作成日: 2024/8/29 更新日:2024/8/30
理系の総合型選抜(旧AO入試)の特徴とは?効果的な対策方法や挑戦するメリットと共に解説
そこで、この記事では以下のことについて解説します。
- 理系の総合型選抜の特徴
- 総合型選抜と他の受験形式との違い
- 理系の受験生が総合型選抜を受験するメリット
- 理系の受験生が総合型選抜を受験する際の注意点
- 理系の受験生が総合型選抜で行うべき対策
- 理系学部の総合型選抜を行っている大学の実例
上記に加えて、理系の受験生から総合型選抜に関してよくいただく質問とその回答も載せています。「総合型選抜とは何か」というところから解説していますので、是非最後までご覧ください。
この記事を書いた人
年内入試ナビ編集部
年内入試ナビ編集部は、総合型選抜並びに推薦入試対策の専門塾ホワイトアカデミー高等部の講師経験者で構成されています。 編集部の各メンバーは社会人のプロ講師という立場で高校生の総合型選抜や公募推薦・指定校推薦対策のサポートを現役で担当しています。 メンバーの一例としては、「大学受験の指導実績が15年越えの講師や総合型選抜・公募推薦対策の専門塾を現役で運営している塾長、教員免許保有者等が在籍。 各教員の指導経験に基づいた実体験の情報をベースに年内入試関連の様々な情報を定期的に配信しています。
目次
- 1 そもそも総合型選抜とは
- 2 理系ならではの特徴
- 2-1 特定の科目の履修や評定平均が出願条件となっていることがある
- 2-2 特定の課外活動が出願条件になっていることがある
- 2-3 出願の際に特殊な成果物の提出を求められることがある
- 2-4 出願条件の実例
- 2-5 二次選抜で数学・理科の試験が行われることが多い
- 2-6 二次選抜で口頭試問が行われることが多い
- 2-7 二次選抜で研究に必要な能力の有無を問う試験を実施することがある
- 3 他の入試との違い
- 4 理系の受験生にとっての総合型選抜のメリット
- 4-1 特定の課外活動を最大限評価してもらえる
- 4-2 特定の成果物を提出できれば合格に近づける
- 4-3 得意科目のウエイトが高い場合がある
- 4-4 選考時期が早いので年内に受験が終わることがある
- 4-5 一般入試では狙えない偏差値帯の大学に合格するチャンスがある
- 5 理系の受験生にとっての総合型選抜の注意点
- 6 受験生が合格を勝ち取るためのポイント
- 6-1 高い評定平均を取る
- 6-2 志望する学部・学科と深く関連する課外活動を行う
- 6-3 出願条件を満たす
- 6-4 出願書類の質を高める
- 6-5 資格・検定を取得する
- 6-6 面接対策をする
- 6-7 口頭試問対策をする
- 6-8 ペーパー試験の対策をする
- 6-9 特殊な二次選抜の対策をする
- 7 理系学部で総合型選抜を実施している大学の例
- 8 3つの大学の試験の概要をピックアップして紹介
- 9 総合型選抜において理系学部を志望する受験生からよくある質問
- 9-1 総合型選抜で理系の学部に受かる人の特徴は?
- 9-2 総合型選抜と旧AO入試との違いは?
- 9-3 一般入試と総合型選抜ではどちらが有利ですか?
- 9-4 一般選抜と比べて総合型選抜ではどれくらい合格率が上がるの?
- 9-5 理系の総合型選抜は一般入試の片手間で対策できるの?
- 10 今回の内容のまとめ
そもそも総合型選抜とは
総合型選抜は、各大学・学部・学科がそれぞれの基準・方法で選考を行う入試形式です。
一般入試とは異なり、入試当日の試験の点数だけでなく、以下などが評価の対象になる可能性があります。
- 評定平均
- 欠席日数
- 資格・検定の有無
- 課外活動
- 志望理由書
- 自己PR書
- 小論文
- 面接
- プレゼンテーション
- ペーパーテスト
総合型選抜では受験生をより多面的に評価することができます。その点が大学からも受験生からも注目されており、年々注目度が上がっています。
理系ならではの特徴
以上が総合型選抜の特徴ですが、理系ならではの特徴は何があるのでしょうか。
この項目ではそれを紹介します。以下にて一欄にしてみましたのでご覧ください。
- 特定の科目の履修や評定平均が出願条件となっていることがある
- 特定の課外活動が出願条件になっていることがある
- 出願の際に特殊な成果物の提出を求められることがある
- 二次選抜で数学・理科の試験が行われることが多い
- 二次選抜で口頭試問が行われることが多い
- 二次選抜で研究に必要な能力の有無を問う試験を実施することがある
それぞれについて説明します。
特定の科目の履修や評定平均が出願条件となっていることがある
理系の総合型選抜の場合、特定の科目を履修して単位を取得していることが出願条件になっていることが多いです。
例えば「数Ⅲを履修していること」や「物理基礎・物理をどちらも履修していること」などです。
総合型選抜は大学・学部・学科によって大きく異なるのが特徴ですので一概には言えませんが、傾向としては工学部では物理、農学部では生物の履修が出願条件になっていることが多いです。
また、「数学の評定平均が4以上」など特定の科目の評定平均が一定以上の水準であることを出願条件にしているケースがあります。
文系に比べて理系の総合型選抜は学部・学科ごとに出願条件が異なる可能性が高くなっています。
志望校の募集要項を早めに確認し、受験資格があるかどうかや受験資格を得るために必要な取り組みは何かを把握しておきましょう。
参考記事:評定平均と総合型選抜の合否の関係とは?
