作成日: 2024/7/17 更新日:2024/7/18
総合型選抜(旧AO入試)の課題レポートの書き方とは?効果的な書き出しや例文も共に解説
大学を総合型選抜で受験する場合、出願時にレポートが課されることがあります。しかし、レポートの書き方が分からなかったり、何を書けばよいか頭を抱える受験生は少なくありません。
そこで本記事では、総合型選抜の課題レポートに関して主に以下のことについて書いています。
- 課題レポートの書き方
- 作成時の注意点
- 出題例と解答のポイント
- 高評価を得られるレポートの特徴
- 総合型選抜で課される課題レポートの対策方法
上記以外にも、課題レポートに対して受験生からよくいただく質問に対する回答も載せています。是非、最後まで読んであなたの受験対策にお役立てください。
この記事を書いた人
年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
総合型選抜(旧AO入試)の課題レポートとは?
総合型選抜のレポートは、具体的なテーマに対してあなたの意見や考えを述べる形式がほとんどです。
レポートの評価基準はほとんどの大学で共通しており、主には受験生の以下の能力が評価されます。
- 文章構成力
- 思考力
- 表現力
- 当該テーマについての知識量
課題レポートが課される総合型選抜を受けるのであれば、上記をはじめとした能力が評価されるという点をまずは押さえておく必要があります。
総合型選抜における課題レポートの位置づけ
総合型選抜においてレポートが課される理由は、受験生が書いたレポートを読むとその受験生の学ぶ適性の有無や意欲の有無を測れるからです。
課題レポートには、会場で行われる試験とは異なる点がいくつかあります。
提出期限さえ守れば時間制限がないことや、調べたりデータを集めたりしながら書いてよい、という点がその代表的な例です。
したがって、課題について深く考察し、あなた自身の主張を論拠とセットにして論理的に表現することが求められます。
そのため、受験生の思考力や表現力に加えてテーマに対する知識の有無やレポートを書くことに手間をかけたかどうかも文章に表れます。
大学はそれらを総合的に判断して、あなたが学ぶ素養のある受験生なのかどうかを判断するためにレポートを課しています。
基本的な書き方
評価される課題レポートを作成するためには、基本的な書き方をことが欠かせません。そこで、総合型選抜入試における課題レポートの基本的な書き方は以下にてまとめましたのでご覧ください。
- 構成を組み立てる
- 各部分の詳細な内容を書き出す
- 事実と意見を書き分けながら仕上げる
- 字数や誤字・脱字を確認する
上記の4つのステップを踏むことで、質の高い課題レポートを作成することができます。それぞれの詳細については1つずつ解説していきます。
①構成を組み立てる
総合型選抜の課題レポート作成の第一歩は、構成を組み立てることです。そして構成を組み立てる際には、問いの把握が欠かせません。
そこでまずは、あなたが答えるべき問いを明確に理解しましょう。
問いへの理解が深まれば深まるほど、レポートに何をどのような順番で書くべきかが見えてきます。
問いが明確になった後には主張を明確にする
次に、その問いに対するあなたの主張を明確にします。この主張がレポート全体の主旨・要旨となり、文章全体の構成を決めます。
その後は、結論・理由・具体例の各要素に分けて課題レポートの内容を決めていきます。
構成をはっきりさせずにとりあえず書き始めてしまうと、質の高い課題レポートを作成することができません。そのため、十分な時間をかけて構成するようにしましょう。
②字数配分を考えながら詳細な内容を書き出す
構成ができたら、字数配分を考慮しながら、結論・理由・具体例の各部分で記載する事になる具体的な内容を書き出します。
課題レポートには必ず字数指定があるので、この時点で配分を考えておくことが重要です。
全体の字数を確認し、それを結論・理由・具体例のそれぞれに割り当て、その字数にあわせて詳細な内容を書いてください。
③事実と意見を書き分けながら仕上げる
課題レポートを書く際には、事実と意見を明確に区別することが重要です。
事実と意見の違い
事実とは、誰が見ても変わらない確かな情報のことを指します。
