経て、共通テストの成績を考慮し、最終的な合否が決まります。
大学が指定した科目の成績が評価されるため、受験生の基礎学力を判断することができます。
共通テストを利用することで、幅広い学力を公平に評価することが可能です。
参考記事:共通テストが課されないタイプの試験の特徴とは?
課される試験の種類や志望大学・学部・学科で変わる
大学が実施する試験と共通テストという代表的な学力試験のうち、どちらを課すか、両方を課すかは大学や学部・学科によって異なります。
そのため、志望する入試の募集要項を必ず確認し、適切な準備を行いましょう。
自分の志望校に合わせた学力試験の対策を行うことで、総合型選抜での合格の可能性を高めることができます。
学科試験の難易度
総合型選抜の学力試験では、一般入試と比較して基礎的な内容が多く出題される傾向があり、難易度は比較的低めに設定されています。
これは、総合型選抜が学力以外の側面、例えばコミュニケーション能力や意欲、リーダーシップなども重視する選抜方式であるため、学力試験は大学の授業についていけるだけの基礎学力を確認することが主な目的となっているためです。
しかし、難関大学や人気の高い学部・学科では、学力試験の難易度が高く設定されている場合があります。
これらの大学では、専門的な知識や高度な思考力を問う問題が出題されることがあり、学力試験の結果が合否に大きな影響を与えるケースもあります。
そのため、総合型選抜の学力試験に臨む際には、志望校の過去問を確認して、どの程度の難易度の問題が出題されるのかを事前に把握しておくことが重要です。
過去問を通じて出題傾向を理解し、自分の実力に応じた対策を行うことで、学力試験でも十分な成果を上げられるよう準備を進めましょう。
試験の内容例
総合型選抜の学力試験では多岐にわたる内容が出題されますが、一般的には文系・理系を問わず、基礎的な学力を測る問題が中心となります。
具体的な例として、明星大学の総合型選抜で行われる学力試験の内容を以下にまとめましたので、ご覧ください。
学部・学科 | 科目・試験内容 | 備考 |
---|---|---|
理工学部・総合理工学科 | 数学Ⅰ・A | 必須 |
物理基礎 | 出題範囲は以下の単元に限定 ・物理基礎:運動の表し方・様々な力とその働き・力学的エネルギー ・化学基礎:化学と人間生活・物質の構成・物質の変化とその利用 ・生物基礎・生物の特徴・遺伝子とその働き | |
人文学部・日本文化学科 | 漢字書き取り試験 | 日本漢字能力検定準2級レベルの漢字書き取り |
情報学部・情報学科 | 数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・C | 出題範囲は以下の単元から総合的・複合的に出題。 ・数学Ⅰ・A:「数学と人間の活動」を除く全範囲 ・数学Ⅱ:基礎的内容(「いろいろな式」は出題範囲外) ・数学B:「数列」の基礎的内容 ・数学C:「ベクトル」の基礎的内容 |
情報Ⅰ 社会と情報 情報の科学 | 各科目からそれぞれ2問出題され、うち2問を選択して解答 | |
教育学部・教育学科 | 学力試験的要素を付加した小論文 | 小学校教員コース・国語コース・社会コース・理科コース・音楽コース・美術コース・特別支援教員コース・子ども臨床コースを対象とした共通問題 |
数学Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ・C | 数学コースを対象とした記述式の独自問題 | |
英語 | 英語コースを対象とした英語の基礎力(特に語彙力、文法概念の体系的理解)を直訳と小論文形式で問う独自問題 | |
建築学部・建築学科 | 一般教養を問う適性テスト | 義務教育や高校の必修科目で学ぶ範囲、時事問題 |
データサイエンス学環 | 基礎学力試験 | 数学に関する基礎的教養(義務教育で学ぶ範囲と高校の数学Ⅰ、数学Ⅱの範囲) 基礎学力試験の代わりに小論文(データに基づく考察や客観的評価の論述を中心とする問題)を選択することもできる |
このように、学力試験の内容は学部・学科によって特色があり、単なる知識の暗記だけでなく、実際に応用する力が試されることがあります。
受験を検討している大学の過去問を確認し、志望する学部・学科の出題傾向を把握して対策を進めることが重要です。
総合型選抜の学力試験の具体的な対策方法
総合型選抜の学力試験に備えるためには、以下の対策が効果的です。