特定の課外活動が出願条件になっていることがある
理系の総合型選抜では、特定の課外活動で一定以上の実績を残していることが出願条件になることがあります。
どのような課外活動が出願条件になるかは大学・学部・学科によって異なりますが、以下にその代表例を紹介します。
- 国際数学オリンピック
- 物理チャレンジ
- 化学グランプリ
- 国際生物学オリンピック
- 日本情報オリンピック
- 全国高等学校ロボット競技大会
すべて短期間で実績を残すことができるものではありません。
志望校にもよりますが、理系の総合型選抜を考えるのであれば上記のような課外活動に早くから取り組む必要があると言えます。
とはいえ、すべての理系学部・学科が上記のような出願条件を設定しているわけではありません。
あなたが志望する大学の出願条件を募集要項で確認してください。
なお、出願条件が厳しければ厳しいほど出願できる受験生が少なくなります。言い換えると競争相手が少ないということです。
あなたが高1・高2生で、志望校が出願条件の厳しい総合型選抜を実施している場合はその出願条件を満たすことに時間を費やすのもありかもしれません。
出願の際に特殊な成果物の提出を求められることがある
理系の総合型選抜では特殊な出願書類の提出を求められることがあります。
例えばこういった出願書類を求められることがあるようです。
- あなたが作成したプログラミングのコード
- あなたが行った実験の概要とレポート
- 自作デバイスの設計図や説明書
- あなたが書いた論文とその要点をまとめた資料
- 自作の建築設計図面
これらは実質的には「出願条件」として機能しています。
こういった特殊な書類を出願書類に指定することで、一定の課外活動を行った受験生しか出願できないようになるからです。
参考記事:総合型選抜のポートフォリオの特徴と作成のポイント
特殊な出願書類の出来栄えは二次選抜の評価にも影響する
特殊な出願書類の提出を求める場合、その内容に関する質疑応答が二次選抜で行われるケースが大半です。
つまり、出願書類のクオリティの高低が面接や口頭試問の点数を決める可能性があります。そのため、クオリティの高い出願書類を提出することで合格可能性がかなり高くなります。
クオリティーの高い出願書類を作成するためにも募集要項を確認し、志望校が特殊な書類の提出を求めている場合はその作成にできるだけ早く取り掛かりましょう。
参考記事:総合型選抜で求められる主な提出資料一覧
出願条件の実例
ここまで総合型選抜の理系ならではの特徴として出願条件に関するものを紹介しました。
ここで、具体的な出願条件の例を紹介します。
令和6年(2024年)度の北海道大学フロンティア入試の出願条件です。
1.資 格
次のいずれかの資格に該当すること。
(1) 高等学校又は中等教育学校を令和6(2024)年3月に卒業見込みの者及び学校教育法施行規則第93条第3項の規定に基づき、令和5(2023)年4月から令和6(2024)年3月までに卒業又は卒業見込みの者
(2) 文部科学大臣が高等学校の課程と同等の課程を有するものとして認定した在外教育施設の当該課程を令和5(2023)年4月から令和6(2024)年3月までに修了又は修了見込みの者
2.要 件
次のすべての要件に該当すること。
(1) 高等学校等で「物理基礎・物理」又は「化学基礎・化学」を履修している者 (理数科にあっては、「理数物理」又は「理数化学」を履修している者) ※ 該当科目を学校設定科目で代替している場合は、その代替科目を履修している者を含みます。
(2) 英語能力が、実用英語技能検定2級以上、もしくはTOEIC L&Rのスコアが600点以上である者 ただし、TOEIC L&Rについては令和3(2021)年10月1日以降に受験した試験のスコアのみ有効とします。
(3) 合格した場合、入学を確約できる者
特定科目の履修が出願条件になっていますね。
何度もお伝えしていますが、出願条件は大学・学部・学科によって異なります。
志望大学の募集要項はできるだけ早く確認しましょう。
二次選抜で数学・理科の試験が行われることが多い
理系の総合型選抜では、二次選抜で特定の科目の試験が行われることが多いです。
数学の試験が行われるケースが多いですが、建築学科で物理、応用化学科で化学などその学科との関連の強い科目の試験が行われることもあります。
あなたの得意科目の試験が実施されるのであれば有利です。
特定の科目なら誰にも負けないという自信がある人は、その科目の試験を実施する総合型選抜に出願することを検討する価値がありそうです。
参考記事:二次選抜で問われる主な学力試験
二次選抜で口頭試問が行われることが多い
理系の総合型選抜では、二次選抜で口頭試問が行われることが多いです。
ペーパー試験と口頭試問の最大の違いは、出題する問題を一人ひとりにあわせてカスタマイズできるかどうかです。