例えば、公式の定義や統計データ、研究結果などが該当します。
これに対して意見とは、あなた自身の解釈や考え方や感じ方を表現するものです。
事実と意見の混合は低評価に繋がる
事実と意見が混同しているレポートは論理的ではないとみなされ、評価が低くなります。
そのため、事実と意見を明確に書き分けることは評価の高いレポートを書くために必要不可欠な条件となります。
あなた自身の主張を裏付ける証拠として具体的な事例やデータ、文献などから探し出した事実を提示し、それを論拠にあなた自身の考えを伝えるようにしましょう。
そうすることで課題レポート全体の論理性が保たれ、完成度を高めることができます。
④字数や誤字・脱字を確認する
課題レポートが作成できたら、最終段階として字数と誤字・脱字の確認をしましょう。
字数オーバーや誤字・脱字はマイナス評価に繋がる
大学側が指定した制限字数を超えると、それだけで課題レポートの提出が認められない、つまり不合格になる可能性があります。
また、誤字・脱字を見落とすと語彙力や注意力が低いと評価されてしまう可能性が高いです。
引用や参考文献の扱いも重要
字数や誤字・脱字以外に、引用や参考文献への言及についても確認しましょう。
他者の著作権を侵害しているレポートは、いかに内容が優れていても評価は著しく低くなってしまいます。
字数、誤字・脱字、引用や参考文献への言及はレポートの質に影響する
以上のように、字数、誤字・脱字、引用や参考文献への言及の3点は、レポートの品質を保つために必ずチェックするべき項目です。
そのため、チェックリストを作成するなどしてチェックを忘れないようにしましょう。あなた自身だけでチェックすると見落とす可能性もあるので、他人にもチェックしてもらうようにしてください。
作成時の注意点
総合型選抜で課される課題レポートを作成する際には、以下の4つの注意点を意識した上での記載が求められます。
- 話し言葉ではなく書き言葉を使う
- 「です・ます調」か「だ・である調」のどちらかに統一する
- 1文が長くなりすぎないようにする
- 1段落1トピックの原則を守る
上記の4つのポイントの詳細について1つずつ解説します。
話し言葉(口語)ではなく書き言葉(文語)を使う
課題レポートは口語ではなく文語で書く必要があります。
口語は日常会話で用いられ、親密さやカジュアルさを伴います。文語はフォーマルな文書や学術的な内容に適しています。
総合型選抜の課題レポートはあなたの思考力や論理性を評価するものなので、口語より文語の方が適切です。
したがって、総合型選抜の課題レポートは口語を用いずに書くことを心掛けましょう。
「です・ます調」か「だ・である調」に統一する
総合型選抜の課題レポートでは、文末の統一が重要です。
「です・ます調」か「だ・である調」のどちらかを選び、そのスタイルに統一して書きましょう。
「です・ます調」は丁寧で優しく、親しみやすい印象を与えます。一方で、「だ・である調」は断定的で客観的な印象を与えます。
課題レポートでは後者を用いることを推奨します。
1文が長くなりすぎないようにする
課題レポートを書く際には、冗長な表現を避けて簡潔で分かりやすい文を書くことが重要です。
1文が長くなると主語と述語のつながりが不適切になったり、複雑になりすぎたりして読み手にとってわかりづらい文になってしまいます。
そのため、必要な情報を伝えつつも無駄な情報は削ぎ落として簡潔な文を書くことが求められます。
1文の文字数の目安は、20〜40文字にしましょう。
1段落1トピックの原則を守る
分かりやすい文章を書くためには1段落につきトピック(話題)は1つにすることが重要です。
1段落の文字数は40〜120文字を目安にし、トピックと無関係なことは書かないように気をつけましょう。
典型的な課題レポートの形式と特徴
総合型選抜における課題レポートの出題形式は、ほとんどが以下の2つのどちらかに該当します。
- 講義を聞いて設問に答える形式
- 特定のテーマに関して自ら考察する形式
それぞれの詳細についてこれから解説します。
講義を聞いて設問に答える課題レポート
講義を聞いて設問に答える課題レポートは、大学の授業を再現した形式です。
講義を聞いて設問に答える課題レポートとは?