過去問を活用する
過去問は学力試験対策の基礎です。
大学のホームページやオープンキャンパスで過去問を入手し、解いてみましょう。これにより、試験の出題傾向や難易度を理解しやすくなります。
学習スケジュールを立てる
計画的な学習が合格への鍵です。
毎日の学習時間を確保し、出題範囲をバランスよく学習することで、効率よく準備を進めましょう。
苦手分野がある場合は、そこに重点を置いて学習することで合格の可能性を高めることができます。
予備校や塾を利用する
独学に加えて、予備校や塾を活用することも有効です。
プロの講師による指導を受けることで、効果的に学習を進められます。
苦手科目の克服や、独自の学習メソッドを取り入れることで、より効率的に学力向上が期待できます。
これらの対策を実践することで総合型選抜の学力試験に万全の準備を整え、自信を持って受験に臨むことができるでしょう。
参考記事:専門の対策スクールに通うメリットと通うべき人の特徴
学力試験に関して総合型選抜の受験生からよくある質問とその回答
次に総合型選抜の学力試験について受験生がよく抱く疑問とその回答を紹介します。
学力試験のみで総合型選抜を受けられるの?
総合型選抜を学力試験のみで受験することは基本的に難しいです。
学力試験は選考要素の1つでしかない
大前提として総合型選抜では、受験生の学力だけでなく、面接、小論文、課外活動の実績など多角的な評価が行われることが一般的です。
そのため、学力試験は選考要素の一つに過ぎず、他の要素も重要な評価基準となります。
特定の大学や学部では学力試験の比重が大きい場合もありますが、他の評価項目が完全に省かれることは稀です。
そのため、あなた自身の強みや適性を総合的にアピールできるようにバランス良く準備を進めることが重要です。
学力試験のみの総合型選抜も一部にはある
一方で、総合型選抜に類似する学校推薦入試においては東洋大学が2025年度から学力試験のみで選考を行う入試を実施することを発表しました。
これにより、将来的に総合型選抜でも学力試験のみの選考を導入する大学が出てくる可能性があります。
今後の入試動向に注目し、最新の情報を基に戦略を立てることが重要です。
学力試験なしの総合型選抜はあるの?
学力試験なしで総合型選抜を受験できる大学は少なくありません。
総合型選抜では、出願時に評定平均や取得資格などが出願要件にされることがあり、それを学力試験の代わりにする大学もあります。
学力試験を課さない場合でも、多くの大学では小論文が課されることが一般的であり、小論文の出来を通して現代文の素養が評価される傾向があります。
学力試験なしで受験できる大学の一例として、早稲田大学社会科学部の全国自己推薦入学試験について詳細を紹介します。
出願資格(次の①〜③を全て満たす必要あり)
① 1年1学期(または前期)から3年1学期(または前期)までの全体の評定平均値が 4.0 以上の者
② 高校在学中に次のうち1つ以上に該当する者
◇学芸系またはスポーツ系クラブなどに所属し、都道府県以上の大会・コンク-ル・展覧会などにおいて優秀な成績を収めた者
◇生徒会活動においてめざましい活躍をした者
◇資格(語学検定や財務・会計資格など)を有する者
◇その他、学校外での諸活動(クラブ活動・ボランティア活動など)においてめざましい活躍をした者
③ 英語外部検定試験のうち、以下の基準点を満たすスコアをいずれか1つ提出できる者
実用英語技能検定(CSEスコア):1,950以上引用元:
GTEC CBT:930以上
IELTS:4.0以上
TEAP:225以上
TOEFL iBT:42以上
TOEIC L&R / TOEIC S&W:1,150以上
第二次選考の内容
書類選考を通過した者に対して小論文と面接を課します。2024年度入試の小論文の内容は以下の通りです。
個人に関する情報が、マイナンバーを通じて一元的に管理されるようになってきた。これにより、公正で効率的な行政と、各人の必要とする行政サービスのタイムリーな提供が期待されている。しかし、マイナンバーカードの利用の推奨を通じたマイナンバー制度の社会への浸透に反対する声も小さくない。現代サイバー社会において政府に期待される役割と個人のプライバシー保護の意義を意識して、マイナンバー制度の浸透の功罪を、800字以内で論じなさい。(試験時間90分)
引用元:2024年度早稲田大学社会学部全国自己推薦入学試験小論文試験
国公立大学と私立大学で学力検査の難易度は違うの?