ペーパー試験であれば受験生全員に同じ問題を出題する必要がありますが、口頭試問であれば受験生ごとに質問内容を変えることができます。
理系の研究は、研究内容によって全く異なる専門知識が求められます。
受験生が研究を希望する内容や分野に合わせてどの科目のどの単元の内容を出題するかを決めることができる口頭試問が理系の総合型選抜では好まれやすくなっています。
口頭試問にはペーパーテストにはない難しさがありますので、口頭試問が課される場合には対策を万全にしておきましょう。
具体的な対策方法については後ほどお伝えします。
参考記事:口頭で知識が問われる試験の特集ページ
二次選抜で研究に必要な能力の有無を問う試験を実施することがある
理系の総合型選抜では、二次選抜であなたが研究に必要な能力を備えているかどうかを判断するための試験が行われることがあります。
- あなたがこれまでに行った探究活動のプレゼンテーション
- 特定の研究テーマに関する研究計画書の作成
- 実験や実習を実施して制限時間内にレポートを書く
- 与えられた論文の要約や論評
このように、その入試でしか経験しないような特殊な状況を経験する場合があります。
こうした場合、オープンキャンパスの個別相談会に参加するなどして教授や学生に必要な準備や対策を質問するのがとても有効です。
また、実際に実験などの探究活動を経験することが何よりの対策になる場合がほとんどです。実際に実験などに参加する機会を多く確保する方法を模索することになります。
他の入試との違い
ここからは、理系の総合型選抜と他の入試との違いについて解説します。
総合型選抜と一般入試の違い
ここでは総合型選抜と一般入試の大きな違いを2つまとめてみました。
項目 | 一般入試 | 総合型選抜 |
評価項目 | 入試当日の試験の点数 | 欠席日数、評定平均、課外活動、口頭試問、試験の点数、面接など多岐にわたる |
出願資格 | 誰でも | 特定の条件を満たした受験生 |
一般入試では入試当日のペーパーテストの点数のみで合否が決まります。
それに対して、総合型選抜ではその名の通りさまざまな評価項目を総合して合否を決めます。
また、一般入試には高校を卒業予定の高3生や高校を卒業した人であれば誰でも出願できます。
その一方で、総合型選抜には出願条件を満たした人しか出願できません。
総合型選抜と公募推薦
理系の総合型選抜と公募推薦の特徴的な部分を表にして比べました。
項目 | 総合型選抜 | 公募推薦 |
出願資格 | 特定の条件を満たした受験生 | 総合型選抜で課されるような条件に加えて、学校長からの推薦が必要 |
併願 | できることが多い | できないことが多い(専願が多い) |
総合型選抜と公募推薦はとてもよく似ている入試形式です。
しかし、上記にて記載いたしました出願資格と併願が可能かどうかの2点については大きく異なります。
まず、公募推薦では出願に学校長の推薦が必要です。総合型選抜では学校長の推薦は不要です。
次に、公募推薦は学校長からの推薦を受けている関係で専願つまり合格したらその大学・学部・学科に通わなくてはいけないケースがほとんどです。
一方で、総合型選抜では併願が認められているケースが多々あります。
以上のように、総合型選抜と公募推薦では出願資格と併願が可能なケースが多いかどうか、という2点に相違点がよく見られます。
参考記事:両試験の相違点の解説ページ
理系の受験生にとっての総合型選抜のメリット
理系の受験生が総合型選抜を利用するメリットを紹介します。
- 特定の課外活動を最大限評価してもらえる
- 特定の成果物を提出できれば合格に近づける
- 得意科目のウエイトが高い場合がある
- 選考時期が早いので年内に受験が終わることがある
- 一般入試では狙えない偏差値帯の大学に合格するチャンスがある
それぞれについて解説します。
特定の課外活動を最大限評価してもらえる
先ほど紹介した通り、理系の総合型選抜では特定の課外活動が出願条件になっていることがあります。
そうした課外活動の実績がある場合、ライバルの少ない入試に出願できることになりますので合格に近づくことができます。
理系の特定の分野における能力を発揮した課外活動で実績のある受験生は是非総合型選抜の受験を検討してください。
特定の成果物を提出できれば合格に近づける
理系の総合型選抜では、上述のような課外活動の実績がなくても特殊な出願書類を提出することで能力を示すチャンスが与えられることがあります。
コンテストでの優秀な成績とは異なり、出願書類の準備は時間さえかければ可能であることが多いです。
しかも出願書類の作成には周囲の大人の力を借りれば完成度を高めることができます。
そのため、高校の先生や総合型選抜の対策を専門で行っている塾の先生の力を借りて特殊な出願書類を高いクオリティで完成させることができればあなたは合格に近づく事ができます。