まずは大学が指定する講義を聞き、その内容に基づいて設問に答えます。
単に講義の内容を再現するだけではなく、理解したことを自分の言葉で表現しつつ自分なりの視点で分析する能力が問われます。
設問の形式は一問一答形式のものから講義内容を元に自由に考察するものまで多岐に渡ります。
回答時のポイントとは?
答え方のポイントは、自分の意見を明確に述べつつそれが講義内容に基づいていることを明示することです。
また、自分の意見の根拠となる具体例を提示することでレポートに説得力がでます。
特定のテーマについて考察する課題レポート
特定のテーマについて考察する課題レポートでは、まずはそのテーマをよく理解し、それについて自分なりの考えをまとめることが重要です。
基本的には、「自分の主張を述べ、それを裏付ける根拠を示し、それを通して何を伝えたいのかを明確にする」ことでスムーズに書き進められます。
事実と意見のバランスが重要
考察型のレポートでは、事実と意見のバランスが重要になります。
ただ事実を述べるだけだと、あなた自身の見解を主張することができず、大きく減点されてしまいます。
また、論拠がないままで主張を展開するとただの感想文になってしまい、文章が論理的ではないと判断されてしまいます。
そのため、事実から何を読み取り、それに対してどう考えるのかをしっかりと表現することでご自身の思考力や視野の広さをアピールするようにしましょう。
形式別の出題例と解答のポイント
ここからは、実際の過去問とその解答例を通して形式別の出題例と解答のポイントを解説していきます。
講義受講型の課題レポートの過去問と解答の例文
講義受講型では、講義の内容を正確に把握した上で設問の答えを述べることが求められます。
その際、単に講義の内容を再現するだけではなく、自分なりの視点を加えることで独自性を出すことが大切です。
講義受講型の課題レポートの過去問の一例
次の問題は、立命館大学の政策科学部で2024年度に出題されたものです。
入学試験要項に以下のように記載されています。
セミナーテーマ:「格差社会の解決」
政策科学部の教員が現在話題になっているテーマで講義を50分程度行います。講義受講の際は、メモを取ることができます。ただし、当日に配付される講義資料以外の資料の持込みはできません。講義資料の一部を英語による表記とします。
講義終了後に20分程度の質問時間を設けます。質問時間終了後、全員が講義内容に関する理解と意見について60 分間でレポートを作成します。レポート作成時には、当日に配付する講義資料を参照することができます(講義資料の他にも、メモ用紙、レポート用紙を当日に配付します)。
レポートでは、理解力、文章表現力、統計資料等を読み解く数的処理能力などを評価します。
引用元:立命館大学総合型選抜の課題レポートに関するセミナーテーマ部位
※立命館大学政策科学部の2024年度入試における政策科学セミナー方式の問題です。
過去問の解説
この問題では、実際に政策科学部の教員が行った「格差社会の解決」というテーマの講義について、その内容をまとめつつ自分の意見を表現することが求められます。
実際の大学の講義でも、本問のように授業の内容を踏まえたレポートを次回の授業までに提出させ、それを通して講義テーマへの理解を深めさせるという教育手法が取られることがあります。
そのため、そのような大学の教育手法に対する適性があるかどうかを判断するために本問のような課題が設定されていると推測されます。
難易度について
本問の講義テーマは「格差社会の解決」という身近なテーマなので、テーマ自体の理解はさほど難しくないでしょう。
また、講義時間は高校の授業時間にあわせて50分間程度に設定してありますので、最後まで集中して講義を聞きやすいはずです。(大学の講義は約90分間です)
講義終了後の質疑応答について
講義終了後に質疑応答の時間が設けられています。
講義の内容のなかでレポートのトピックにしたい内容をメモし、それに関する質問をしておきましょう。そうすると質疑応答の内容を利用することであなた自身の意見が書きやすくなります。
レポート作成時間は60分間とやや短めなので、講義を聞きながら構成を固め、すぐに書き始められるようにするとよいでしょう。
解答の例文