一般的に、国公立大学の学力試験は私立大学に比べて難易度が高い傾向があります。
特に主要な国公立大学では、高度な問題が出題されることが多く、受験者の学力レベルが高いため、点数に差をつけるために難易度が上がることがあります。
一方、私立大学では多様な入試形式が存在し、学力試験の難易度も大学や学部によって異なります。
特定の科目に重点を置いた入試や、面接や小論文を重視する総合型選抜を実施する場合もあります。
志望する大学や学部ごとの入試形式や難易度をよく調べ、適切な対策を立てることが重要です。
総合型選抜の学力試験のスケジュールは?
総合型選抜の学力試験のスケジュールは大学によって異なりますが、一般的には書類選考通過者に対して、二次選考として10月から11月にかけて行われることが多いです。
入試が複数回設定されている場合、一度目の試験で不合格だった場合でも次回の試験に挑戦できることがあり、12月以降に学力試験が実施されることもあります。
各大学の公式ウェブサイトや入試要項で詳細な日程が発表されるので、受験を考えている大学の情報をこまめにチェックし、学習計画を立てることが成功の鍵です。
共通テストの成績も加味される場合は、1月まで対策を続ける必要があるので注意が必要です。
参考記事:特別入試の選考日程の一例のまとめページ
総合型選抜と一般選抜の学力試験は何が違うの?
総合型選抜と一般選抜の学力試験には次のような違いがあります。
対象項目 | 総合型選抜 | 一般選抜 |
---|---|---|
難易度 | 低い | 高い |
出題範囲 | 狭い | 広い |
評価基準 | 柔軟 | 明確 |
一般選抜では学力試験の成績のみで合否が判定されるため、より点差が開きやすいように、幅広い出題範囲から高難易度の問題が出題される傾向があります。
一方、総合型選抜では面接や小論文、活動実績などに学力試験の点数も加算して合否が決まるので、他の項目と合わせて総合的に判断しやすいように、基礎的な学力があれば点数が取れるような出題がされることが多いです。
そのため、あなた自身に合った受験方法を選択することが合格への近道となります。
参考記事:総合型選抜で受験に臨むメリットとデメリット
今回の内容のまとめ
本記事では、総合型選抜の学力試験について詳しく解説しました。今回の内容を振り返って頂くためにここまでの内容で特に重要なポイントをまとめてみました。
- 大学や学部・学科ごとに試験の内容や形式が異なるため、各大学の募集要項をよく確認することが重要です。
- 過去問の分析を通じて出題傾向を把握し、対策を進めましょう。
- 学力試験は面接や小論文の成績と合わせて総合的に判断されるため、他の評価項目の準備も怠らないようにしましょう。
- 一部の大学や学部・学科では学力試験なしで総合型選抜を受けられる場合もあります。自分の適性に合った受験校を選ぶことも戦略の一つです。
この記事を通して総合型選抜の学力試験についての理解を深め、志望校合格に向けた準備に役立てていただければ幸いです。
この記事を書いた人
竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。