ただし、理系の総合型選抜ならではの特殊な出願書類は作成に時間がかかります。したがって、「高3の夏休みに入ってから準備を開始すればいい」という考え方ではまず間違いなく十分なクオリティでの提出はできません。
そのため、自分が受験する年度の募集要項が発表される以前から、前年度の募集要項で必要な準備を特定して取り組みを開始しておくのが望ましいです。
得意科目のウエイトが高い場合がある
理系の総合型選抜メリットの1つに、特定の科目が得意であることの恩恵が大きいです。
例えば、二次選抜で数学のペーパー試験と口頭試問が課される場合があります。
この場合、数学が得意であることの恩恵は極めて大きいです。なぜなら、数学のペーパー試験で高得点を取れるためです。
参考までに同じ大学・学部・学科を一般入試で受験する場合、数学は英語や物理が同じ配点であることが多いです。
そのため、数学だけがペーパー試験で課される総合型選抜を受けるケースと比較すると数学が得意な事の恩恵は実は小さいです。なぜなら、数学で高得点をとっても他の科目の点数が低い場合は合格点に届かないことがあるためです。
このように、理系の総合型選抜では特定の科目が得意であることが合格に非常に有利にはたらきやすくなっています。
そのため、あなたに誰にも負けないくらい得意な理系科目がある場合は、その科目が課される総合型選抜の受験を検討する価値が大いにあります。
選考時期が早いので年内に受験が終わることがある
これは文理共通の特徴ですが、総合型選抜は一般入試に比べて選考の時期が早いです。
したがって、年内に合否が判明し受験が終わることがあります。
年内に受験が終わればストレスから早期に解放されますし、大学進学のための準備も早めに開始することができます。
それが一番顕著に発揮されるのが大学では親元を離れる場合です。
他の受験生より早い時期に合格していますので、家探しや学生寮の申し込みを早期に行うことができ、有利な条件の住まいを見つけることができる可能性が高くなります。
ただし、理系の総合型選抜のうち、国立大学が実施する総合型選抜では共通テストを課すことが多いです。その場合、年内に合否が判明することはないので注意してください。
参考記事:この試験のおおよその日程はこちら
一般入試では狙えない偏差値帯の大学に合格するチャンスがある
理系の総合型選抜では、倍率が一般選抜と比べてとても低い傾向があります。
これは出願条件が厳しいことが多いからです。
逆を言えば、出願条件さえ満たしてしまえば合格できる可能性が高いということです。
出願条件を満たし、二次選抜で得意科目の試験のみが課される場合、一般入試では狙えない偏差値帯の大学に合格できるチャンスが生じてきます。
こういったチャンスを掴むにはどの大学・学部・学科が自分にとって有利な条件の入試を行っているかの情報を集めることです。
このチャンスを掴みたい人はたくさんの大学・学部・学科の募集要項に目を通してください。
そうすれば、例えば一般入試では日東駒専に合格できれば御の字という受験生がGMARCHに合格するといった周囲の誰もが驚くような合格を実現できる可能性があります。参考までにGMARCHというのは、一定の偏差値帯にあるとされる以下の私立大学の総称です。
- 学習院大学:G
- 明治大学:M
- 青山学院大学:A
- 立教大学:R
- 中央大学:C
- 法政大学:H
上記のような多くの受験生が憧れる大学の合格を目指せてしまう点は理系の総合型選抜の注目すべきポイントになります。
理系の受験生にとっての総合型選抜の注意点
理系の受験生にとっての総合型選抜の注意点は以下のとおりです。
- 特定の条件を満たしていないと出願できない場合がある
- 二次選抜の対策が大変な場合がある
- 入学後に学力のギャップを感じる可能性がある
それぞれについて解説します。
特定の条件を満たしていないと出願できない場合がある
ここまで紹介してきた通り、理系の総合型選抜は出願条件が特殊なことが多いです。
特定の科目を履修していなかったり、特定の課外活動に参加した実績がなかったりすると出願ができないことがあります。
出願ができなければ、提出書類や二次選抜の内容がどんなにあなたに向いているものであっても合格することはできません。
志望校の出願条件を満たすことができるよう、計画的な高校生活を過ごすとともに早めに出願条件を確認するようにしてください。
二次選抜の対策が大変な場合がある
理系の総合型選抜では、二次選抜の対策が一般受験と遜色ないくらい大変なことがあります。
苦手科目のペーパーテストや口頭試問が行われる可能性がありますし、実験を手際よく進める能力が求められる場合もあります。
「総合型選抜は一般入試と比べて試験が楽らしい」という考えで臨むと危険かもしれません。
募集要項で志望校の二次選抜の内容を確認し、1日でも早く対策を開始しましょう。
関連記事:二次選抜で実施される口頭試問とは?