講義では、格差社会を解決するためには所得格差を是正する必要があるということを学んだ。一般に所得が低いとされる非正規雇用者を正規雇用し、賃金を上昇させることで所得格差を小さくすべきというのが講義の主旨だ。
確かに、非正規雇用者を正規雇用に転換すれば、ある程度の賃金向上は見込めるだろう。しかし、それだけでは、格差の是正は難しいと考える。なぜなら、正規雇用に転換したとしても、その後、昇進できない場合が多いからだ。
昇進して所得が上がれば所得格差は小さくなるが、所得が上がらないままだと格差は広がる一方である。実際には、正規雇用に転換したとしても、社内で職業訓練を受けられないなどの理由でキャリアアップが難しいという実情がある。
そのため、キャリアアップを支援するための仕組みを構築することが重要ではないかと考える。公的機関による職業訓練の機会の提供や職業訓練を実施する企業の助成などを行えば、正規雇用転換後もキャリアアップしやすくなるのではないだろうか。
このような取り組みによって、正規雇用転換後に昇進しやすい環境を整えると、次第に賃金が上昇していく。それにより、元から正規雇用されていた者との所得格差が是正されることで、格差社会の解決に繋がるのではないだろうか。
解答の解説について
上記の解答例では、1文目で講義の内容をまとめています。
講義を聞きながら「非正規雇用者を正規雇用に転換しただけでは賃金が十分に上がらないのでは?」という疑問を持ったとします。
そこで、それについて質問してその真偽や背景、そして対応策を引き出すことで2文目以降のような論の展開が考えられます。
限られた時間のなか、自分の知識だけで質の高いレポートを書くのは難しいので、講義資料や質問への回答などを踏まえて書くようにしましょう。
テーマ考察型の課題レポートの過去問と解答の例文
テーマ考察型では、課題について自分なりの考察を述べることが求められます。
その際、自分の意見をはっきりと論理的に考えて答えを導き出し、それを裏付ける論拠を明確に示すことが求められます。
テーマ考察型の課題レポートの過去問
次の問題は、成蹊大学の経済学部で2024年度に出題されたものです。
テーマ:外国人観光客と日本経済
以下の図1はコロナ禍の前後における訪日外国人数と百貨店免税売上高を、図 2は主要地域への入国者数を、図3は為替レートと訪日外国人消費額の関係を、それぞれ図示したものである。図1~3から読み取れることを自分の言葉でまとめて書きなさい。
次に、2023年1月以降最近までのインバウンド需要がどのように推移しているかを調べ、関連する図表(グラフ等)を最低1つ、レポート用紙2枚目のスペースに記入し、それを引用しつつ内容をまとめなさい。その際、どの資料を調べたのか資料の題名・書いた人(省庁・団体など)・書かれた年・出版社またはインターネットの URL 等をレポート用紙2枚目の「参考にした書籍等」の欄に書きなさい。
最後に、ここまでの分析を踏まえつつ、日本が外国人観光客を受け入れるうえでどのような問題があるか、論じなさい。また、その問題を解決するためにどのような政策を講じるべきか、あなたのアイデアを述べなさい。
過去問の解説
「外国人観光客と日本経済」という身近なテーマなので、比較的書きやすいでしょう。
図1~3は平易なグラフなので、読み取れることを簡潔にまとめます。
インバウンド需要の推移についても、資料の内容を引用しつつ内容をまとめます。
ここまでの分析を踏まえつつ、最後に問題点を解決するためのアイデアを書くようになるので、ここで論理を飛躍させないように注意したいところです。
解答の例文(一部省略)
2021年以降、米国・EU・英国への入国者数は回復傾向にあるものの、日本への入国者数は2022年10〜11月の時点でも2019年比で約30%にとどまっている。しかし、2023年1月以降インバウンド需要は伸び続けており、訪日外国人数は増加している。
円安になるほど訪日外国人の1人あたり旅行消費額は高くなる傾向にあり、2022年10〜11月の時点で訪日外国人数は2019年同期比約30%にとどまっているものの、訪日外国人消費額は同期比約60%に回復している。