入学後に学力のギャップを感じる可能性がある
理系の総合型選抜では特定の能力の有無で合否を決めることが多いため、それ以外の分野の能力において一般入試で合格した学生との能力の差を感じる可能性があります。
例えば、英語力についてです。
一般入試で合格した学生はその大学の偏差値帯に見合った英語力を持っていることがほとんどですが、総合型選抜で合格した学生は入試形式やその学生の個性によってはその限りではありません。
英語力が低いと大学の英語の授業についていくのがとても大変に感じるかもしれません。
総合型選抜で合格を勝ち取った場合、合格後に英語力を高めるなどして入学後に特定の分野の学力で他の学生とのギャップを感じずに済むような勉強をしておくことを強くおすすめします。
参考記事:特別入試の合否と英語の関係
受験生が合格を勝ち取るためのポイント
ここからは、理系の受験生が総合型選抜の対策をする際のポイントを説明します。今回ご紹介する対策ポイントは以下のとおりです。
- 高い評定平均を取る
- 志望する学部・学科と深く関連する課外活動を行う
- 出願条件を満たす
- 出願書類の質を高める
- 資格・検定を取得する
- 面接対策をする
- 口頭試問対策をする
- ペーパー試験対策をする
- 特殊な二次選抜の対策をする
それぞれについて解説していきます。
高い評定平均を取る
これは文理を問わず必要な対策です。
高い評定平均はあなたの基礎学力や勤勉さ、定期テスト対策をしっかりと行う計画性をアピールしてくれます。
総合型選抜を視野にいれている人は評定平均を少しでも高くすることを意識してください。
そのためには、定期テストで全ての科目において良い点数を取る事に加えて宿題・課題を期限内に高いクオリティで提出し、授業態度も良好にしてください。
また、先生に積極的に質問するなどして熱意をアピールするのも効果的です。
日々のこうした積み重ねがあなたの評定平均を高めます。
参考記事:合否獲得と成績の関係性の解説ページ
志望する学部・学科と深く関連する課外活動を行う
理系の総合型選抜では、志望する学部・学科と深く結びついている課外活動の評価がとても高いです。
以下、学科と課外活動の組み合わせの例を紹介します。あなたが行うべき課外活動を探す際の参考にしてください。
学科 | 課外活動 |
物理学科 | 国際物理オリンピック |
化学科 | 化学グランプリ |
生物学科 | 日本生物学オリンピック |
数学科 | 日本数学検定1級の取得 |
情報工学科 | U-22プログラミングコンテスト |
農学科 | 農業体験活動 |
海洋学科 | 海洋生物調査 |
これらはほんの一例です。
あなたの学部・学科に合った課外活動を探してください。
出願条件を満たす
理系の総合型選抜では出願条件が特殊であることが多いので、それを満たすようにすることがとても重要な対策です。
履修科目、評定平均、課外活動などです。出願条件は募集要項に記載をしていますので、必ず確認し、満たしているかどうかをチェックしましょう。
一部の大学・学部・学科の場合、理系の総合型選抜であっても英検のCSEスコアが一定の基準を満たしていないと受験できないことがあります。
そのため、出願条件に英検のCSEスコアが課される大学・学部・学科を受ける際には、そのスコアをきちんと取っておきましょう。
出願書類の質を高める
理系の総合型選抜では、文系の総合型選抜と同じく志望理由書や自己PR書などの提出が必要になることが多いです。
これらの書類では、あなた自身の長所や個性をアピールするとともに自分が大学・学部・学科のアドミッション・ポリシーを満たしていることをアピールしてください。
また、理系ならではの出願書類として実験のレポートやポートフォリオなどを求められることもあります。
こうした書類はあなたの個性をアピールするとともに他の受験生との差別化を図るチャンスでもあるので特に力を入れて取り組むようにしてください。
また、出願書類には誤字・脱字がないように提出前に何度も確認してください。手書きの場合は字を丁寧に書くことも重要です。
内容面以外のことがらが印象を左右する可能性を忘れないようにしてください。
資格・検定を取得する
文理ともに総合型選抜においては英検のCSEスコアなど英語力を証明する資格・検定の取得がとても重要です。
大学入学後も英語の授業があるため、英語力があるかどうかは大学にとって重要な選考基準となっているからです。
そのため、英語の資格・検定には積極的に挑戦するようにしてください。
もちろん、挑戦にあたっては事前の対策が必要不可欠です。
英検以外に、数検など志望する学部・学科との関連性のある資格・検定の取得にも挑戦する価値があると言えます。
参考記事:合否判定においてプラスに繋がる検定の特徴とは?
面接対策をする
総合型選抜では、文理を問わず面接対策が重要となることが多いです。なぜなら、基本的に二次選抜では面接が課されるためです。
面接でされる質問は代表例がある
理系の総合型選抜の面接では、以下のような質問がされることが多いです。
- 出願書類の内容に関する具体的な質問
- あなたの大学での研究に対する熱意や知識を確認する質問
- 高校生活において出願書類では言及されていない点に関する質問
典型的な質問に対しては回答をあらかじめ考えておき、当日すらすらと答えられるように練習をしておきましょう。
参考記事:当日よく質問される内容の特集ページ
事前に練習を繰り返して印象を高める
また、面接では内容だけでなく表情・声の大きさ・声のトーン・身振り・言葉づかいなどの点も重要になります。
面接官に与える印象が悪くならないよう、こういったことへの対策もしっかりと行ってください。
上記の対策をするためにも、誰かに模擬面接を行ってもらってください。学校の先生でも塾の先生でも構いません。
そして、模擬面接の後には、できるだけ具体的な評価やアドバイスをもらってください。
口頭試問対策をする
理系の総合型選抜では口頭試問が行われることが多いです。
多くの場合、口頭試問ではあなたが研究したい分野と関連する数学・物理・化学・生物・地学の知識や理解の有無が問われるようです。
ペーパー試験と異なり口頭試問では面接官の質問の意図を瞬時に正確に理解し、それに対する回答を頭の中で整理し、それを分かりやすく面接官に伝えることが必要になります。
口頭試問の対策では実際に口頭試問をたくさん経験して慣れることが最も有効です。
学校の先生や塾の先生、場合によっては家族や友人に協力を依頼して口頭試問をたくさん経験してください。
ペーパー試験の対策をする
文系学部の総合型選抜に比べて理系の総合型選抜ではペーパー試験が行われることが多いです。
ペーパー試験の対策は、当該科目の一般入試の対策とあまり変わらないことがほとんどです。
しかし、一部の入試ではある科目の特定の単元しか出題されないなどの特殊な出題傾向があります。
そのため、過去問を分析して出題傾向を把握しましょう。また、日頃からの科目学習が重要であることは言うまでもありません。
試験直前に慌てたり後悔したりすることのないよう、日々の勉強を積み重ねてください。
特殊な二次選抜の対策をする
理系の総合型選抜では、特殊な二次選抜として実験をしてレポートを作成するものや探究活動の成果をプレゼンテーションするものなどが実施されることがあります。
こうした特殊な二次選抜では、あなたが何かを研究する際に必要な資質を既に有しているかどうかを評価することがほとんどです。
具体的には、論理的思考力、データ分析力、情報収集力、発想力などが問われます。
何が問われているのかが理解できれば、試験の際にどのように振る舞えば高評価が取れるのかを客観的に判断が可能になる事があります。
また、実験をしてそのレポートを書くという経験を何度も積んでください。
こういった試験が行われる場合、その経験があなたを合格に近づけることでしょう。
理系学部で総合型選抜を実施している大学の例
理系学部の総合型選抜を実施している大学はたくさんあります。
この項では、その例を一部紹介します。
なお、偏差値はhttps://hensachi.org/ で示されているものを使用しています。
国公立大学
国公立大学の例は以下の通りです。
大学名 | 偏差値 | 大学の特徴 |
北海道大学 | 64.5 | 広大なキャンパスで学ぶことができる |
東北大学 | 65.7 | 研究重視の伝統ある総合大学 |
東京工業大学 | 68.8 | 理工系の専門大学としては日本一だとする人が多い |
名古屋大学 | 66.2 | 中部地方の研究中心の総合大学 |
京都大学 | 72.3 | 自由な学風で独自性が重視される |
大阪大学 | 67.3 | 旧帝大学の1つ。研究が重視されている |
九州大学 | 64.6 | 西日本最大の国立総合大学 |
名古屋市立大学 | 63.4 | 名古屋の都市型公立総合大学 |
横浜市立大学 | 62.8 | 横浜の国際色豊かな公立大学 |