このことから、円安の恩恵で訪日外国人1人当たりの消費額は増加していることが読み取れる。しかし、2022年10〜11月時点での訪日外国人はほぼ中国人以外であり、中国からの訪日者数は全くと言っていいほど回復していない。
そのため、中国から訪日観光客を誘致し、日本での消費額を増加させる政策が必要であると言える。例えば、日本の医療水準の高さを生かした医療ツーリズムの受け入れを強化すれば、中国人富裕層による高額消費を望むことができる。
解答の解説について
前半で読み取り内容を簡潔にまとめ、後半でそれを踏まえて自論を展開するという構成で書くことになります。
図の読み取りは簡単ですが、そこからずれた自論を展開してしまうと大幅に減点されてしまいます。一貫性のある論理を展開することが重要です。
総合型選抜の課題レポートで大学側に特に評価されるポイント
課題レポートを評価する際、大学は特に以下の3点を重視します。
- 分かりやすく構成されているか
- 主張の根拠が明確に示されているか
- 主張に独自性があるか
これらのポイントを押さえつつ、自分の言葉で丁寧に表現しましょう。
分かりやすく構成されているか
課題レポートの評価で最も重視されるのは、全体の構成が整っていて読みやすいかどうかです。
具体的には全体の流れが論理的で一貫性があるか、段落間の結びつきは適切かどうかが評価されます。
全体の流れを整えるコツ
全体の流れを整えるためには、レポートの主旨を明確にしたうえで結論・理由・具体例の順に書いていく必要があります。
その上で、それぞれの論点について具体的な事例やデータを用いて説明し、それらが全体の流れに結びつくようにしましょう。
読みやすい文章を書くための心得
また、読み手が理解しやすい文章を書くためには、論点ごとに段落を分けて整理することが重要です。
段落間のつながりを工夫して読者が理解しやすい文章構成にすることで、レポートの評価を高くすることが出来ます。
そのため、文章全体の構成を考えてからレポートを書きはじめるようにしましょう。
主張の根拠が明確に示されているか
課題レポートにおいて、主張の根拠が明確に示されているかどうかで大学から高評価を得られるかどうかが決まります。
まず、ご自身の主張や考察を述べる際にはその根拠となる事実やデータ、情報をしっかりと提示することが求められます。
これにより、あなたの主張がただの感想でないことを採点者に示すことができます。
また、根拠は具体的で詳細なものであるほど主張に説得力が生まれます。
例えば、「高齢者の増加により、日本の年金制度は破綻の危機に直面している」と主張する場合は、「統計によれば、2025年には全人口の3分の1が65歳以上の高齢者になると予測されている」といった具体的なデータを示すと説得力が増します。
このように、自分の意見や主張だけでなくそれを裏付ける具体的な事例やデータを示すことで、説得力を持たせるようにしましょう。
主張に独自性があるか
課題レポートにおける独自性とは、自分だけの視点や考え方を表現することです。これが評価の大きなポイントとなります。
独自性を出す際のポイント
課題レポートでは、一般的な意見や広く認知されている事実を述べるだけではなく、自分の経験や研究を元にした独自の視点を取り入れることが求められます。
これができると、あなたの課題レポートは他の受験生のものとは一線を画するものとなり、大学にあなたの能力や適性を強く印象づけることが可能となります。
新たな視点や独自の解釈を加えるためには、そのテーマについてある程度の知識を有しておく必要があります。
そのため、余裕があれば、志望大学・学部の頻出テーマに関する知識をつけておくようにしましょう。
総合型選抜の課題レポートの対策方法
総合型選抜の課題レポートの出題形式と要求されるレベルは大学によって大きく異なります。
そのため、まずは過去問を見てどのような問題を解けるようになる必要があるのかを把握しましょう。
また、レポートは読みやすさも評価されますが、読みやすい文章を書けるようになるまでにはどうしても時間がかかります。
そのため、早めに学校や塾、予備校で過去問や練習問題を使いながら実際に書いてみて、添削してもらいながら対策を進めてください。
受験生がよく抱く疑問とその回答
ここからは、課題レポートについてよくある質問へ回答していきます。
小論文とはどう違うの?