私立大学
私立大学の例は以下の通りです。
大学名 | 偏差値 | 大学の特徴 |
慶應義塾大学 | 69.5 | 日本最古の私立総合大学 |
早稲田大学 | 66.7 | 多様性とリーダーシップを重視する名門私立大学 |
東京理科大学 | 62.5 | 理工系教育に特化した実践的な大学 |
明治大学 | 62.9 | 最先端技術と研究に強い理工系学部 |
青山学院大学 | 63.0 | 国際性豊かなリベラルアーツ教育 |
中央大学 | 61.2 | 実践的な工学教育に強みがある |
法政大学 | 60.8 | 幅広い分野で応用力を育む理工学部 |
学習院大学 | 60.6 | 少人数制で基礎を重視する理系教育 |
立教大学 | 64.0 | 都市型キャンパスでサイエンスとエンジニアリングを学ぶ |
3つの大学の試験の概要をピックアップして紹介
今回ピックアップして紹介する理系の総合型選抜入試は以下の3つです。
- 北海道大学のフロンティア入試TypeⅡ(理学部化学科)
- 筑波大学のアドミッションセンター入試(情報科学類)
- 早稲田大学創造理工学部の早稲田建築AO入試(創成入試)
それぞれ解説していきますので、参考にしてください。
北海道大学のフロンティア入試TypeⅡ(理学部化学科)
北海道大学は、旧帝国大学の1つです。
総合型選抜に力をいれており、フロンティア入試という名称で実施しています。
北海道大学のフロンティア入試はTypeⅠとTypeⅡに分かれています。
TypeⅠは共通テストを重視、TypeⅡは大学独自の試験や口頭試問を重視する形式です。
今回は、そんな北海道大学の総合型選抜のなかでもフロンティア入試TypeⅡの理学部化学科の入試を詳しく紹介します。
入試の名称 | 北海道大学フロンティア入試TypeⅡ |
募集学部学科 | 理学部化学科 |
定員 | 11名 |
主な出願条件 | 化学基礎・化学・物理基礎・物理・数Ⅲの履修 |
選抜方法 | 1次:調査書、個人評価書、自己推薦書 |
参考URL:令和7年度北海道大学フロンティア入試学生募集要項
筑波大学のアドミッションセンター入試(情報科学類)
筑波大学はさまざまな入試形式で入試を実施しています。
特に学校推薦型選抜に力を入れていることで有名です。
今回は、総合型選抜のなかからアドミッションセンター入試という名称のもののうち、情報科学類のものをピックアップして紹介します。
入試の名称 | 筑波大学アドミッションセンター入試 |
募集対象 | 情報科学類 |
定員 | 8名 |
主な出願条件 | 特になし |
選抜方法 | 1次:自己推薦書、志望理由書、調査書 |
参考URL:令和7年度筑波大学アドミッションセンター入試学生募集要項
余談ですが、筑波大学は一般入試のなかに「総合選抜」という名称のものがあります。
時折、この入試を指して「筑波大学は総合型選抜が盛んだ」と勘違いしている人がいるので気をつけてください。
早稲田大学創造理工学部の早稲田建築AO入試(創成入試)
早稲田大学では、一部の学部・学科でのみ総合型選抜を実施しています。
ここでは、それらのうち創造理工学部の早稲田建築AO入試(創成入試)をピックアップして紹介します。
入試の名称 | 早稲田大学創造理工学部の早稲田建築AO入試(創成入試) |
募集学部学科 | 創造理工学部建築学科 |
定員 | 25名 |
主な出願条件 | 早稲田大学創造理工学部建築学科が第一志望であること |
選抜方法 | 1次:調査書、志願者自己報告書、活動実績報告書、推薦状 |
参考URL:早稲田大学創造理工学部早稲田建築AO入試(創成入試)入学試験要項
いずれも非常に個性的な入試であり、この記事でここまで解説してきたことが裏付けられるものになっているかと思います。
あなたが興味のある大学・学部・学科の総合型選抜入試の募集要項も是非覗いてみてください。
総合型選抜において理系学部を志望する受験生からよくある質問
次に理系学部を志望する総合型選抜受験生からよくある質問とその回答を紹介します。
具体的には、以下の質問に回答します。
- 総合型選抜で理系の学部に受かる人の特徴は?
- 総合型選抜と旧AO入試との違いは?
- 一般入試と総合型選抜ではどちらが有利?
- 一般選抜と比べて総合型選抜ではどれくらい合格率が上がるの?
- 理系の総合型選抜は一般入試対策の片手間で対策できるの?
それぞれ解説していきます。
総合型選抜で理系の学部に受かる人の特徴は?
総合型選抜で理系の学部に合格する受験生の特徴は以下のとおりです。
- 研究・探求の活動に取り組んできた人
- 志望する学部・学科と関連性のある課外活動や資格取得の実績がある人
- 受験する入試で特に重視される科目がとても得意な人
特定の分野において得意なこと、力を入れてきた活動がある人が合格しやすくなっています。
総合型選抜と旧AO入試との違いは?
以前AO入試と呼ばれていたものが総合型選抜に改称されました。
ですので、基本的に両者は同一と考えて大丈夫です。
強いて違いを挙げるとしたら、旧AO入試は書類・面接・小論文で合否を決めることが大半でしたが評価が中心でしたが現在の総合型選抜ではそれ以外の多様な評価方法が採用されるケースが増えています。
もっと具体的にいうと、旧AO入試よりも現在の総合型選抜のほうが学力で合否を決める可能性が高くなったということです。
一般入試と総合型選抜ではどちらが有利ですか?
一般入試と総合型選抜のどちらが有利かは、あなたの学力や課外活動の実績によって異なります。
一般入試では入試当日のペーパー試験の点数だけで合否が決まります。
一方、総合型選抜ではさまざまな評価項目があります。それに総合型選抜においては、入試によっても評価項目が異なります。
よって、「一般入試と総合型選抜のどちらが有利か」という問いに一般的な回答はありません。
あなたの現在の状況と相性の良い入試を選択することが重要です。
一般選抜と比べて総合型選抜ではどれくらい合格率が上がるの?
総合型選抜は一般入試と比べて倍率が低い傾向にあります。
しかし、その事実をもって合格率が高いと判断することはできません。
理系の総合型選抜では複数名の出願者がいて合格者0ということも多いからです。
理系の総合型選抜では出願条件が厳しい上にさまざまな二次選抜が課されます。
したがって、倍率の低さだけに注目して「総合型選抜のほうが合格率は高そう」と判断するのは大変危険です。
あなた自身の得意・不得意やこれまでの実績等との相性で判断するようにしてください。
理系の総合型選抜は一般入試の片手間で対策できるの?
理系の総合型選抜は合格のために対策しなければいけないことが多いです。一例としては以下があります。
- 評定平均の向上
- 英検の取得
- 志望学部・学科と関連する課外活動の実施
- 書類作成
- 二次選抜の対策
やる事が多いので、片手間で対策できるものではありません。
もちろん、総合型選抜対策と一般入試対策を両立できる受験生はいます。ただし、「片手間で対策できる」と思ってはいけません。
「二兎追うものは一兎も得ず」とならないよう、どちらかに絞るのか両方しっかり対策するのかを決めて受験対策に臨んでください。
今回の内容のまとめ
この記事では、理系の総合型選抜について説明しました。以下にて、この記事の要点を再掲します。
- 特定の課外活動を最大限評価してもらえる理系でも総合型選抜が受けられるが、出願条件が特定の科目や課外活動に関することが多い
- 出願条件が特定の科目や課外活動に関することが多い
- 評定平均や英語資格の取得が重要
- 出願条件が厳しいので、早めの準備が必要
- 数学や理科の試験や口頭試問がよく行われる
- 研究や探求活動に熱心で、その成果物を提出できる人は有利
- 特殊な試験(実験、プレゼンテーションなど)がある場合もあるので、対策が大変なことも多い
この記事があなたの総合型選抜対策の一助となれば幸いです。最後までお読みくださりありがとうございました。
参考記事:特別入試は共通テストが不要なのか?
この記事を書いた人
竹内 健登
東京大学工学部卒業。総合型選抜並びに公募推薦対策の専門塾「ホワイトアカデミー高等部」の校長。 自身の大学受験は東京大学に加え、倍率35倍の特別選抜入試を使っての東京工業大学にも合格をし、毎年数人しか出ないトップ国立大学のダブル合格を実現。 高校生の受験指導については東京大学在学時の家庭教師から数えると約10年。 ホワイトアカデミー高等部の創業以来、主任講師の一人として100人以上の高校生の総合型選抜や公募推薦をはじめとした特別入試のサポートを担当。 早慶・上智をはじめとした難関大学から中堅私立大学まで幅広い大学に毎年生徒を合格させている。 2023年には、「勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法」という本を日経BPから出版。