総合型選抜の課題レポートと小論文は、いずれも、あるテーマについてあなた自身の考えを述べる課題である点では共通しています。
しかし、書くべき内容には大きな違いがあります。
小論文では、ある意見や主張を論理的に展開し、自分の立場を明確に示すことが求められます。
一方、課題レポートでは、与えられたテーマに対する深い理解を示し、それをどう解釈し、どのような視点から捉えるかが問われます。
そのため、課題レポートを書く際には、学問的な視点や専門的な知識が必要になります。
レポートの書き出しのコツは?
課題レポートの書き出しは、全体の流れを示す大切な部分です。
そのため、書き始めで具体的なテーマを設定することが重要です。
例えば、「戦争と平和について考察する」というテーマよりも「第二次世界大戦前後の平和について考察する」というテーマのほうが具体的です。
そして、設定したテーマに対するあなたの考えや主張を1~2文で簡潔に述べます。
上記のようにすることで、採点者に「何についてどのような意見を述べているのか」というレポートの最も大切な部分が明確に伝わります。
何文字くらいで書かされることが多い?
総合型選抜の課題レポートでは、一般的には2000~3000文字程度で書かされることが多いです。
文字数は学部・学科や出題形式で大きく変わる
基本的に課題レポートの文字数は、大学や学部、学科によってこの文字数が異なります。
例えば、一部の文系学部では4,000文字を超える長文を求められることもあります。逆に、理系の学部では1,000文字程度で答えることを求められることもあります。
また、出題形式によっても字数は変わります。
講義を聞いて設問に答えるタイプの課題レポートでは、一つの設問に対して300文字程度の回答を求められることが多いです。
一方、課題に基づいて考察するタイプの課題レポートでは、全体で2000文字以上の長文を求められることが多いです。
記載の際の字数のルールと目安の文字数
いずれの場合も、字数制限を守ることは非常に重要です。
字数は1文字でも多いと採点対象外です。最低でも制限字数の8割の文字数で書くようにしましょう。
できれば9割を目指してください。字数が少な過ぎても減点されることがあるので注意が必要です。
実際にレポートで使える例文を教えてください
総合型選抜の課題レポートでは、自分の考えを具体的な例を用いて説明することが重要です。その場合の例文を紹介します。
具体的な例を出して自分の考えを説明する文章の例文
例えば、社会問題についてのレポートを書く場合、以下のような文章が考えられます。
「近年、日本社会における高齢者の孤独死が増加しています。この問題の根源は、都市部の核家族化と地方の過疎化によるコミュニティの崩壊にあると考えます。具体的には、東京都内での孤独死の増加と、山形県の過疎地域での同様な傾向を比較することで、この問題の深刻さが浮き彫りになります。」
以上のように、自分の考えを述べるだけでなく具体的な例を用いてそれを裏付けることで、より説得力のあるレポートになります。
レポートの最後の部位の記載のポイントと例文
そしてレポートの最後には、自分の提案を盛り込むことも有効です。その場合の例文も紹介します。
「この問題に対する解決策として、地域コミュニティの再生と高齢者支援の社会制度の充実を提案します。」
以上のように、問題提起だけでなく解決策を示すことで、総合的な視点を持ったレポートになります。
今回の内容のまとめ
本記事では、総合型選抜(旧AO入試)の課題レポートの書き方について詳しく解説しました。
今回取り上げた内容の中でも、課題レポートを書く際の重要なポイントを最後にまとめましたので、ご覧ください。
- レポートでは文章構成力・思考力や表現力・当該テーマに関する知識の深さが評価されます。
- 結論・理由・具体例の各要素に分けて課題レポートの基本構成を組み立てましょう。
- 事実と意見を書き分けましょう。
- 話し言葉(口語)ではなく書き言葉(文語)を使いましょう。
- 文末を「だ・である調」に統一しましょう。
- 1文を短くすることを心がけましょう。
この記事を通じてあなたが総合型選抜の課題レポートの書き方についてより深く理解し、志望校合格のお役に立てていただければ幸いです。
参考記事:特別入試で出願時に求められる主な資料一覧
この記事を書いた人
竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。